11/25のツイートまとめ

toychest0308

@placebo_lab そうなんだよねー。私もコピックのバリオスインク買ったんだけど、送料なしになるように一気に注文したった(`・ω・´) 関東が羨ましいwまた次札幌来る予定出来たら教えてくれー!飲もうず♥
11-25 03:29

オオカミ少女だんだん不憫に思えてきた。お前…本当に幸せか?(涙)
11-25 03:13

11/22のツイートまとめ

toychest0308

@placebo_lab 実に効率的な通販の仕方だった(`・ω・´)そしてケイナン今日お誕生日だね❗おめでとう♥ また誕生日じゃない日にプレゼント渡すわ(笑)
11-22 12:40

11/21のツイートまとめ

toychest0308

『あなたの惚れ方タイプは?背中?横顔?真正面? かまってちゃん度チェック』-人生かっぽ http://t.co/m75LIjGqAy @daichisato88さんから
11-21 17:06

@popo_ta いえすいえす。ちょっとやりすぎなんじゃないかなって感じですがいいぞもっとやれ。
11-21 12:47

@popo_ta l・ω・´) ,。o0(もちろん大好きだよ//// 結婚してくれ、ルルーシュと!笑)つーかもう結婚しましたっけね……。
11-21 12:43

そろそろ本当に原稿に戻るね。あさ~~★ すがすがしいよまったく。
11-21 06:50

あっ伏せた意味ない……(´・ω・`)
11-21 06:48

ウンコにたかる蠅ではないんだ? 自ら垂れ流してるのはウ○コだけど。
11-21 06:48

この表現最初に考えた人すごいなって尊敬してる。虫って一言だったようなでもまあ似たような感じ。
11-21 06:47

ふへへへ。投擲されるぎにそっと同意して下さる方いらっしゃったよ……。まあ私飴にたかる変な蟻なのに実は羽生えてるから飛んで行ったら窓締めらそうだなぁと思って、申し訳ないから飛んでいかないようにしてるんだ……。
11-21 06:46

朝っぱらから笑いすぎでふくつう。
11-21 06:43

@ST_aine wwwwwwwwwwwwwwwwwww
11-21 06:43

more...

11/20のツイートまとめ

toychest0308

@placebo_lab 通販、それは魔法の言葉。ムービックってメイトの系列だったの。ン十年生きてきて今知った!w すんごい近所だったら取り寄せ頼むこともあるけど、他にもたくさん欲しいとなったらお買いものの手間惜しんじゃう気持ちはわかるぜ…! VVVは商品自体が少なかった。
11-20 11:33

@placebo_lab もうじき年賀状の季節だよ~(`・ω・´) リハビリしようず♥ 自給自足っていやな響きだ…単純にケイナンの考えるお話に興味があるからなのよね。ドエスの描く作品って面白いしさ~(笑)原案みたいなのでも聞きたい、詳しく!
11-20 11:31

11/19のツイートまとめ

toychest0308

@placebo_lab 仕方ないの一言でまとめられた!!Σ(´0ω0`) 評価でもコーナー置かれるかどうか分かれるのか~。じゃあ、仕方ないのかな……(遠い目)ムービックの商品買うなら通販になっちゃうよね~。近所のアニ○ガにもないよー。アルゼロもVVVもありませんでしたよ。
11-19 08:01

@placebo_lab もうさ……書こう? そういう話書こう?? ケイナンとは一度合作やってみたいわ。
11-19 07:58

11/18のツイートまとめ

toychest0308

@placebo_lab 全くもって同意する( ˘ω˘ ) Wでサン○イズに狂わされた者として…。地上波放送そういえばなかったね? ニコ生とBS11で見てたからなかったイメージがなかった! そういう理由で仕入れてくれないケースもあるのか~。VVVの時もなかったんだがあれは?w
11-18 03:34

@placebo_lab さすがにソレはないだろうと思う。派手に基地ぶっ壊れてたけど(`・ω・´) 耶賀頼先生はオッサンのトラウマ掘り起こして見事に傷口えぐって泣かせてたじゃないか。その後のケアもしたに違いないよ……!(にこ!)
11-18 03:30

11/16のツイートまとめ

toychest0308

お、三巻出るんだ、買おう♪
11-16 18:00

RT @baraou_info: プロフィールにもさらっと書きましたが「薔薇王の葬列」待望の3巻は1月16日に発売が決定いたしました! 3巻はリチャードとヘンリーの関係に大きな変化が訪れ、さらにはエリザベスとエドワード王の男と女のラブゲームみたいな展開もありで、ハラハラ&ドキド…
11-16 18:00

@popo_ta okaeri-! 雪ミクちゃんほんとにかわいいね。ちっちゃいやつ。
11-16 17:55

@ST_aine はいwwwwwwwwwwww目を疑うエロ絵なので、その際は本当に注意……って、あいねちゃんは大丈夫やね(笑)
11-16 17:52

@popo_ta オッケーオッケー(`・ω・´)ノ じゃあその時にまたすかいpなど♥
11-16 17:36

ぷらいべったー使おう。あったじゃないか、そういう機能がw
11-16 17:32

専用のアカウントか~。本職さんが友達にいるから交流って意味では不自由してないんだが。
11-16 17:32

@popo_ta あ、ソレいいね(笑)そうしておく。こっちから言ったら忘れてないアピールするからwwww
11-16 17:31

@popo_ta おおう可愛い! もし北海道でしか買えないグッズあって、要るようなら言って~。行ける距離でならお買いもの請け負いますぜ★
11-16 17:30

@akkrxx ああそっか!リスト作ればいいんだ(笑) そういえばあったねぷらいべったー。イナ○ミンさんついったーもやってらっしゃるよ。イラスト公開アカウント作ったらぜひ教えて♥
11-16 17:28

more...

11/15のツイートまとめ

toychest0308

@popo_ta ホントだよもー。声が奈々様っていうのも物凄いサービスだよね。
11-15 21:16

@popo_ta 乳首立ってたトコ?(笑)
11-15 21:14

あーーー、アンジュ……♥(*´v`*)
11-15 21:10

おしょんしょん漏らしながら覚醒するクソ女可愛い。
11-15 21:09

「お前が死ねぇええ」で爆笑したんだよな…。
11-15 21:03

後のフリーダムw 確かにwww
11-15 21:02

@popo_ta 超面白いよね。髪長かった頃も好きだったな~。
11-15 21:01

RT @fafnerproject: 【新キービジュアル!HPリニューアル!】新キービジュアルを発表いたしました!公式HPもリニューアルいたしましたので、是非チェックしてみて下さい!!!http://t.co/qJy1rpgTYC #fafner http://t.co/mBc
11-15 21:00

@popo_ta 6話のも酷いらしいね、予告。たたこしゃんは絶対見てると思った^p^
11-15 20:49

@popo_ta イエス、マム!(笑) 二日連続で待機なの。
11-15 20:45

more...

11/14のツイートまとめ

toychest0308

@placebo_lab おっさんラバストwwwwwwww ブレないケイナン素敵^p^ テオ卿はともかく、鞠戸大尉は海外では人気あるのに日本ではさほどでもない感じ? 耶賀頼先生とのカプ、好きな人にとってはヒットするはず! と思っている…。
11-14 20:43

@placebo_lab アクリルチャームすんごい可愛いよね~。マグカップは普段使い出来るから何個あってもいいかな、と私も思う。思った以上にケイナがはまっていて嬉しいぜ(`・ω・´) でも実は、札幌のメイトにはアルゼロのブースないっていうね!(笑)これからなのかもしれぬ。
11-14 20:40

闇(病み)から少し解放してあげよう。すざく、しばらくそのままでいな……。
11-14 06:55

@seven_nonoshiri パピヨンマスクにしてみたからですか?
11-14 06:54

アイコンを[パピヨンマスク]でデコりました。 #武装錬金 #iconDecotter http://t.co/Wi4AyjcmdX
11-14 06:54

@seven_nonoshiri お久しぶりです
11-14 06:46

戻った戻った。ものすごく大きくなっちゃってどうしようかと思った。
11-14 06:45

アイコンを[サンタ帽子]でデコりました。 #iconDecotter http://t.co/10o3YhKCIg
11-14 06:44

ものすごーーく間違った(`;ω;´)
11-14 06:42

アイコンを[少し大きいクリスマス帽子]でデコりました。 #iconDecotter http://t.co/VzE5kEhpfx
11-14 06:40

more...

11/13のツイートまとめ

toychest0308

うしるるちゃんが……。
11-13 23:59

@akkrxx ちんこの絵文字あったのにリカバリしたら吹っ飛んだでござるw …ペンタブか~。未だに慣れたかと言われると、まだアナログで描いてる方が線が安定するからな~(・ω・)
11-13 23:55

@akkrxx 赤黒えすえむ(・ω・) 確かに支部では少なそう? でも需要あるよねきっと。赤司さま好きな人はSM好きそうというか…監禁凌辱とかあの辺とも親和性高そうなイマゲ(笑)半年後…だと。毎日紙のはしっこにらくがきするだけでもきっと上達するはず!
11-13 23:49

ぎえええシロくそかわ。
11-13 23:44

RT @kotobukiya_npb: 【2階】「K MISSING KINGS クリアファイルセット」全3種類のクリアファイルはそれぞれ2枚組です♪キュートなデフォルメイラストと作品をイメージしたカラーとモチーフによって作品の世界観を再現してます♪(各600円+税) http…
11-13 23:44

今度アンジュ描こう(笑)
11-13 23:36

右手だけつめたい。
11-13 23:22

今気付いたんだけどさっきのやつ角度的に入っちゃってるね……。
11-13 23:20

晒せないらくがきの方が多い……_(:3」∠)_
11-13 23:19

ライトないじめだよ。 http://t.co/QymExOgNsT
11-13 23:18

more...

二.五次元の君 2




2.

 『明日の味噌汁は豚汁がいいな』とスザクに言われ、ルルーシュは買い出しに来ていた。スーパーでお買い得商品を吟味する姿はそこらの主婦と変わらない。スザクはこれが食べたい、あれが食べたい、と具体的に料理名を挙げてくれるのでルルーシュは助かっている。
 大学はちょうど春休みだ。レポートをさっさと終わらせ、先に休みに入ったルルーシュとは裏腹に、学部の違うスザクはバイトと仕事に忙殺されて風邪をひき、更に運の悪いことに補講が重なり、休みに入るのがすっかり遅れてしまった。
 体力馬鹿のスザクといえども寝不足には勝てなかったようだ。この生活では、漫画を描く余裕がないどころか身体を壊してしまう。見かねたルルーシュが看病し、バイトを減らさせる代わりに食事を差し入れることにしたのは必然ともいえる流れだった。
 そんなスザクは今日、新作のネームを見せるために担当の人と会っている。数日間ネタをひねり出そうと唸っていて、かなり苦労していたのはルルーシュも見ていた。打ち合わせ中に詰めていく部分もあるのだろう。そのネタが通るかどうか定かではないが、長引けば今夜会える時間は少なくなってしまう。スザクとは学部が違う上に夜くらいしか会えないので、長期の休みはルルーシュにとって二人きりで居られる貴重な時間だった。
 手頃な豚肉と野菜を購入し、帰宅して玄関ドアを開くなり携帯電話のバイブ音が鳴り響く。
「スザクか、どうした」
『あ、ルルーシュ? 今晩のことなんだけど――』
 スザクの声は心なしか申し訳なさそうだ。
『これから担当さんとご飯食べに行くことになっちゃって。頼んでおいたのにごめん、今日は遅くなりそう』
 昨日の話では、夕方近くまでかかると言っていた。ところが担当の人が空腹を訴えてきたので、そのまま外で食事を摂りながら打ち合わせし続けることになったらしい。
 玄関からリビングに抜け、キッチンに買い物袋を置く。もやもやした霧がルルーシュの中に立ち込めた。
 スザクの家の合鍵など当然、持たされてはいない。担当者との詳しい話も掘り込んで尋ねたことはなく、その担当者が実は女で、しかも外で会っているものと思っていたら毎回家に入れていた、というのも初めて聞かされた。
(何だよそれ……)
 心の中で呟きながら携帯を切る。仕事だから仕方がない、割り切るべきだと解ってはいる。スザクとはあくまで友達で、人付き合いに関して口出ししたり、制限を設けたりする権利などルルーシュは持っていないのだから。……でも、決して面白くはない。
 急に料理する気分ではなくなり、ルルーシュはぼんやりとキッチンに立ち尽くした。食べて欲しい相手はスザクだけ。漫画家としての仕事が順調そうなのは何よりだと思うものの、邪推と解っているのに否応なく一つの懸念が浮かび上がってくる。
 いまいち冴えない外見でもスザクの顔立ちは整っていて、もともとアウトドア派でもあるので脱ぐと凄い。体力づくりも仕事のうちと言い、日々トレーニングにも励んでいる。犬っころのような雰囲気のくせに相当な女好きなのもルルーシュは知っていた。以前読ませてもらった漫画もいまいち冴えない主人公の男が、次々と登場してくる美少女たちに言い寄られるという典型的なストーリーだ。
(あれは本人の願望だろう、やはり)
 ラッキースケベと量産型パンチラ美少女。作画もディティールが凝っていて、美少女たちの系統はそれぞれ異なっているし一人ひとりの胸の大きさまで違う。中でも、パンツの凝りようは異常だ。やたらと生地の質感がリアルなだけでなく、フリルや柄に関しても一切、妥協が見受けられない。股に入る皺の付け方に至っては「どこで見てきた」と問い詰めたくなる作画で、そういうことに疎いルルーシュでさえ「あれはフェチ性の問題だ」と勘ぐってしまう。
 今描いているのは擬人化する猫の話のようだが――ほっこりする要素が随所に取り入れられているとはいえ――やはりエロコメに等しいものがある。だいたい擬人化と言っているのに何故、猫耳と尻尾の生えたツンデレ美少女でなければならないのか。しかも、無駄な露出の多さまでセットでなければならないのか。
(俺には一生かかっても解らない……)
 ぼんやりし続けているのも何なので、ルルーシュは気持ちを切り替えてとりあえず調理することにした。エプロンを身に着けて放置していたエコバッグから食材を取り出し、おもむろに下ごしらえを始める。
 遅くなるならドアノブにでもかけておけばいい。何か作ろうにもスザクの家に食べられるものなんて残っていないだろうし、そもそも冷蔵庫さえ申し訳程度の小さなものだ。もし行った時に帰って来ているなら重箱や水筒だけでも回収しておきたいし、ちょっと顔を見るだけで帰ってくるのでもいい。
 ルルーシュは思案した。重箱の換えはもちろん用意してあったが、空になったそれらを外に置いておいてくれ、と頼んでおくべきだっただろうか。
 包丁を置き、ズボンのポケットから携帯を取り出す。
「…………」
 メールで行く旨を伝えようとして思い止まった。まだ打ち合わせの最中だろうから、もしかしたら邪魔になってしまうかもしれない。スザクは空気を読まない奴だが気遣いはする方だ。行くと言ったら早めに帰ろうとする可能性だって充分ある。
(料理はいいものだ、何も考えずに手を動かしていられるから)
 ロックし直した携帯をポケットに仕舞い込み、ルルーシュはしつこくモヤモヤし続ける気持ちを今度こそ無にするために、もう一度包丁を握った。



『幼馴染は最強っていうけど、恋敵が現れた場合は負けフラグだよ』
 いつだったか漫画でのセオリー、いわゆるお約束展開についてスザクが話していた時、ルルーシュは心臓が止まりそうな思いをした。時々湧き立つ不安は以前から感じていたけれど、気付かないふりをしていただけだったからだ。
『今の担当さんは凄くいい人でさ、僕の作品も僕自身のことも、物凄くよく解ってくれてるんだ』
 ルルーシュが嫌な予感を覚えたのは、その女の担当さんをスザクが家に入れていると聞いた時からだ。理解してくれる相手なら誰でもいいんだろう、俺じゃなくても。その時にもルルーシュは内心腹立たしく思ったものだが、昨夜遂に決定的なものを見てしまった。
 スザクの部屋の入口。開いたドアの手前で抱き合う担当さん、と思しき女性とスザク。スザクの腕はかろうじて抱きしめ返してはいなかったが、その女性の背中に中途半端に回しかけていたのは見えた。耳元の辺りに顔を寄せ、何か囁きかけていたのも。
 会話の内容までは聞き取れなかったが、気にはなってしまう。あれから二人はどうしたのだろう? 低い声で話すスザクとキスを待つように見上げる女性。その生々しい光景があまりにもショックでルルーシュは逃げ出してしまった。
 黒縁眼鏡に隠れてよくは見えなくても、スザクが今まで見たこともないような真剣な顔をしていたのは覚えている。
(俺は対象外なのか? 幼馴染だから)
 持ち帰ってきてしまった荷物の中から重箱を取り出す元気もなく、ルルーシュは自室で一人うなだれていた。ベッドの縁に腰掛けたまま一歩も動けず、そのまま横向きに倒れて寝転がってしまう。
(それ以前に、二人とも男だ)
 今更当たり前の事実に思い至って自嘲の笑みが零れた。昔からルルーシュを綺麗だの何だのと褒めそやしてはしても、やはりスザクが好きなのは女なのだろう。幼馴染といっても実は特別でも何でもなく、ただ都合のいい相手と思われていただけなのかもしれない。
(便利な友達。そう思っていたから一緒にいただけか?)
 ドクンと心臓が鳴った。頼まれなくても料理を作ると言い、部屋の掃除もしてくれる便利な幼馴染。突然、胸が痛み始めたように思えてルルーシュはうずくまった。
(結論を急ぎすぎだ、直接確かめた訳じゃない)
 だけど、どうやって確かめればいい? 勘違いかどうか尋ねることなんて出来やしないのに。
 疑いたくない、と思いながらも悪い方向に自分を追い詰めている自覚がルルーシュにはあった。でも止められない、疑惑だけがどんどん深まっていく。
 あの野暮ったさに漫画オタクという要素がプラスされた中学高校時代、異性との付き合いを意識する年頃のスザクは投稿に打ち込んでいてモテなかった。その頃も今も、スザクの隣に居るのはルルーシュ只一人だ。
 ずっと見てきたから何もかも知っているつもりでいた。でも、ルルーシュの知らないところでスザクはスザクなりに、異性との付き合いだって経験してきたのではないか?
 逆に、ルルーシュに経験がないことをスザクは知っている。異性関係の話をすぐ逸らしてしまうのも、ひょっとすると密かに気遣われていたからなのかもしれない。
(小さい頃から一緒だったからな)
 枕を抱きしめてルルーシュは顔を埋めた。もっと冷静にならなければ、と繰り返し自分に言い聞かせる。考えたことさえなかった。自分がスザクにとって、恋愛の障害になっているかもしれないなんて……。
 地の底まで落ち込みそうになっていたその時、突然来客を告げるチャイムの音が鳴り響いた。
「……?」
 音の方を見てベッドから起き上がる。気を許した相手であっても外で会うようにしているので、ルルーシュが自分の家に招くのも実際に通したことがあるのもスザク一人だけだ。
 インターフォンを取ろうとして躊躇し、玄関ドアの魚眼レンズを覗き込む。
「スザク?」
 外に立っていたのは、ふわふわした茶色い頭だ。
 声が聞こえたらしく、スザクが顔を上げる。内側から鍵が開くのを待ってドアノブに視線をやり、いつまで経っても開かないのでおかしいな、という顔をしていた。
(どうする……)
 何故わざわざ家にまで来たのだろう? ルルーシュが戸惑っていると、外でスザクの声がした。
「ルルーシュ? いるんだろ、開けて?」
 コンコンコン、とせっかちそうにドアを叩く音。仕事の合間に来たなら急いでいるかもしれないし、そうでないなら上がっていいかと訊かれるかもしれない。ルルーシュはためらいながらチェーンキーを外してゆっくり鍵を回した。
「どうしたの、具合でも悪いのかルルーシュ?」
 その音を聞きつけてスザクが勝手にドアを開く。ルルーシュの顔を見るなり怪訝そうに眉を寄せた。
 ルルーシュが一歩引いてふる、と首を動かす。覚悟を決めて向き直るとスザクがこわばっているルルーシュの顔をまじまじと見つめ、何かあったのかと目線で訴えてくる。
「お前こそどうした、急に?」
「えっ」
 先に話しかけるとスザクは小さく唇を開け、「ああ」と言いかけて小脇に抱えていた重箱をルルーシュに差し出した。
「持ってきたんだ、この間の」
 剥き出しのそれはきちんと洗ったあとのようで、蓋の表面がピカピカにされている。ルルーシュはドアノブを握りしめたままぎこちなくそれを受け取った。
「昨夜はごめん」
 と、スザクが先に口を開く。
「こっちから頼んだのに……ルルーシュ今日は時間ある?」
「時間?」
 反射的に断ろうとしているのが伝わったのだろう。スザクは再び怪訝そうに眉を寄せた。
「君いつもと違うよ、どうかした?」
 スザクの声がワントーン落ちる。
「そうか?」
 うん、と頷き、スザクはルルーシュの顔を凝視して「何か変だ」と呟いた。驚異的な勘の良さだ。ルルーシュの性格を知り尽くしているせいか、スザクは自分に関わることで様子がおかしいのではないかと察したらしい。
 固い表情で重箱を抱え、ルルーシュは「いや」と目を逸らした。
「なんでもない、さっきまで寝てたんだ」
「…………」
 探る視線が「本当?」と問うている。黒縁眼鏡の奥でスザクの瞳がスッと細くなった――スザクは嘘を嫌う。
「上がってもいいかな」
 続けて「上がるよ」と決めた口調で言い添え、答えを待たずに靴を脱ぎ。スザクは遮ろうとしたルルーシュを避けて勝手に部屋へ上がり込んだ。
「おい!」
「寝てたんだろう? でも話があるんだ」
 有無を言わさぬ物言いに飲まれてルルーシュは断れず、そこで昨夜の弁当――重箱の入ったいつもの荷物がテーブルの上に置きっぱなしになっていた、と思い出して慌てて後を追った。スザクはもうリビングのドアを開けており、羽織っていたパーカーを脱いでいる。
「作ってくれてたんだ? いつの?」
 テーブルの上を一瞥し、振り返ってスザクは尋ねた。何気ない訊き方であってもルルーシュには詰問に聞こえる。昨夜のものではないのか、本当は持ってきたんじゃないのかと問われているみたいだ。
「これから持っていくつもりだった。ちょうど良かった」
 嘘に嘘を重ねることになると知りつつルルーシュは言い訳した。スザクは短く「そうか」と言い、口を閉ざしたルルーシュと荷物とを見比べて荷物の中に手を突っ込む。
「あ――!」
 当然、弁当は冷えている。咄嗟の嘘だったから。
(しまった)
 スザクが荷物から手を引き抜き、こいつはこういう奴だった、と歯噛みするルルーシュを無言で流し見る。
「昨日来たんだ?」
「!」
 今度こそ誤魔化せなかった。単刀直入に、しかも断定的に尋ねられてルルーシュが顔色を変える。スザクはそのさまを見咎めて小さく嘆息した。
「なんで黙ってるの?」
 訊き方こそ柔らかくても言い逃れさせるつもりはなさそうだ。ルルーシュが昨夜来たのだ、とスザクは既に確信している。
「嘘を吐くつもりはなかったんだ、その……」
 尻すぼみになって答える。だが同時に、理不尽にも思えた。好きで盗み見した訳でもないのに、何故自分が後ろめたい気持ちになどならなければならないのだろう。
(あんな往来で抱き合う方が悪い)
 見られたくないなら部屋の中でやれというのだ。
 ルルーシュは急に苛々してきた。スザクは瞬きもせず台詞の続きを待っている。ルルーシュは身体の横に下ろした手を握りしめ、顔を背けてむっと唇を閉ざした。スザクが諦めたように肩を落とす。
「何を見たのかは大体解ったよ。でも誤解だ」
「言い訳しなくていい」
 そんな義理などお前にはないのだから――。胸中での呟きが返す刀となって、ルルーシュの胸を鋭く抉った。
「そうだな、ルルーシュには関係ない」
 はっきりと言い置いてスザクが切り出す。
「でもだったら、どうして怒ってるんだ?」
「!」
 ルルーシュは言い返したいのをぐっと堪えた。別に怒ってなどいない、そう否定しながらも内心、ますます苛立ちが募った。スザクは断りもせずソファに行き、浅く腰掛けて黙り込むルルーシュを正面から見据えている。
「話があるって言っただろ?」
「俺は、」
「デッサンさせてくれないかな」
「……?」
 唐突な申し出にルルーシュが戸惑っていると、スザクは開いた足の間で指を組み、軽く溜息をついて再び口を開いた。
「今描いてる漫画のキャラクター、モデルが実はルルーシュでさ。ヌードモデルだから他の人には頼めなくて」
 俄かに何を言い出すのか。ルルーシュは目を瞠った。
(ヌード、と言ったのか? こいつは?)
「俺に脱げっていうのか」
 頭が真っ白になり、よく考える前に口走ってしまう。ルルーシュを見据えたままスザクは悪びれもせずに頷いた。
 やはり、都合のいい友達と思われているだけ。そういうのも担当の仕事なのではないか? 強い反発と疑惑が湧き上がってきたが、スザクはルルーシュの考えを先取りするように「君にしか頼めないんだ」と言う。
「僕が自分で脱ごうにも体型だって違う、モデルは君だから」
 噛んで含めるように言い聞かせる。もちろんルルーシュにも解るだろう、という口調でこう付け加えた。
「担当さんは女だ、頼めないだろ?」
「――――」
 ルルーシュの気持ちが急速に冷えていく。
 大雑把、天然、朴念仁――無神経。
(三つ目までは許してやる。だが最後の四つ目だけは許さん!)
 大切な彼女の代わりに、とでも考えているのだろうか。どす黒い感情で潰れてしまいそうだ。
 頭の中を占めるものは二人の関係、ただそれだけだった。今までスザクを最優先にしてきたのも、スザクに最優先にされてきたのもルルーシュだ。隣に居たのも、居て当然だったのも……。
 そう思った瞬間、疎外感で心が軋んだ。
「付き合ってるのか?」
「は?」
「だから、その女と」
「……?」
 押し殺した声で尋ねてくるルルーシュにスザクはぽかんとしていたが、すぐに思い至って「ああ」と呟く。
「担当さんと?」
 尋ねる声に苦笑が滲む。ルルーシュには「だから何?」と言っているふうに聞こえた。
 嫉妬で胸が焦げ付く。自分に成り変わろうとする存在など邪魔だ、消してしまいたい。
(そこは俺の場所なのに)
 スザクが認めたものと思い込み、ルルーシュは逸る感情にまかせて吐き捨てた。
「ずいぶん色ぼけたな。漫画家としても駆け出しなんだろう、お前は」
「そうだけど」
 妙な空気にたじろぐでもなく、けれど少しは困惑しているのかスザクが眉尻を下げて瞬く。ルルーシュの頭上を中心に、部屋全体に真っ黒な暗雲が垂れ込めてきたかのようだ。
「親に認められるような漫画家になるのが夢なんじゃなかったのか?」
 顔を逸らし、静かに問うルルーシュをスザクは黙って見つめていた。その間も、『恋敵が現れた場合は負けフラグだよ』というスザクの一言がルルーシュの頭をずっと回っている。
(負け……俺の負け。幼馴染は最強? どこがだ)
 あの一言も実は、スザクなりの牽制だったのかもしれない。
(こいつは仕事に対して真面目な奴だから、中途半端なことなどしたくないのだろうと思っていた。服装にさほど気を遣っていないのも、色恋に興味がなさそうなのもそれが理由なのだと)
 でも本当は、年相応に男女の付き合いにだって興味があって当然。気になる異性が現れれば、付き合いの長い幼馴染よりも大切になってしまうことだって――。
「モデルの件は断る」
 唸るように言い放ち、ルルーシュが拳を握りしめる。
「どうして?」
 君にしか頼めないんだよ? と訴えかける口ぶりでスザクは尋ねた。
「説明が必要か?」
 平静さを崩さないスザクをルルーシュが険しい眼光で射抜く。幾らなんでも非常識だ。憤りながら踵を返し、ついでのように振り返った。
「俺はお前のアシスタントでもなければ便利屋でもない。他を当たれ!」
 足音高く歩き、帰宅を促そうと玄関に続く扉を開けに行く。
「ルルーシュ」
 後を追おうとスザクも立ち上がった。ついてくる気配を感じながらルルーシュがドアノブに手を掛ける。荒く手前に引いて振り返ろうとした瞬間、足早になったスザクは後ろからルルーシュに抱きついた。
「おい……ッ!?」
 手が外れ、ドアノブがガチャリと耳障りな音を立てる。驚く以上に本能的な怯えがルルーシュを襲った。思い切り腕を振ろうとするとスザクがぎゅっと力を込め、吐息が首筋にかかってルルーシュがビクリと竦み上がる。
「――ッ、まえ……っ!」
 ドア前でもがいていると「ルルーシュ」と、耳元でスザクが小さく呼びかけた。囁く声音にルルーシュの動きが止まる。絡んでくる腕はきつくて痛みさえ感じるほどだ。
「離せ、この馬鹿が!」
 振りほどけずにいるうちにスザクがかけていた黒縁眼鏡を外し、器用に片手でフレームを折り畳む。無造作に尻ポケットに突っ込んでいる隙をみてルルーシュは抜け出した。スザクがすかさず腕を伸ばし、その腕を避けようとしてルルーシュがドアにぶつかる。背中にその固さを感じながら、ルルーシュは僅かに目を瞠った。
「あ――」
 間近にいたのは裸眼になったスザク。何年振りかに見る素顔だ。
 そこで、スザクの真面目な表情が急に崩れた。噴き出す寸前の唇を無理に引き締めようとしている。ルルーシュは間抜けにも自分があんぐりと口を開け、眼鏡のないスザクの顔に見入っていたことに気付いた。
(くそっ、何がおかしい!)
 腹を立てながらも黙り込んでしまう。スザクは更に一歩踏み出し、挙動不審になったルルーシュを閉じ込めようと顔の真横に手を付いた。
「お、前――?」
 見えるのか? と尋ねかけたルルーシュの声と、スザクの慇懃な「ルルーシュさん」という呼びかけとが重なる。
「まだ言ってなかったよ、夢ならもう一つあるって」
「……?」
「ルルーシュ・ランペルージさん」
 なんだ改まって。ルルーシュが問い返す前に、スザクは不意打ちのように顔を近付けてルルーシュの唇を奪った。
「――ッ!?」
 頬に手が添えられ、舌が入り込んできて仰天する。ルルーシュは呼吸の仕方が解らず、苦しげに喉を喘がせながら深く重なってくる唇を受け入れるしかなかった。
 鼻先が頬にこすれ、角度を変えてスザクが絡ませ合った舌を吸う。耳や首の後ろを掠めていく手にゾクリと背筋が震え、ルルーシュは甘く痺れるような初めての感覚に膝から下の力が抜け落ちていくのを感じていた。
 首筋から頬を辿り、スザクの手が顎下へと回る。親指と人差し指の股で引っ掛けるようにしてルルーシュの顎を持ち上げ、スザクは息継ぎの暇を与えずに何度も深い口付けを繰り返した。
 ルルーシュに解るのはただ、酷く手慣れたキスということだけ。
「僕とお付き合いして下さい、正式に」
「え……?」
 ぼうっとしながら涙目になり、ルルーシュはぼやけた視界に映るスザクを見つめて細い吐息を漏らした。今のがキスなのか、本当にされたのか。言われた言葉を反芻してよく噛みしめてみる。
(お付き合い……? 俺と?)
 何故、という思いと湧かない実感にひたすら混乱する。どこからこんな話になったのか。まだ湿る唇の感触は告白が現実なのだと告げている。
 顔が近いせいだろうか。まっすぐ向けられたスザクの目線はブレていない。
(極度の近眼、だった筈じゃ?)
 ルルーシュが頼りなく瞳を揺らす。
「お前……、見えるのか?」
「うん」
 どうして。
 訝しげにしているルルーシュを見て察したのだろう。スザクが「どうしてって……」と言い淀む。
「ルルーシュは知らなくていいよ」
 平坦な声だった。ルルーシュはまた関係ないと言われたのか、と肝を冷やしたがニュアンスが違う。スザクの顔面にうっすらと広がる酷薄な笑みは、君は気にしなくていいよ、という意図も込められた別の誰かへのものだ。
「スザク……?」
 不安になって呼びかけてみれば、応えの代わりにスザクが軽く眉を上げる。
「なんで」
 食い下がるルルーシュをスザクは真顔で見つめていた。ことん、と首を傾けて悪戯っぽく笑う。
「さあ……何故でしょう?」
 にこりと笑む唇は少し歪んでいた。それに気付いてスザクはくしゃりと弱った顔になり、今度は酷く優しげに目元を和らげている。
(何だ今のは。はぐらかすつもりか?)
 その目に惹きつけられているうちにスザクがまたちゅっと口付けてきて、ルルーシュは気が抜けたようにへなへなと腰を抜かした。スザクがさりげなく支え、一緒に屈もうとして思い出したかのように尻ポケットを探る。
「僕が認められたかったのは君にだ、やきもち妬いてくれるのは嬉しいよ」
「やきもち?」
 うん、と返しながらスザクも向かい合ってしゃがみ込んだ。フレームが折れないよう取り出した眼鏡を床に置く。伊達でしかなかったそれを見ていたルルーシュと視線を合わせ、安心させるように微笑みかけながらスザクは話し出した。
「本当は連載が決まってからプロポーズしたい、って思ってて……でも忙しくなってからじゃ、デートも出来ないよな」
 眼鏡をかけていた理由は解らないが、スザクはどうやら秘密にしておきたいらしい。
「まだ俺は、付き合うとは……」
 もごもご言い訳しつつルルーシュが視線を泳がせていると、スザクは「ふうん?」と意地悪な顔付きになった。
「でも、もう付き合ってるようなものだって思ってなかった?」
「……っ」
 図星を突かれてルルーシュが口ごもる。スザクはいたく満足そうに「これからも思っててよ」と言い、何故か誇らしげにタチの悪そうな笑みを浮かべていた。
「馬鹿が」
 自信満々な態度にルルーシュがぶすくれていると、スザクが苦笑しながら隣に座り込む。
「僕だって、その気もないのに旅行に誘ったりしないよ?」
 愛しげな声だった。ぴったりと肩をくっ付けてきたので、スザクのリアルな体温と息遣いにどぎまぎしながらルルーシュはチラリと顔を見た。しばらく互いに見つめ合っていると、ふとスザクが目線を落として「それに」と続ける。
「僕がオタクっぽくしてても態度を変えなかったのは、君だけだ」
 今まで悪しざまに言う人がいなかった訳ではない。悔しげに唇を噛み締めるルルーシュにスザクは気にするな、というふうに淡く笑いかけた。縮こまるルルーシュに寄りかかって片膝を抱え、前を向いたままぽつりと呟く。
「見られちゃってさ、眼鏡外してるトコ」
「えっ?」
 例の担当さんのことだろうか。
 スザクの横顔は大人びていた。それ以上語るつもりはないらしい。
 蒸し返したくはないのだろう。居た堪れなくなってルルーシュが俯いていると、スザクは肩に回した手でルルーシュの頭を抱き寄せ、頬を押し付けながら「驚かせてごめん」と囁く。
「小さい頃『結婚しよう』って約束したのに。忘れた?」
「……!」
 下からスザクに覗き込まれ、思わずルルーシュの背筋が伸びる。
「お前……」
 幼い頃の約束。描いた絵を見比べて、競い合った日のことを思い出す。

『スザクは絵がうまいな、しょうらい画家になったらどうだ?』
『いやだよ、めんどくさい』
『ならマンガ家は?』
『おまえがなればいいだろ? 女みたいでいやだ』
『ぼくが女みたいって言いたいのか?』
『そうじゃないよ。じゃあおれがマンガ家ってやつになれたら、おまえどうする?』
『ぼくは、』
『なれたらおまえとケッコンしてやる!』
『結婚!?』
『男どうしはできない、なんていうなよ? マンガ家になっておまえとケッコンする。やくそくだからな!』

 他愛ない口約束にすぎないと思い、その時もルルーシュは本気になどしていなかった。大きくなるにつれ現実主義になり、半ば忘れかけてさえいたかもしれない。……だが、スザクはそうではなかった。忘れてしまったように見せかけていただけ。
「限りなく二次元に近い存在なんだ、君は」
「解るように言え」
「だから、ルルーシュ以上の美人なんていないってこと。僕の人生に現れて好きになってくれる、それこそ漫画の世界だ」
 天文学的な確率なんじゃないかな、とスザクがひとりごちる。妙にしみじみとした口ぶりにルルーシュも笑ってしまった。
スザクが肩を抱き寄せて耳打ちする。
 極端な貧乏暮らしやガスコンロを置いてさえいないのも、そうしていればルルーシュが毎日のように家に通ってきてくれると思っていたから。
 そう言われてしまえばもう、ルルーシュも怒るに怒れない。

二.五次元の君 1




1.

 ルルーシュはピカピカに磨き上げられた重箱を取り出して、手際よく出来上がったばかりのおかずを詰めていく。この重箱はスザク専用のものだった。成人男子の食欲は、弁当箱程度のサイズでは決して補い切れない。
 スザクの好物のうちの一つは納豆で、昨日リクエストされたのはあろうことか納豆巻きだった。カットしない方が食べやすいので切らなくていいと言われても、ルルーシュは正直言ってあれだけは触りたくない。ついでに言えば、匂いも受け付けないのでパックさえ開けたくなかった。
(俺の苦手なものくらい覚えておけよ、朴念仁が)
 なるべく安価なものを、という気遣いは解るのだが、自分の食事を作るついでだと申し出たのはルルーシュの方だ。
 昔からスザクはそうだった。大雑把で天然、異様に勘が良いくせに肝心なところだけ鈍感だ。幼馴染の好き嫌いくらい把握していてもよさそうなのに、とルルーシュは恨めしく思いながら弁当用のアルミホイルを手に取った。
(確かに、栄養価は高い)
 でも、偏るのはまずい。そう判断したルルーシュは重箱の上段に野菜を多めに入れ、ついでに巻きすとひきわり納豆をパックごと鞄に放り込んだ。大き目のお握りを三つ作り、そのほかに炊きたてのご飯で作った酢飯を使い捨てのポリパック二つにたっぷりと盛っておく。半分にカットした海苔を軽く炙って包装用のフィルムに数枚入れておき、密封し終えたところでタイミング良くだし汁入りの鍋が沸いた。次は味噌汁作りだ。
 二人は生まれた頃から一緒だった。家が隣同士で幼馴染、遡れば幼稚園の頃から進学先まで一緒。生徒会副会長のルルーシュと、風紀委員のスザク。つかず離れずな関係は高校卒業後も続き、今のルルーシュは大学生、スザクは駆け出しの漫画家だった。地道に投稿を続けてやっとデビューし、担当が付いたのはついこの間のこと。将来プロとしてやっていくと告げたら親に大反対されてしまい、学業と両立出来なくなるから、と止めさせられそうになって家を飛び出した。
 もちろん仕送りなど期待出来る筈もなく、卒業までに連載が決まらなければ諦めるという条件で、辛うじて一人暮らしが許されたらしい。おかげでバイトを掛け持ちしていても収入が安定せず、スザクは安アパートで絵に描いたような貧乏暮らしを送っている。
 調理器具どころかガスコンロさえない家。ルルーシュはまだ温かいうちに届けてやろうと、今日もまた鞄に三食分の食事を詰めて甲斐甲斐しくスザクのもとへと通うのだった。


「よ、スザク。進み具合はどうだ?」
「担当さんみたいなこと言わないでよ、お腹空いたよルルーシュ……」
 作業机の前に陣取って、スザクは一心不乱にペンを走らせていた。その声は死にかけだ。部屋を見渡せばアニメの設定資料集にラブシーンデッサン集、女体のモデル人形、極め付けに汚い。机の横には雑然と積まれた資料とネーム用紙、床にまでスクリーントーンが散乱している。
「お前……」
 幾らなんでもコレはないぞ、と苦言をぶつけかけたルルーシュにスザクが「うわきたっ!」と小さく叫ぶ。
「わかってる、わかってるよルルーシュ。でも今は無理、色々と無理……」
 ぶつぶつとうわごとのように呟くので、ルルーシュはがっくりと肩を落とした。慣れてはいても嘆かわしいことだ、昨日片付けたばかりでこのザマとは。散らかす才能が並じゃない。
(俺がいないと駄目か)
 世話焼きの才能とセットであるべき、というささやかな自負に浸ってルルーシュは鼻を鳴らした。
「一段落したら食べろ」
「ありがと。このコマ終わったらね」
 その前にまず掃除からか、とルルーシュが腕をまくる。
 会話していても、スザクは勝手に入ってきたルルーシュへは一切目を向けない。修羅場の時はいつもそうだ。Tシャツにスウェット、額に黒のヘアバンドというラフにも程がある恰好で原稿に集中している。ペン入れの最中は特に神経を使うようで、わきまえているルルーシュは散らばったトーンを番号ごとにまとめて片付け始めた。振動が伝わらぬよう折りたたみ式テーブルの足をそっと伸ばし、スザクの生真面目そうな横顔を盗み見る。
(これ以上視力が落ちなければいいが……)
 小さいころ裸眼だったスザクは黒縁眼鏡をかけている。高校時代から常時外さなくなったそれは地味なデザインで、童顔のスザクに似合っているとは今でも言い難い。その野暮ったい眼鏡の奥に光る団栗眼の下には薄く隈が出来ており、昨夜もろくに睡眠をとっていないことが伺えた。
(服といい眼鏡といい、こいつは)
 顔の半分が隠れているというのに、全く頓着していなさそうなのも大雑把だからだろうか。物心ついた頃から漫画一筋、ジョギングする時とバイトの時以外ほとんど外出せず、ルルーシュが見たことのあるスザクの私服は常にジャージか灰色のスウェット上下だ。またはどことなく薄汚れた感のあるジーンズと、オタク然としたチェックのネルシャツ。良くて二、三千円台のTシャツとGショックの腕時計。それが精一杯のお洒落だった。
 真っ白な蛍光灯の下、消しゴムとスクリーントーンのカス塗れになって机にかじりつく姿はお世辞にも格好いいとは言えず。それでもルルーシュは、ずっと前からそんなスザクへと密かに想いを寄せているのだった。
 ルルーシュが鞄の中から重箱を取り出し、蓋を開けてテーブルの上に広げる。箸を並べたところでスザクが軽く息をつき、ようやく手を止めてルルーシュの方へと向き直った。
「今日のも美味しそうだね、君は?」
「俺は食べてきた」
「そっか――え、もうこんな時間?」
 机に置かれたデジタル時計に目をやってスザクが立ち上がる。スウェットの太腿で手汗を拭い、ルルーシュの向かい側に座椅子を移動させてそこに腰を下ろした。
「食事中は切り替えろ。そんなにヤバいのか?」
「消しゴムかけ手伝って」
「馬鹿言え、俺はアシじゃない」
「出世払いでお願いします。肩痛いんだよ、じゃマッサージ」
「甘えるな」
「そこを何とか!」
「いいから食えって」
「うん……いただきます」
 箸を取ってスザクが手を合わせている。昨日何をリクエストしたか忘れた訳ではないだろうに、違うメニューが並んでいても文句ひとつ零さなかった。
「納豆巻きだけどな、昨日の」
「?」
 さっそくお握りにかぶりつき、頬を膨らませながらスザクがぱちくりと瞬く。
「いや、いい」
 ルルーシュが言葉を濁し、スザクは口をもぐもぐさせながら頷いた。
「おいひいよ? 君のおはん」
「空腹が最高のスパイスか?」
「ほうひゃ、――そうじゃなくて」
 途中でごくんと飲み込んで、スザクが大好物のデミグラスソースのかかったミートボールに箸を伸ばす。隣の人参ソテーと玉ねぎも一緒に口へ運ぶのを見てルルーシュも自然と頬を緩めた。
「海苔と米、持ってきたから明日自分で巻け」
「納豆巻き!?」
「俺の前では作るなよ?」
「ほんとに? あるの? パックごと」
「特売だった。ひきわり三パック八十五円」
「普通だ……」
「普通だな」
「ひきわり買わなくても、」
「俺は肉と野菜しか刻まない」
「………………」
 即座に打ち消され、黙り込んだスザクが「そう」と複雑な面持ちになり、箸の先を咥えたまま上目遣いでルルーシュを見る。
「『俺はフ●ーしか泳がない』みたいだった、今」
「何の話だ」
「京ア●ってわかる?」
「知るか」
「つれないでござる」
「完全にアウトだろその口調。お前は新撰組辺りもこじらせてるのか?」
「幕末イコール新撰組じゃないんだよルルーシュ、る●うに剣●だよ。映画見に行こう?」
「原稿が終わったらな」
「映画は夏だよ。解ってるよ……」
「終わらせるんだ、お前が」
「拙者働きたくないでござる。ルルーシュに見捨てられたら死ぬかも」
「!」
 だからその喋り方やめろ、これだからオタクは。寸でのところでルルーシュがその二言を飲み込んだのは、スザクの拗ねたような不意打ちの一言にうっかり萌えてしまったからだ。
(こいつの場合は口だけだ)
 スザクは仕事に関して妥協しない。甘えたことを言っていても両親に止められた時、ルルーシュが不安定な進路だと口にしたら『途中で投げ出すつもりはないよ』と切り口上で反発された。
 普段怒らない奴に限って怒ると怖い。スザクが本当は責任感が強く、言い出したらきかない頑固な性分だとルルーシュは心得ていた。
「良かったな、まだ死ななくて済みそうで」
「まだ……」
 繰り返すスザクからルルーシュは目を逸らした。スザクもそんなルルーシュをじっと見つめ、まばたきに合わせて余所に視線を逃す。
「ルルーシュ」
「ん?」
「ホントに嫌いだよな、納豆」
「苦手と知りつつリクエストしたのか」
「食べたかったんだ」
 ルルーシュへと視線を戻してスザクは「怒った?」と尋ねた。ルルーシュはすぐには答えずスザクを軽く睨む。
「ぬるぬるねばねば……あんなもの」
「恨みがこもってる」
「臭いだろ、腐ってる」
「臭いけど美味しいんだってば、腐ってるけど」
 他愛ない会話をかわしながら、スザクはパクパクとおかずを平らげていった。食欲旺盛なスザクをルルーシュも黙って見守る。
(こいつらしいな)
 悪意がない代わりに遠慮もない。美味しそうに食べる姿だって本当は目の保養だ。幼馴染としての特権と理解、そこに実はちゃんと把握されていたと知ったがゆえの面映ゆさも混じり合い、ルルーシュは胸の内でこっそりと嬉しさを噛み締めながらスザクとのやり取りに和んでいた。
「風呂に入ったのか?」
 忙しい中でも入る暇を無理やり作ったのか、スザクの茶色い癖毛が綿あめみたいにふわふわと膨らんでいる。
「シャワーだよ。ルルーシュ僕の髪の毛見るのやめて?」
「なんで」
「膨らんでるんだろ、かっこわるいよ」
「お前は普段からかっ……こわるくはないぞ」
「『大丈夫だ問題ない』みたいな顔しても駄目だよ、ルルーシュ結構顔に出るんだから」
 そんなことはない、と言い返そうとしてルルーシュはついムッとしてしまい、勝ち誇ったように「ほらやっぱり」とスザクに笑われてしまった。お返しに重箱ごと奪おうとするとスザクがぶるぶると首を振り、口に入れたばかりのものをもぐもぐさせながら必死で取り返そうとする。
 ルルーシュは自分も箸を割り、戻した重箱の中からポテトの欧風炒めを選んでスザクの口に放り込んでやった。
「もっと野菜を摂れ、野菜を」
「おいひい!」
「そうだろうそうだろう、もっと褒めろ」
「るるーひゅ、へんはい!」
「変態はお前の方だろうが!」
 噴き出したスザクが「ちあうよ!」と首を振る。笑いを堪えながら慌てて口を覆い、大急ぎでごくりと飲み込んだ。
「落ち着いて食べろ、この漫画馬鹿が」
「天才っていったのに。次ブロッコリーがいいな」
「天才……? フン」
 当然だ、と言いながらルルーシュが注文通り食べさせてやると、スザクが「うん」と満足げにかぶりつく。
「へんはい」
「どうも『変態』と言っているように聞こえるな……」
 口にものを入れたまま喋るな、と注意したいルルーシュだったが、スザクの締まりのない笑顔を見て諦めた。いったん箸を前に置き、テーブルに肘をついて指を組む。
「難儀な仕事を選んだな、お前も。風呂に入る時間もないとは」
「ん――。時間はあるけど、なくなっちゃうんだ。君がいてくれて助かるよ」
「人を便利屋みたいに言うな」
 ルルーシュが本気で毒づいているとはスザクも思っていないのだろう。ただ、曖昧な笑みを口元に乗せて思わせぶりに黙り込む。
「気になるか?」
「ん?」
「髪だよ、髪」
「ああ……」
 スザクはヘアバンドでずっと頭を締めつけていたことに気付いたようだ。溜息交じりに首元へずらし、癖のついた前髪をかき上げてまた付け直した。
「それよりさ、修羅場が終わったら温泉に行きたいよ、銭湯でもいいし。脱稿した直後でも構わないから」
「温泉、ね……」
 やや唐突に話を逸らされた感じがしたのは気のせいだろうか。ルルーシュがぼやくスザクに頷きつつ三個目のお握りを手渡し、食べ終えた二個分のホイルを片付ける。
(スザクは元々こうだ)
 自分に言い聞かせるようにしてルルーシュは疑惑をかき消した。人の話を聞かないのも話題がぽんぽん飛ぶのもスザクの特徴、ルルーシュも単なる癖としか捉えていない。しかし、スザクは自分の容姿や異性の件、特に恋愛関係に話が及びそうになるとさっさと話題を変えてしまう。
 ルルーシュが水筒のカップにシジミの味噌汁を注いでやると、差し出されたおかわりを勢いよく飲み込んでスザクは「あちっ!」と眉を顰めていた。
「おい、気を付けろ」
 聞こえているのかいないのか、スザクがふうふうと息を吹きかけながら今度は慎重に啜る。はーっと吐息で美味しさを表現し、幸せそうに緩む目元を見ていると、ルルーシュもときおり芽生える小さな違和感など大した問題ではないと流してしまうのだった。
「ルルーシュ温泉行くならどこがいい?」
 水を向けられてルルーシュは肩を竦めた。
「無理するな、お前が忙しいのは知ってる」
「してないよ、もし行くとしたら」
「うん……」
 今の生活に不満はないので、行きたい所と言われてもすぐには思いつかない。スザクと一緒にいた期間は長く、私生活を共に出来るくらい解り合えていて、気を許してくれているとも思っている。幼馴染だから特別と驕っている訳ではなくとも、自分以上にスザクを好いていて理解している奴などいない筈。少なくともルルーシュはそう信じていた。
(こうして食事を作りに来る恋人が他にいる、というのならともかく)
 でも、二人きりの旅行というのは普通、恋人同士でやることではないのか?
(こいつに想いを……俺から?)
 急に現実に引き戻されてルルーシュは憂鬱になった。
 スザクとの関係は一見、安定しているように見える。本当は、いつ割れるともしれない薄氷の上に居るのにだ。今だって付き合っているのと同じようなものではあるけれど、もしこの先、本気で好きな相手がスザクに出来てしまったら?
「どうかした? 黙って」
「あ、ああ……そうだな」
 不審そうに眉を寄せるスザクにルルーシュが頷く。
「なるべく静かな旅館なんかいいな」
 上の空な答え方をして、ルルーシュは物思いにふけった。スザクは「旅館かぁ」と首をひねり、バイト先で貰ってきたらしい旅行雑誌を机の下から引っ張り出す。
 テーブルの向かいでお握りの最後の一口を頬張り、ページをめくるスザクの姿をルルーシュは複雑な気分で眺めていた。実際に行ける訳ではなくとも、一緒に行く相手として想定してくれるだけでも嬉しい。
(他の奴にも同じことを言っていたりはしないよな?)
 まさか、と思う。心の中でなら尋ねられることでも口には出せない。鈍感なスザクがルルーシュの想いに気付く日などこれからも来ないだろうし、そういう対象として意識されているということもなさそうだからだ。
(男同士でも旅行くらい行くものかもしれないが――)
 なら、一度くらい勇気を出してみてもいいだろうか。スザクには今、好きな人や気になる相手はいないのかと。
「スザ――」
「よし食べ終わった、ごちそうさま!」
 話しかけたタイミングと重なってしまい、うん、と伸びをしたスザクがルルーシュに「何?」と問いかける。ルルーシュはきょとんとしているさまに何となく切り出す意欲を削がれ、黙って首を振った。
「食べ終わったら歯を磨けよ。食事の前も手を洗わなかっただろう」
「ルルーシュは細かいな、シャワー浴びたから平気だよ。でもそうしておく」
 スザクは軽口を交えつつ、どこかほっとしたように相好を崩した。
「限界まで描いたらそのまま眠っちゃうだろうし、今夜中にペン入れ終わらせないと」
 頑張ろう、と呟いてスザクはルルーシュの忠告通り洗面所へ向かった。
(なんといっても、こいつはスザクだからな)
 安堵の中に落胆が滲む。ルルーシュはわざとそれに気付かないふりをした。
 もしスザクが貧乏でちょっとダサいオタクではなく、もっと格好良くて恋心にも聡い男だったら、今頃はとっくに別の誰かに奪われていたかもしれない。
 スザクが別の誰か――特に、女が寄ってくるようなタイプでなくて良かった、とルルーシュは改めて胸を撫で下ろすのだった。

→2

【R18】 処女厨枢木×淫乱処女ルルーシュ(♀)





★あてんしょん★
ずみちゃんからのリクエストです。(遅くなってもうしわけない!)
しかも盛大に趣味に走ってしまいました。エロ<露出って感じかもしれません。
るるーしゅ君がルル子ちゃんになっております。口調はそのままです。
枢木さんがアレなのは当サークルの仕様なのかもしれない。



★〓★〓★〓★〓★〓★〓★〓★〓★〓


 仲睦まじく恋人繋ぎで歩くカップル。きっとそう見えているはずだ、とルルーシュは信じたかった。電車に乗っていた時から、周囲の視線がひどく気に掛かる。着ているのが男性用の、サイズの合わないロングコートだからだろうか。只のデートにしては妙な服装だが、通行人の誰もが気付かない。その下がまさか全裸で、しかも、はしたなく股を濡らして歩いているだなんて。
 隣にいる男、枢木スザクが全ての元凶にもかかわらず、ルルーシュは今、一人きりではないことをほんの少し有難く思った。もちろん礼を言ってやる義理はない。遡れば中学生の頃、当時高校生の枢木が月極で借りていた屋外コンテナの中でルルーシュは『女』として目覚めた。大変なことをしてしまったのではないか、そう思ったのは後になってからで、仄かに寄せていた好意が思春期特有の感情だったとは知りもせず、また、相手がいわゆる『悪い男』だということもルルーシュはよく解っていなかった。
 最初は興味と好奇心、『こんなもの怖くもなんともない』という無謀な意地。いつかやめなければ。でも、まだ最後まで明け渡した訳でもない――。
 狭い倉庫内での悪戯は、二人の間に秘密を作った。後ろ暗い関係を暴露される不安はもちろん付きまとったが、ルルーシュにとって一番許せないのは枢木に負けることだ。
 『怖いの、ルルーシュ?』と枢木はいつも尋ねる、ルルーシュが首を縦に振ることなどないと知りながら。おかげで高校生になってからのルルーシュは、制服のスカートを自分でめくることと、襲ってくる羞恥心や後ろめたさを忍んで足を開き、気持ちいい場所を吸われるとどんなに甘く腰が疼くのかを覚えてしまった。教え込んだのは枢木で、クリトリス以上に気持ちいい場所があることを今のルルーシュは知っている。けれど、枢木がとりわけこだわったのはルルーシュが処女であることで、先に貫かれたのは膣ではなく、アナルの方だった。
 以来、ルルーシュは誘われるとパブロフの犬のように涎を垂らすようになった。濡らすのは口元ではなく、股の間だ。本当はもう、指じゃないものを挿れて欲しい。口に出せない浅ましい欲望を、ルルーシュは未だに持て余している。
「ルルーシュ、疲れた?」
 立ち止まって枢木が尋ねる。街中には、平日の昼間とはいえ人の姿があった。白々しい枢木の笑顔はもう見慣れたものだったが、この笑みに騙された過去がある以上、ルルーシュも同じように騙される他の女たちのことを笑えない。
「疲れた、と言ったら休ませてくれるのか?」
 変態に付き合わされる身にもなって欲しいよな。内心、そう思いながらルルーシュは枢木の肩に頬を寄せ、嫣然と微笑み返した。
「誰のこと?」
「お前だろ」
「酷いな、変態なのは君だろ?」
「どの口が言うんだ、この俺に痴女みたいな恰好させておいて」
 まるで他人事のように痴女、と枢木が口の中で呟く。非難する割に、ルルーシュの口ぶりは楽しげだった。
「どこからどう見てもカップルじゃないか。お水の人の朝帰りにも見えるよ」
「そんな訳あるか」
 フォローにならないフォローと共に、枢木はルルーシュの肩を抱き寄せた。
「じゃあ休憩する? 君にプレゼントもあるし」
 ひっそりと囁き、ぶら下げていた紙袋を掲げてみせる。ルルーシュは繋いでいた手に腕を絡め、答えの代わりに豊満な胸を押し付けた。
 しばらく歩いた先には歓楽街がある。ビジネスビルが立ち並ぶ通りの裏側、飲み屋がずらりと軒を連ねるそこでは、会社帰りのサラリーマンや遊び人たちが夜な夜な飲み歩くのだろう。ほとんど別世界ともいえる通りの角に、二人がよく使うホテルがあった。まだ点灯していないネオンサインに、青い大きな文字で『空室』と書かれている。馴染みの店の暖簾をくぐる気分で入口を抜け、二人はカップル然として部屋を選んだ。
 フロントはがらんとしていて、人影もない。代わりに小さなウェルカムボードが置かれ、有線から流行りの音楽が静かに流れている。一歩踏み込んだ途端、もう夜だ。時の淀んだ空気はルルーシュに、密かな緊張と昂揚とをもたらす。
 受付が済むのを待つ間、ルルーシュはフロントの奥、壁や天井からぶら下げられたハロウィンの装飾を眺めていた。業務用の卸店で購入したものか、季節にふさわしく、紫色とオレンジ色のフィルムで作られた鎖やモビールが照明に反射し、メタリックな輝きを放っている。連想するのは小、中学校の学芸会だ。賑やかなその中に鎮座し、煌々と目を光らせているカボチャの置物が、二人の姿を黙って見守っていた。
 エレベーターがゆっくり動きだすと、互いの間に沈黙が生まれた。枢木は階数ボタンの前に立ち、奥に乗り込んだルルーシュは壁にもたれて余所を向いていた。ふと、枢木が背を向けたまま笑っていることに気付く。単なる気配に過ぎないが、浮足立っている自覚のあるルルーシュには解った。馬鹿にされたと感じ、肘で背中を小突いてやると、ちらりと振り返ってきた枢木は誤魔化すように軽く眉を上げ、口元に浮かべていた笑みをかき消した。
「コート開いて。部屋までその恰好で歩いてよ」
 無人の廊下に出るなり枢木は言った。ルルーシュの背後に回り込み、襟から手を差し込んで胸を揉みしだく。監視カメラに映っていようと頓着しない。むしろ、見せつけようと――しかも楽しんでいるふうで、たわわに実った両の乳房を交互に揺さぶった。
「あ――」
 やんわりと揉みしだかれ、ルルーシュがよろける。指先が乳首の周りを一巡するごとに、ルルーシュの割れ目は新たな汁を垂れ流していた。コートの他に唯一、身に着けていたのは太腿までのストッキングで、内腿のレースに愛液がだんだん染みていく。枢木は手先の器用な男で、愛撫は常に丹念だ。が、今日は気が急いているのか少々、雑だった。引っ張られたボタンの隙間から、白くきめ細やかな肌が覗く。いやらしく弾む乳房は枢木の手にも余るようで、指の股から柔肉が漏れ、コートの表面に薄く凹凸が浮き出ていた。
 匂い立つ色香にたまらず、枢木は腰まである黒髪に鼻先をうずめた。深く息を吸い込み、静かに吐き出す。ジーンズの下では勃起が張り詰めていて、ペニスに血が集まっていくのを抑えようとしていたのだ。
 ルルーシュは外にいた時から濡らしていた股を、コート越しにそっと押さえた。絡みつく枢木の腕を振り払い、思わせぶりに振り返る。そして、コートの前面ではなく、あえて襟元をつまみ、わざと胸を突き出しながら開いてみせた。
 生意気そうに、つんと立ち上がったピンク色の乳首、くびれたウエストに巻きつくガーターベルト。すらりと伸びた足は網目のストッキングに覆われ、同色のヒールも闇夜の黒で、爪先まで美しく飾っている。ルルーシュの恥丘はなめらかだった。本来ある筈の繁みは綺麗に処理され、逆三角形を描く両足の隙間で愛液がつやつやと濡れ光っている。ほの暗い照明の下、はっきりと見て取れた。
 極上の姿態を前に、枢木がごくりと喉を鳴らす。何度目にしても飽きることのない、手触りの良さまで知り尽くした女の身体。毎度、同じ強さで惹き付けられ、枢木は誘われるまま紙袋から真っ赤なローターを取り出した。
 コードの付いた卵型のそれを、ルルーシュの唇に近付ける。形良い唇がうっすらと開き、舌先でひと舐めしたのを見届けると、枢木はコントローラーをガーターベルトに差し込み、湿った先端をルルーシュのクリトリスにしっかりと押し当てた。ブウンとうなりを上げ、ローターが振動し始める。ルルーシュはうっとりした面持ちになり、陰核で味わう陶酔に嬉々として足を開いた。
「プレゼントは、これだけじゃないから」
 枢木がルルーシュの細腰に片腕を回す。ヒクつく割れ目に沿ってローターを行き来させ、ぎゅっと強く押し当ててから、慣らしも要らなさそうな蜜壺に全部押し込んだ。
「あぁっ……」
 ルルーシュが僅かに、残念そうな溜息をもらす。察した枢木は指を突っ込んでやりながら、掌の腹でクリトリスを愛撫した。嬉しげに尻をくねらせ、ルルーシュが掌に股をこすり付ける。そこで、枢木は含み笑いを漏らした。
「やらしいねルルーシュ」
「誰のせいだ……?」
 妖艶な流し目を送り、ルルーシュは枢木にしなだれかかった。好色そうで、今にも舌なめずりしそうな魔性の微笑み。快楽に溺れながらも強かさを失わず、「困った奴だ』と諌めるかのような。その笑い方が、枢木はたまらなく好きだった。
「すぐ入るのにきついよね、君のまんこ。ホントはこのまま突っ込みたいけど、ルルーシュまだ処女だもんな」
「馬鹿が」
 卑猥な物言いに感じ入り、ルルーシュの腰が無意識に揺れる。どこからともなくドアの開閉音が響き、二人は一瞬、足を止めた。
 談笑する声が近づいてくる。廊下の端には階段があり、エレベーターを使わなくても駐車場まで降りていけるようになっていた。――どうする? と互いに探り合う。廊下は直線状になっており、隠れられそうな場所などどこにもない。このホテルの構造を、二人は熟知していた。枢木が根本まで埋め込んだ指をぬくぬくと動かす。口角の上がったルルーシュの唇から、興奮し切った吐息が零れた。
 股に栓をされ、支えられながら歩く姿を、名も知らぬ誰かに見られてしまうかもしれない。露出が常のハプニングバーなどでは味わえないスリルだ。ルルーシュの乳房は期待に膨れ、はちきれんばかりだった。部屋は、廊下の真ん中くらいにある。辺りを憚ってはいるのだろうが、ときおり聞こえてくる話し声は更に近くなっていた。
 否応なく、緊張が高まっていく。しかし、枢木はルルーシュを煽る手を止めようとせず、ルルーシュもまた、はだけたままのコートを直そうとさえしない。腹の奥で蠢く玩具の感触に伸び上がり、指で突き上げられる動きに合わせて深く腰を沈めたり、小刻みに上下させたりしている。
 ちょうどドア前まで進み、枢木が鍵を取り出したところで、階段から一組の男女が下りてきた。視線が合い、女が短い叫び声を上げる。そして、慌てて男の影に隠れた。男の方は呆気にとられ、ぽかんと口を開けている。顔面に好奇の色を滲ませながらも、どこか見とれている様子でもあった。枢木がルルーシュの乳房を持ち上げ、自分で吸うよう促してみると、女は男を見上げてクスクスと笑った。露出を楽しむ変態カップルと観客。ルルーシュは、自分を見つめる知らない男に微笑みかけ、舌を出して自分の乳首を舐めてみせた。
 男がにやりと笑い、興味深そうな目配せを枢木に送る。枢木もルルーシュの下乳を持ち上げ、『可愛いだろう?』と問いかける代わりに、突っ込んだままの指を広げて陰部を見せてやった。
 ぱっくりと開いた割れ目から、ローターのコードが飛び出ている。女がぎょっとして口を覆い、男は少し照れたのか、にやけ顔を逸らした。互いに楽しんでいる、ということだけは心得たらしく、彼らは特に声を掛けてくるでもなく、肩を寄せ合ったまま階下へ降りて行った。
「何だよ、あいつ」
 言いながら枢木は鼻で笑った。男が「参った」という顔をしていたのが面白かったのかもしれない。美人を連れ歩くのは男の夢だ。ルルーシュほど桁外れの美人を、となれば、男女の関係になる特権を得た男は、同性からしても羨望の的なのだろう。
 少なからず、枢木は機嫌を良くした。ルルーシュはムッとし、爪先で蹴ってやろうとしたが、開錠した枢木がドアを開きがてら、横に避けるほうが僅かに早かった。
「足癖悪いよルルーシュ、もっと上品にしててくれなきゃ」
 枢木はドアを開けて待っていたが、もちろんレディーファーストの精神からではない。先にルルーシュが入ると、後ろから伸びてきた手がローターのダイヤルを最大まで回す。
「――ッ!」
 ルルーシュはビクンと反り返り、むき出しの乳房を大きく弾ませた。強すぎる振動が膣口を通り、ぬるりと外に飛び出てくる。枢木はコードごと引き抜いたローターをクリトリスに当て、舐める動作に似せて幾度も細かく動かした。
「っ、やめ、きつぃ!」
「お仕置き」
「だったら、避けるなよッ……!」
 無茶言うなよ、と枢木が呆れ声で言う。
「いくら僕でも、ヒールで蹴られたら痛いって。それともさ」
 前置きし、枢木はルルーシュをくの字になるよう屈ませた。耳元で囁く。
「余所見されるの、そんなに嫌だった?」
「調子に……乗るなッ!」
「乗るよ、たまには。ほんの贅沢」
 あまりに満足そうな言い方で、ルルーシュは言葉を詰まらせた。枢木は後ろから覆い被さり、ルルーシュの乳首を弄びながらしつこくローターを動かし続ける。強く押し当てられるたび、虫の羽音に似た耳障りな振動音がルルーシュの鼓膜に響いた。マンションでいえば玄関にあたる場所は、大人二人で居ると窮屈だ。ルルーシュは壁に両手をつき、過ぎる振動から逃れようと腰をよじっていたが、胸から離れた手は潤む襞の内側へとすかさず分け入ってくる。
「んっ……!」
 傍若無人な指に貫かれ、途端、ルルーシュの下肢全体に甘い痺れが走った。背を逸らし、壁の手すりでどうにか体重を支える。枢木は一度抜いた指を二本に増やし、手首ごと裏返して再び奥までねじ込んだ。
「ふぁ……っ!」
「見られて興奮したんだろ? でないと、こんなに濡れるはずないもんな」
 乳首をローターで撫でつけ、枢木は反った指の腹で膣の内壁を絶え間なくこすった。激しく出し入れするのではなく、子宮口の手前をゆっくり刺激してやる方が、よりルルーシュの性感が高まることを知っているのだ。
「ルルーシュさんに質問です。休憩三時間で、合計何回イけるでしょう?」
 ふざけた口調ながら、枢木は抜いた指でクリトリスを挟んで優しく撫でこすった。ルルーシュとしては物足りない。去っていった指が――溶け落ちそうな快楽と一体感が名残惜しく、陰唇の溝を指が掠めていくたびに蜜壺がきゅんきゅんと収縮する。すっかり体が出来上がったルルーシュに構わず、枢木は土手を引き上げて陰核の包皮を器用にめくった。ぷっくりと勃起したクリトリスが現われ、ローターを押し当てると足が突っ張る。瞬く間に、意識を根こそぎ奪われそうな快感がルルーシュを襲った。
「あぁらめ、らめ……、イく――!」
 小さく呻くと同時に、ルルーシュの背筋がぐんとしなった。一気に絶頂まで駆け上り、限界まで突っ張らせた両足が細かく痙攣する。
 もっと長々と、心地よい快楽を貪っていたかったという残念さと、『もしかすると枢木のことが好きなのかもしれない』という倒錯した疑惑が頭をよぎる。付き合っているのと限りなく近かろうと、実際は歪んだ関係でしかない。少なくとも、ルルーシュは今までに一度も、枢木からそれらしい台詞を聞かされたことはなかった。
「駄目だな、これじゃ。ご褒美にしかならない」
 ビクビクと痙攣し、恍惚の表情を浮かべるルルーシュの尻を枢木はぴしゃりと打った。ぴんと立ったままの乳首をつまみ、コリコリと指先で遊ばせ、紙袋の中へ無造作にローターを落とす。
 ルルーシュはぐったりと壁にもたれていた。全身うっすらと汗ばみ、息も上がっている。コートを脱ぎたいと思ったが、動くのがどうにも億劫だ。その間に枢木は部屋へ入り、テーブルに紙袋を置いてルルーシュに振り返った。コードのはみ出た袋には、他にも怪しげな玩具が幾つも入っている。さっき覗いた時、皮素材と思しきベルトのようなものが見えたのを、おぼろげな意識の中でルルーシュは思い出した。
 突然、薄暗く設定されていた部屋が明るくなり、見ると枢木が、ベッドに座って照明のダイヤルをいじっている。ルルーシュと違い、この男は明るい部屋が好きなのだ。非常に簡素な内装は、性行為のためだけに設えられたかのようで、置かれているのは室内の半分を占めるベッドと、脇にローテーブルとソファが一台ずつ。ルルーシュは急に居心地が悪くなり、こわばった顔を俯けてもじもじしていた。すると枢木が、紙袋から黒い服のようなものを取り出し、片手に携えて戻ってくる。
「面白いことしよっか」
「……?」
 ね、と枢木は笑いかけ、後ろに回り込んでルルーシュのコートをさりげなく脱がせた。金属質なカチャカチャとした音が背後から聞こえ、ベルト同士がぶつかり合う重たげな音もする。そのベルトと思しきものは、どうやら何本もありそうだった。ルルーシュが尋ねようとして振り返ると、枢木は床にコートを落とし、ルルーシュの両腕を持ち上げた。
「腕上げて、そのまま下ろさないで」
「いや、ちょっと待て」
 『拘束』という言葉が浮かび、せめて同意を得てからにしろとルルーシュは訴えたかったが、枢木は手早く皮で出来た幅の広い服を着せていく。
 ウエストに巻かれたものはコルセットだった。しかし、胸を覆うカップはついておらず、アンダーバストに沿って括り上げるベルトが二本ぶら下っているのみ。枢木は、幾つも付いた背中のホックを全部閉じ、前に回ってバツ印に交差した紐を結び直していた。コルセットと肌との間に指を差し込み、たるみを直す。そして、腋からぶら下がったベルトを取り、首まで引き上げて長さを測っていた。
 その表情は、仕事中に淡々と書類を片す時みたいで、ルルーシュは何も言えずにいた。正面からじっと見つめられ、自分の恰好に思い至って狼狽する。不審に感じて見つめ返すと、枢木は愉しげに目をそばめた。肩にかかった長い黒髪に視線を止め、丁寧な手つきで後ろへはらう。
 背に流れる毛束、首筋を掠めていく指先の感触に、ルルーシュの背筋がぞくりと震えた。枢木の視線は『舐めるような』という表現がぴったりで、身体の内側がカッと火照った気がルルーシュはした。情欲のこもった眼差しが首から胸元へ下りていき、隠すもののないルルーシュのバストを捉える。ひとしきり眺め、再び見上げ、枢木はルルーシュの頬を愛しげに撫でつけた。――満足そうに、にこっと笑う。その視線はゆっくりと、手元のベルトに戻っていった。
 ルルーシュは一連の仕草に見入ってしまい、枢木がバックルを動かし、穴の位置を調節している間じゅう、ただ硬直し続けているしかなかった。
「すごく綺麗だ、似合うよ」
「喜ぶとでも思うのか?」
「もっとヒラヒラしてる方がいい?」
「どうでもいい……」
「女の子だろ? ルルーシュは」
 小馬鹿にした響きで、首の裏にベルトを通しながら枢木がのんびりと口にする。女だからといって、さして遠慮などしないくせに。一応は尊重している、という言い方をされ、ルルーシュは気が抜ける思いだった。
 僅かに余裕を取り戻し、チクリとつつく。
「同性には厳しそうだよな、お前って。嫌われるぞ、そういうの」
「はいはい」
 枢木は適当に往なした。ルルーシュの首の後ろでパチ、パチ、とドットボタンが閉まる固めの音がする。ベルトを留め終えた枢木は辺りを見回し、「あれっ」と首を傾げた。
「あった」
 コルセットと付属のパーツが、落ちたままのコートの下敷きになっていたらしい。めくった中から現れたものも、太く丈夫そうな黒皮のベルトだった。枢木は二本あるうちの一本をルルーシュの腕に巻き、残りの一本をもう片腕に装着させた。枷の内側に、コルセットの側面にあるものと同じ金具が付いている。繋ぎ合わせて使うのだろうが、外側にも二箇所づつ付いていて、そちらの用途は謎だった。しかも、これで終わりかと思っていれば、まだ一枚あったようだ。ルルーシュが最後に渡されたものは、同じ素材で出来た細い紐のようなショーツだった。
「履いて」
 受け取ったそれを、ルルーシュはまじまじと眺めた。見れば見るほど変態的なデザインだ。前から見ればショーツだが、用を足す部分にぽっかりと穴が開いていて、フリンジによく似た紐で閉じられるようになっている。尻にも穴があり、紐はなかった。両サイドのチャックで着脱する作りのようだ。
「嫌いじゃないだろ、こういうの」
 ルルーシュがショーツを履き終えたところで、枢木が枷とコルセットの金具を繋ぎながら言う。皮が汗を吸い取り、ルルーシュの肌にしっくりと馴染んだ。上半身と下半身、両方をまんべんなく締め上げられ、ショーツの中で圧迫されたクリトリスが切なく疼きだす。
 枢木は見透かしたように目元を緩め、両腕を封じられたルルーシュをベッドへ引き連れて行った。
「警戒しないね」
「お前を?」
「うん」
 ルルーシュが瞬くと、枢木が俯く。
「必要ないってことなのかな」
 ほくそ笑むのを隠すためか、「ずいぶん信用されてるな」とひとりごち、枢木はベッドの縁に腰かけた。ルルーシュは数歩ほど離れた場所に立ち、顔に困惑を乗せている。
「何してるの、早くおいでよ」
 枢木はにこにこしながら手招きした。いかにも人好きしそうな笑顔だが、付き合いの長いルルーシュには解った、『良からぬことを企んでいるに違いない』と。
「どうも悪い予感がするな」
 けれども興味を惹かれ、下半身を疼かせながら寄っていく。枢木は、笑みを絶やさなかった。広げた膝の間にルルーシュを立たせ、枕元からビニールに包まれた灰色の物体を引っ張り出す。
 コード付きのそれは、ルルーシュも見たことのあるものだった。アダプターで使う電動マッサージャー――俗にいう『電マ』だ。
 前に来た時は置いていなかったから、ホテル側の新しいサービスだろうか。さすがにどう使うのかは、ルルーシュにだって解る。凝視するルルーシュを枢木は一瞥し、気付かれないようひっそりと肩を揺らした。
「気持ちいいよ、これ」
 と、ルルーシュの腕を引いて立ち上がる。
「使ったことでもあるのか?」
「他の子に?」
「そういう意味じゃない」
 枢木は「はっ」と噴き出し、笑み崩れて「さあ、どうだろう」と顔を背けた。睨むルルーシュを自分が座っていた所に横たえ、ヒールを脱ごうとするのを止めて片足ずつベッドに乗せる。そうして、テーブル上の紙袋を探り、また何か取り出して袋ごと持ってきた。
 枢木が取り出したものは、棒状に結わえられた真っ赤なロープだ。
「おい、まだ縛るのか」
「まあね」
 呆れてルルーシュは起き上がろうとしたが、腹筋に力が入らず倒れてしまった。枢木は横目でルルーシュを見下ろし、固く巻き付いた部分から順にほどいていく。絡まないよう縄の癖を直し、ときどき伸ばしながら、枢木はルルーシュの腕枷へと目を向けた。端を外側の金具に通し、一度縛ってから背中側に回し、もう一方の枷の金具にも同じように括り付ける。余った部分に幾つかの結び目を作り、ルルーシュに腕を伸ばさせて、輪にした箇所にルルーシュの手首を突っ込んだ。一体どういう仕組みなのか、間を引っ張ると両手首が締まる。枢木は妙に手馴れていて、動作に一切、無駄がない。
「……なあ」
 ここまで縛られてしまうと、もし刺激がきつすぎても逃れられないのではないか。あまりの手際のよさにルルーシュは呆然としていたが、間抜けなことに、今頃になってから気付いた――横にあるのは電マだ。
 枢木は答えず、鼻歌でも歌いだしそうな表情で、一本目よりも短めの縄を袋から取り出した。素早くほどいて真ん中で折り曲げ、さっき作った結び目の間に通す。分けた二本の長さが均等になるよう調節し、外側に折り曲げたルルーシュの膝裏に、縄の両端をくぐらせた。
「どう、痛くない?」
 枢木は縄を二、三周させ、あっという間にルルーシュの手足を固定し終えてしまった。
 M字に開脚させられたまま、ルルーシュが再度、不安げに「なあ」と呼びかける。
「さっきも思ったんだが――訊いていいか」
「何、改まって」
「こういうのが趣味なのか?」
「僕……?」
 枢木は「うーん」と考えるふりをし、「嫌だったらしないかな」と答えた。
「ちなみに、お前にとっての俺とは?」
 真顔で尋ねると瞠目し、ブハッと勢いよく噴き出す。
「散々エッチなことしといて今訊くの? すごいね」
 ベッド横に屈み、枢木は上目使いになってルルーシュに小首を傾げた。
「君こそ、僕が彼氏でいい訳?」
「そ、そういう意味じゃない!」
 お前の本心を言えというんだ、とルルーシュは続けるつもりだった。が、枢木は立ち上がって「まあまあ」と遮り、枕元から電マを取り上げて冷たい笑みを浮かべる。
「言っとくけど、僕は理想高いよ?」
 応えられるならね、と挑発する物言いだった。別に、ルルーシュから『付き合ってくれ』と頼んだ訳ではないのに、何故、枢木の理想に沿わねばという話になっているのか。
「彼女、イコール僕の玩具。『感じるだけのオブジェ』、それが僕の理想」
「は……?」
「ちょうどいいや、今から試そう? ふさわしいとは思ってるけど、なれるかどうかは別だろ?」
 ぽかんとしているルルーシュの頬に口付け、枢木は「今まで付き合ってきた人たちの中で、君が一番綺麗だ」と囁いた。
ぽん、ぽんと電マで手を叩きながら言う。
「最近、君、僕のことナメてるからさ、少し痛い目見せてやろうと思って。なのにホントに凄いよ、一緒にいると全く退屈しない」
 さっきも蹴っ飛ばそうとするし、などと物騒な一言を発し、枢木は電マのスイッチをオンにした。ローターとは比較にならない振動音が部屋中に響き渡り、その音に驚くルルーシュを枢木は面白そうに眺め、スイッチを付けたり切ったりしながら言う。
「コレね、今回一番のプレゼント。もしかしたら中毒になっちゃうかも」
 そうなってしまってもいいか、という口ぶりで、枢木は袋から取り出したものを電マの先端に被せた。『コレ』と枢木が言ったものは、専用のアタッチメントだ。前に枢木とコンテナの中にいた時、開いたまま置かれていた通販雑誌に載っていたのをルルーシュは見た。心密かに思ったものだ、『どれだけ気持ちがいいのだろう?』と。けれど、電マと専用アタッチメントはルルーシュの期待や想像など、はるかに超えてしまうほど強烈な刺激を齎した。
「ああっ――ンッ! あッ、アーーッ!」
 股間に宛がわれ、一分も経たないうちに悲鳴が上がる。
「逃げるなよルルーシュ、言っただろ? お仕置きだって」
 海老反りになってビクンビクンと痙攣し、ルルーシュはあっという間に昇天した。一度目の絶頂を迎え、簡単には終わらない地獄が始まる。
 ルルーシュは嫌々と首を振り、雁字搦めに拘束された四肢を突っ張らせた。電マの振動は弱に設定されており、強くされるかどうかは枢木の気分次第だ。快感も過ぎれば苦痛となる。ナカイキに慣らされた身体は、クリトリスだけの刺激ではイき過ぎてしまうのだ。腕の枷から両足へ伸びた縄はたわみこそすれ、千切れることはない。コルセットと一体化した両腕も、ルルーシュが力むたびに金具がギンと張り詰めるだけだ。
「気が済むまでイっていいよ、その後に映画へ行こう? アタッチメントはもう一つあるから」
 枢木は袋に突っ込んだ片腕を振り、袋を振り落して別のアタッチメントを取り出した。松ぼっくりか縦長のタワシにそっくりな、凸凹の付いた先端。そこから伸びるものは、細身のバイブによく似ている。ルルーシュはシーツを噛みしめて、叫ぶのを堪えていた。けれど、鼻にかかった嬌声が引きも切らず漏れ出てくる。
「んん、んぁ、アァッ……、くっ……!」
 動物めいた呻きと、涙混じりの喘ぎ。そこに電マの音が重なり、いくら堪えようとしても強制的に絶頂へ導かれる。シーツを噛む唇は離れてしまった。噛み続けていられない、叫びでもしない限り。
 閉じられない両足の間で、枢木は電マを押し当て続けた。絶頂寸前の快楽がせり上がり、急激に達する。波が引かないうちに、またすぐ次の絶頂がやって来るのだ。十回ほど連続でアクメを迎え、体力のないルルーシュはへとへとになった。アソコがじんじんと疼いていて、ぐっしょりと濡れた陰唇がショーツの穴でヒクついている。クリトリスにアタッチメントの先が掠るだけで、全身に鋭い電流が駆け抜けていった。
「や、もう、さわるな。もうやだ!」
 声を引きつらせ、ルルーシュは必死で訴えた。喘鳴と、イった直後特有の激しい動悸が鳴りやまない。苦し紛れの訴えを聞き付け、枢木は一旦スイッチを止めてやった。
「うーん、いいイきっぷり。でもやっぱりイきすぎちゃうね、もうちょっとペース落とした方がいいかな」
 ルルーシュを観察しているうちに、枢木は興奮してきたらしい。前立てをギンギンに張り詰めて、呼吸も若干、荒くなっている。
 発狂しそうになるほどイかされるなんて、ルルーシュはAVの中だけの話だと思っていた。なのに、電マを使えば出来てしまう。責めが止まって安心しているうちに、枢木がアタッチメントを交換していてゾッと血の気が下がった。
「やめ……っ!」
「何言ってるの。まだ十分も経ってないよ?」
「……!?」
 ルルーシュは上体をよじり、弾かれたように背後の時計に目を向けた。
「余所見しない。君が見たって、何時からだったのか解らないだろ?」
 言われてみれば、その通りだ。ルルーシュは渋々、ベッドのデジタル時計から視線を外した。向き直ると枢木は、既にアタッチメントを交換し終えている。
「ルルーシュはドエムだけど、苦しいのより気持ちいい方がいいんだもんな。なぁにコレ、グッショグショにアソコ濡らして」
「あっ……!」
 ぐいっと片腿を引っ張られ、足の付け根から開かされると、ショーツの穴からびしょ濡れになったピンク色の女性器が覗く。枢木はそこにズボズボと指を出し入れし、しとどに濡れそぼった陰唇に躊躇なく口づけた。垂れた愛液を、果実の汁を啜るかのごとく舐め取り、未だ痙攣し続けるクリトリスに唇をぴったりとくっ付ける。膨れ上がった粒を舌先で押し潰しながら、枢木は幾度もしつこく舐めこすった。
「んんふっ……ふあっ、あぁ。あぁ……っ!」
 ずぶずぶと入り込んできた指が、ルルーシュにとっては酷く熱く感じる。かと思えば、入れ替わってひんやりと冷たい感触のものが突然入り込んできた。
「ふ――っ!」
 尖った先端がGスポットに直撃し、最奥に到達すると、緩いカーブがポルチオを刺激する。バイブになっている所はかなり細く、柔らかくてぴったり嵌まるとまではいかない。が、侵入してきたアタッチメントは、ピンポイントで性感帯を狙う作りになっていた。ぐっと押し入ってきて、分厚く長いタワシのような部分が丁度よくクリトリスにフィットする。振動し始めると同時に、再びルルーシュの下肢から腰の内側へと、重くじっとりした快楽が立ち上ってきた。
「あああっ……!」
 と、ルルーシュが歓喜の声を上げる。先ほどの苦痛混じりの叫びとは違い、語尾にハートマークが付いていそうな甘い喘ぎだ。
「ルルーシュはやっぱり、中が大好きなんだ。気持ちいい?」
「あ、ああ、イイ……」
「そう、じゃあこれからは、ちゃんと言うこと聞く?」
「は――はい……」
 ビクビクと乳房を震わせて、ルルーシュが蕩けそうな笑みを浮かべる。全身が性器と化したかのような、素晴らしい悦楽がルルーシュの内部を満たした。
「こっちのアタッチメントならちょうどいいだろ。中と外でたっぷりイって、また露出をするよ。いいね?」
 ルルーシュは恍惚とし、言われるままこくこくと頷いた。電マの振動はローターやバイブのものに程近く、外側から内側へと振動が伝わるたびに、熟し切った内側から蝕まれていく。枢木は、挿入したままの電マを縄の余った部分で縛り上げ、深く刺さった状態にして固定した。開脚されている足を更にピンと開き、ルルーシュはM字どころか大股開きになっている。
「身体柔らかいよね」
 快楽に従順なその態勢を、枢木は褒めてやった。ジーンズのチャックを下ろし、下着も脱いで先走りの漏れたペニスを取り出す。限界まで勃起したそれをこすりながら、ベッドヘッドに置かれたローションの袋を手に取った。開封し、掌いっぱいに絞り出す。
「お尻使うよ」
 と、温めたローションをルルーシュのアナルに塗り付け、伸ばした中指をツプリと挿入する。
「あ――っ」
 ルルーシュはふわ、と口を半開きにし、ぺろりと唇を舐めた。
「おしり……」
「ん?」
「きもち、い――」
「うん、これからもっと良くなるよ」
 可愛いね、と心底からルルーシュを褒めちぎり、枢木は自分の勃起にもローションを塗り込めた。ベッドに上がってルルーシュの尻の下に枕を敷き、膝を折り曲げて足の間に座り込む。合間に指を二本に増やし、軽く慣らしてから、張り詰めたペニスをアナルに添えてずぶずぶと挿入した。
「あ。い、いいッ……」
「入ってくる?」
「うん……」
 ルルーシュは僅かに尻を持ち上げ、枢木は電マが抜けないよう押さえつつ、根本までペニスを埋め込んだ。プシッ! と音を立て、勢いよくルルーシュが潮を吹く。三点を同時に刺激され、挿れられただけで軽くイったようだ。
「今イっただろ」
「あ……っ。はぃ、はいって――」
「ホントにやらしいなぁ。中、トロットロ」
 動くよ、と囁き、枢木はルルーシュのアナルを好きなように使った。電マも支えるだけでなく細かく抽挿させ、何度も何度もルルーシュをイかせる。先ほどのように強烈な刺激ではないぶん、ルルーシュはだらしなく表情を弛ませて、愉悦に満ちた時を過ごした。
 たっぷりと種付けをし、枢木がアナルプラグで栓をする。枢木の望み通り、ルルーシュは『感じるだけのオブジェ』と化した。パープルとグリーンのジュエリーで光る銀のプラグは、三時間もの間イき続けるルルーシュの尻の穴に飾られ、ずっとキラキラと輝きを放っていた。


 電マ依存症になってしまうのも無理はない、とルルーシュは思う。縄だけを外され、全身ボンテージで拘束されたまま、ルルーシュは枢木に引き連れられて映画館へ向かった。震え続けるローターを膣に埋め込み、精液を注がれた尻にもアナルプラグを刺したままでだ。
 枢木は、途中途中でルルーシュのコートをめくり、クリトリスをマッサージしてやった。性感が落ちることのないよう、ローターを引っ張り出してこまめにイかせる。電マと専用アタッチメントでオブジェと化し、抜き去った後は中の刺激が足りなくて、ルルーシュはずっとヴァギナを疼かせていた。今日こそ――本当に今日こそ、枢木のペニスを収めて欲しい。もっと太いもので貫かれたい。どころか、膣の中にたっぷりと射精して欲しくてたまらなかった。枢木の、太いペニスでイかされたい。今日ならきっと痛くはない気がする。
 強い衝動に突き動かされ、ルルーシュはホテルで命じられた通り、指示されればどこででも露出をした。デパートの前で、恋人同士みたいに寄り添ってコートをめくる。弾ける乳房に通行人の視線が集中し、五秒待ってから二人でエントランスに駆け込んだ。エレベーターでショーツの穴を引っ張り、自分でアソコを広げて枢木に見てもらう。ガードマンも行き来する中で二、三回上り下りし、コートの裾をたくし上げたまま、ルルーシュは枢木の指を借り、ぎゅうぎゅう詰めのエレベーターの中で一回イった。
 トイレに寄り、アナルプラグを抜いてレストランで食事をし、デパートを出る。そこから先、二百メートルほど歩いたところに映画館があった。
 コートの前から手を差し入れ、歩きがてら、枢木が乳房の感触を楽しむ。腰を抱えられ、ルルーシュはドキドキしながら映画館に入っていった。
 館内は薄暗く、ポルノ劇場特有の饐えた匂いに満ちている。昭和の名残が感じられる見出しが其処ここに貼り出され、全然、関係ない歌舞伎や演歌歌手のポスターも掲示板に貼ってあった。
 チケットを購入し、枢木はトイレを探して一人で入っていった。しばらくし、出てきたところでルルーシュを物陰に引っ張り込み、コートを開かせて自分は屈んだ。ショーツの穴から垂れてきた愛液を指先ですくう。そして、ローターをルルーシュのクリトリスにこすり付けた。イきそうになったところを見計らい、枢木はクンニに切り替えた。
「んっ、ふっ。うん……っ」
 甘い声をまき散らすルルーシュを見上げ、「しっ」と口に人差し指を当てる。
「バレちゃうよ?」
 ルルーシュが黙るとクンニを再開し、枢木はイくまで舐り続けた。ルルーシュがか細い吐息を漏らし、達すると枢木が濡れた顎を拭っている。ポケットから小さく巻き付けたガムテープを取り出し、ローターをルルーシュのクリトリスに張り付けて、ダイヤルを回した。振動は一番弱くしておく。それをコートで隠した枢木にルルーシュは手を引かれ、上映場所に向かう途中でブザーが鳴った。
 ドアを開けるとCMが流れ始めていて、色の褪せたシートに並んで二人は腰かけた。前列に二名、中ほどに三名。まばらに座っている、その後ろに一人。ルルーシュ達を入れても、客は総勢八名しかいない。男女で座っているのは前列の二名のみ。あとは、全員男だった。ルルーシュは股を疼かせ、もじもじと太腿をこすり合わせた。枢木が、その様子を隣でちらりと窺う。
「落ち着きないね、どうしたの?」
 わざとらしい、とルルーシュは腹立たしくなった。ローターが貼り付けられたまま、さして内容のないポルノを見せられているのだ。黙って座っていられる筈がない。
 前の列に座っている男が一人、喋り声に気付いて振り返ってきた。ルルーシュの美貌に目を瞠り、枢木に嫉妬の眼差しを送る。枢木は素知らぬ顔で、ルルーシュのコートをばさりと開いた。前に向きかけていた男が驚き、にやにやと笑う。
 ルルーシュは抵抗しなかった。ポルノはつまらないし、アソコが疼いて仕方がない。好奇の視線に晒され、しかも嗾けているのは枢木だ。煽られるばかりでは面白くないと、ルルーシュは露出に対する抵抗感を失いかけていた。というより、持ち前の負けず嫌いが顔を出す。羞恥心は凄まじいものがあるが、ここは密室。この美貌に目を留めたというのなら、どうせならもっと良いものを見せてやる、とだんだん乗り気になってきた。
「見せてあげなよ。映画より面白いよ?」
 枢木が、貼り付けたローターでクリトリスを押しつぶす。ずっと微弱な振動を与えられていたルルーシュは、たちどころに絶頂まで上り詰めた。
「ンッ――!」
 鋭い快感に支配され、つい声が漏れる。枢木は黒皮のベルトで拘束されたルルーシュの身体を舐めるように見つめ、満足そうに前列の男を見遣った。――その客は一部始終を、しっかりと網膜に焼き付けたようだ。
 他の観客も、ずっと後ろを向いている男が何を見ているのか悟ったようだった。あちらこちらから、ちらほらと視線が飛んでくる。ルルーシュは枢木に流し目を送り、前で張り詰めているものをジーンズ越しにそっと触った。少し驚いたのか、枢木が両眉を跳ね上げる。日頃のルルーシュらしからぬ、積極的な行動だと思ったのだ。
「ねえルルーシュ、これから先も、ずっと処女でいたい?」
「…………」
 ルルーシュは答えず、枢木のジーンズから手を引っ込めた。急に恥ずかしくなったのだ、もっと恥ずかしい恰好をしているというのに。
 枢木はルルーシュのショーツに手を伸ばし、両サイドのチャックを片方だけ下ろした。前開きにめくり、ルルーシュに腰を上げさせて手前に引っ張り、折り畳んだショーツをポケットに仕舞い込む。
「ちゃんと言うこと聞けるようになったよね。ご褒美いる?」
 言い方にムッとしたが、ルルーシュは目を逸らして頷いた。そっと股を開き、枢木を見上げる。
「な、何とかしろ……」
 頼りない声で囁く。枢木は冷たい笑みを浮かべ、ルルーシュの中にいきなり三本指を突っ込んだ。
「ヒッ――!」
「『ごめんなさい』」
「は……?」
「僕の彼女になるなら素直に従って? チンポ欲しいだろ?」
「――ッ!」
「嘘ついてても解るよ、処女のくせに淫乱なんだから。君、濡れすぎ」
 蔑む物言いに『誰のせいだ』とルルーシュはなじりたくなったものの、悔しいけれどその通りだった。シートがじっとりと濡れている。除けているコートは辛うじて無事だが、咥え込んでいる枢木の指ごとびしょ濡れだった。
「くそ……っ」
 ルルーシュは唇を噛みしめ、涙を浮かべて腰をよじった。枢木の指はじんわりと馴染んでいき、鈍い痛みの代わりにうねるような快感が訪れる。
「あ――」
 切ないほどに、欲しい。
 ヒクリ、と陰唇が動いた。とうとう我慢し切れなくなり、ルルーシュは小さく「欲しい」と口火を切った。そして、ねだるように枢木の袖を引っ張る。
「も、もういいだろ……お前だって、俺のことは嫌いじゃないくせに」
 弱々しく言ってみると、枢木は意地悪な眼差しで「もちろん」と嗤った。
「じゃあ、腰浮かせて?」
 前の座席に手を付かせ、枢木はレストランに行く前に抜き去ったアナルプラグをポケットから探り出した。自分も席を立ち、ルルーシュの座席に移動する。流れ切っていなかった精液が、ルルーシュの尻穴をしっとりと濡らしていた。枢木は拭き取ることもせず、潤滑油代わりにしてプラグを差し込んでいく。
「あ――」
 そっちじゃない、と、ルルーシュの口から出てしまいそうだった。再び枢木は指を三本挿入し、ゆっくりと慣らしてから、ヴァギナの入口にペニスを押し付ける。
「三本も入るよ? 処女なのに」
「う、るさい……っ」
 枢木はクツクツと喉を鳴らし、笑いを堪えてズブリと亀頭を挿入させた。
「――ッ!」
 初体験が、映画館の中――。腹の上からポルチオをいじられ、ルルーシュは声を殺して枢木のペニスを受け入れた。片手間に、枢木がベルトに差し込んだダイヤルを強にする。ブーンと震えるローターの音が、画面から聞こえる台詞の合間に響いた。
 圧迫感と、裂けそうな痛み。それらがクリトリスから伝わる快感によって中和されていく。ルルーシュが両足を突っ張らせているうちに、枢木はずっぷりと根本まで埋め込んだ。
「うっ――」
 苦しくて、ルルーシュは呻いてしまう。どっしりとしたペニスの重量感と、焼け付きそうなほど高い熱は、今まで使われてきたローターやバイブとは全く異なっていた。枢木がパツン! と音を立て、腰を叩きつける。ルルーシュは頭の天辺まで駆け抜けていく快感に小さく叫び、唇を噛みしめて前の座席に縋り付いた。
(気持ちいい……)
 外側から子宮を押してくる枢木の手と、ちらちら見てくる他の観客達の目つき。何より、初めて感じるペニスから得る快楽が、ルルーシュを甘く痺れさせた。
 『処女なのに』――と、あてつけの如く繰り返す枢木の台詞が脳内で再生される。初めてペニスを受け入れたのに、もう感じてしまっている。その事実が、ルルーシュの理性をショートさせてしまった。尻でプラグを締め付けると、アソコが締まる。枢木のペニスはドクドクと脈打ち、炙られた杭のようだった。ルルーシュは座ることも出来ず、高々と尻を突き出したまま、背を反らして大きく足を開く。
「スザクって呼びな? ルルーシュ、君って最高」
「あっ……!」
「お尻にプラグ、まんこにもチンポハメられて、両方で感じられる処女なんていないよ?」
「いや。イく……っ。あぁ嫌。ン――ッ!」
 観客は今や、前列のカップル以外の全員がルルーシュに注目していた。ルルーシュが絶頂を迎えると、枢木に向けて野次が飛ぶ。ベルトに締め付けられ、わさわさと揺れる乳房が椅子の背にぶつかった。枢木は「サービスに」とルルーシュの胸を持ち上げ、座席の上に乗せてやった。
 シートに貼られたザラリとした布に、乳首がこすれる。瞬間、ルルーシュの腰に耐えがたい疼きが走った。
「ピル飲んでるよね?」
 はあはあと息を切らしながら、ルルーシュは頷いた。もともと生理が重く、数年前から低用量のピルを処方してもらっている。枢木はいつかルルーシュを貫く時のために、それを聞きつけた時に医者にかかるよう勧めたのだった。……そして、ルルーシュもまた。
(出してくれ、スザク)
 ルルーシュの腰を抱え、ベルトで引っ張りながら、枢木は本格的な律動を開始した。ルルーシュは胸を突き出し、皆に見てもらえるよう手で持ち上げる。コートはほとんど脱げかかり、あらわになった裸体はもう、ルルーシュのものであるのと同時に枢木のものなのだ。
 ぷっくりと立ち上がった乳首をこねくり回され、ルルーシュは憚りなく嬌声を漏らした。あまりの快感にプシッ、プシッと潮を吹く。きゅんきゅんと収縮する子宮を突き上げられ、外側からもポルチオを刺激され、ルルーシュは立て続けに二回ナカイキした。
「あぁ、これ好き。らいすき……!」
 呂律の回らない小声で口走り、自ら腰を揺らす。
「何が好きなのか言ってみてよ」
 背後で枢木が促し、ルルーシュの『大好き』な箇所を集中的に穿った。
「イくのすき。あっ。おちんちん、が……」
 とんでもない一言を、という葛藤が生まれ、ルルーシュの頬がうっすらと染まっていく。枢木はコートの裾をルルーシュに噛ませ、低い声で呟いた。
「夢だったんだよね、僕。処女なのにナカイキ出来るように育てるのって」
 深々とペニスで貫かれる歓びにルルーシュは目覚めた。ローターを外され、映画が終わってしまうまで、ルルーシュは枢木の玩具として望み通り、たっぷりと精液を中出しされ続けた。愛液にはうっすらと、ピンク色の汁が混じっている。でも、出血というほど大げさな量でもない。
 ルルーシュの処女膜は、処女好きの枢木に合わせたかの如く、どうやら無事のようだった。

11/12のツイートまとめ

toychest0308

@placebo_lab l・ω・´)ノ ハアイ★ ずっとお返事滞っててすまぬ。アルゼログッズ、もういろいろ出てるね。薄い本はまだ手を出していないけど、サンクスでのキャンペーンのブツはコンプリートしてしまった私だよ……。
11-12 15:19

@lelouch__suzaku ずっとお返事出来ていなくてすみません、夕希です。フォローどうも有難うございます。こちらこそどうぞよろしくお願いいたします!
11-12 15:17

@coqut l・ω・´),。o0(ズミチャン)
11-12 15:14

プロフ

夕希(ユキ)

Author:夕希(ユキ)
取扱:小説・イラスト・漫画

スザルル大好きサイトです。版権元とは全く関係ないです。初めましての方は「about」から。ツイッタ―やってます。日記作りました。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

感想・連絡等ありましたらばお気軽にどうぞ★ メルアド記入は任意です(返信不要の場合は文末に○入れて下さい)

Twitter

現在諸事情につき鍵付となっております。同士様大歓迎。

義援金募集

FC2「東北地方太平洋沖地震」義援金募集につきまして

月別

>>

ブロとも申請フォーム