オセロ 第11話(スザルル)

※性的な表現がありますので、今回は畳みます。
18歳以上の方のみ、下記のリンクからどうぞ。




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うーん(-ω- )

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ナイトオブゼロ服分からん…。
イラスト描きたいけど資料がありませぬ。
全身の細かい設定資料が欲しいです。

これからまたパソコンつけて小説書きます。
ほえー!(´Д`)

オセロ 第10話(スザルル)

10

 自分が笑われたと思ったのだろう。スザクは複雑そうに眉を顰めながら上半身を起こした。
 勿論、ルルーシュの手首を掴む手だけは離さずに。
「変な夢見たからって、変態呼ばわりするみたいな言い回し使うの止してくれないかな。それに、あまりこういう事言いたくないけど、君だって似た様な夢見たんだろ?」
 あれだけさらりと言い放っておいて、今更ばつの悪そうな顔をしなくても良さそうなものだが。
 幾ら空気を読まないスザクでも、さすがに嫌味が通じない訳では無かったらしい。
「言いたくないなら言わなければ良かっただろ。その話なら終わりだと、さっき言った筈だが?」
 ルルーシュはふん、と鼻を鳴らしながら口を返した。
 しっかり握られたままの手首へと目をやり、無言の抗議を続けてみる。こんな風に無理矢理暴かれるのが趣味ではない事くらい理解しているだろうに、つくづく強情な男だ。
「続いてるんだよ。君は嫌かもしれないけど。僕も話したんだから、君にも話してもらうよ。言っただろ? きちんと言うまで離さないって」
「ふ……それも込みなのか」
「嫌とは言わせない」
 一度言い出したら聞かない事は解っていたが、こと、対象が自分に設定されたとなると、これ程厄介な相手もいない。
 オレンジ事件の事を思い出し、ルルーシュはうっそりと自嘲した。
「スザク……。俺は、命令されるのは大嫌いなんだよ」
 お前と同じ様に、と続けようとしたがやめておく。
 この件に関しては、以前に一度失言しているからだ。
「これは命令じゃないよ。約束だ」
「成程? それはいい答えだ。……お前は、自分が干渉される事は拒むくせに、俺には干渉するんだな」
 手首を掴むスザクの手がビクリと痙攣した。
 明らかに動揺した瞳を真っ向から捉え、ルルーシュは今スザクが言われたら最も困るだろう事を敢えて口にする。
「心配も度が過ぎれば只の過保護だろ。夢の中でまで縛り付けておかなければ気が済まない程、お前が俺を案じている理由ってのは何なんだ?」
 納得のいく答えが返ってくるとは最初から思っていない。散々不意打ちを食らったのだ。返答次第ではこちらも対応を変えていかなければならないだろう。
 話してしまえば歯止めが効かなくなる程の、一体何を腹の底に仕舞っていたと言うのか。
 先程聞いた時は単に夢の内容に関する話だとばかり思っていたが、案外そうでもないらしい。
(お前が俺の何を知りたがっていたのか。口に出した以上は説明してもらうぞ、スザク)
 予め何通りかの打開策は用意してある。……その為に、わざわざ日頃から不真面目ぶりを強調していた様なものだ。
「……僕は、」
「言えないのか?」
 体勢的に見下ろされる形になっているからといって、そう易々と主導権まで握らせてやるつもりはない。逆にこちらが睥睨している位の心持ちで追い討ちをかける様に尋ねてやれば、言葉を詰まらせていたスザクの瞳がふっと翳った。
「………?」
「僕は――君には、僕と、同じになって欲しくないんだ」
 迷いながらスザクがおずおずと口にした台詞に、ルルーシュは柳眉を顰めた。
(同じになって欲しくない、だと? どういう意味だ)
 それは、たまに見かける表情だった。
 がらんどうで、底なしで、真っ黒な穴ぼこの様なスザクの瞳。
 頑なな無表情とも質の異なる、まるで能面の様な。
(何故そんな顔をする?)
 時折目にするスザクのその表情が、ルルーシュにはたまらなく不快に感じられた。
(お前は望んだ道を歩いている筈だろう。自分で納得して選んだ道を進んでいるんじゃないのか? 俺達とまた会えて嬉しいとお前は言っていたじゃないか。だったら、何故そんな顔をする?)
 今の世を憂えているからか。決してそれだけでは無いだろう。
 辛い事なら沢山あった筈だ。学園に転入してきてからだって、謂れ無き差別や偏見から、何度も嫌がらせを受けていた事も知っている。
 スザク自身が口で言う程、決して幸福なんかじゃない事も。
(だからこそ、俺はお前を守ろうと思ったんだぞ!)
 生徒会に入れるよう口添えした事だって、騎士団に勧誘した事だって、元はといえば全てその想いがあったからこそだ。
……それなのに。
「俺は、お前が思っている程脆弱でもなければ惰弱でも無い。俺とお前、例え能力の質は違っていても、俺は、お前とはあくまでも対等な関係でありたいと思っている。……はっきり言うが、俺はお前に監督されたり守られたりしなければならない程、無力な存在じゃない」
「…………」
 言い切った瞬間、スザクは放心した様に薄く唇を開いたまま、ぱたりと手首を離した。
 繋がれた糸がふっつりと途切れる瞬間を現実とも思えず眺めている様な、最後通牒を突きつけられた者の顔。
 少なくとも、ルルーシュにはそう見えた。
 今の俺をこいつは見ていない。深く関わる事を拒んでいる。本当は興味関心すら薄く、全くの他人よりは近しい程度の付き合いに留めておこうと考えている……そんな風にさえ、感じていたのに。
(思えば、こいつは昔からそうだったな)
 スザクに対して感じていた通り、心の内側で一線引かれていたのは事実だ。
 けれど、こちらの及びも付かない深さで想われていた事も、また事実なのだ。
『理由の無い善意は信用出来ない』
 嘗て、ルルーシュはその言葉を盾に、スザクから向けられた無償の好意と善意を頑なに拒んだ。
 それでも。
『理由が無ければ、守ってはいけないのか』――幼少の砌、スザクは確かにそう言ったのだ。
 そんなスザクだったからこそ、余計傍に置きたいと願った。
 例え、どんなに汚い手段を使っても。
 それなのに、今のスザクはこうして泣き言の一つも言わず、愚痴も零さず、ひたすらストイックに軍務という名の規律に身を捧げ、自分自身を誤魔化してまで、騙してまで、磨り減らしてまで、幸せだと言い張っていなければ生きていけないというのだろうか。
(お前は修道者にでもなったつもりか! それは欺瞞だ!)
 スザクの抱えている矛盾がはっきり見える。存在軽視も甚だしいスザクの傲慢に、再びルルーシュの中でどす黒い怒りが湧き上がった。
 自分は物では無い。そしてスザク自身も。
 望まれるまま、ただ大人しく守られるだけの存在になどなってやるものか。
(何の為に、今お前の傍に俺が居ると思っているんだ!?)
 何故軍に入ったのか。何故中から変えていきたいなどと無謀な事を考える様になったのか。
 そもそも、ここまで性格が激変した理由は何なのか。
(お前との間に感じる壁の正体。それは、お前自身にも解らない事なのか? スザク!)
 今のスザクを見ていると、どうもそんな風に思えてならない。
 時々表情が抜け落ちている理由も、やんわりと拒絶されている様に思える理由も、スザク自身には答えられない事なのだろうか。
 もっと解り合いたい。――そう、望んでは、いけないのだろうか。
「スザク」
「―――……」
 何を口にしたつもりなのだろう。声にもならない掠れた音を発したスザクは、僅かに上下するだけの唇を震わせながら抜け殻の様に座り込んでいる。
 ――七年前、たった一人きりで、戦火の中に置き去りにしてきてしまった子供の姿がそこにあった。
「お前は、どうして俺を頼らない?」
「……え?」
 スザクの言葉を待たず、ルルーシュは衝動の赴くまま口火を切った。
 平時ならば、想いをそのまま口に乗せるような事などしない。だが、元々激情家である以上、理性によってどんなに強力な枷を施してあったとしても、箍が外れる瞬間はある。
「離れて暮らしてきた間、お前に何があったのか俺は知らない。どんな風に暮らしてきたのか、何を思い、何を感じ、どんな苦しみを抱えて生きてきたのか。……辛い事なら山程あっただろう。苦しい事だって、悲しかった事だって! それなのに、何故お前は俺に何も話してくれない? 今だって、苦しんでいる事があるなら何故言わない? 何故だ!? 友人とは、本来そういうものだろう!」
「………!!」
 スザクの顔がくしゃりと歪んだ。
 打ちひしがれ、愕然としているのが解る。
 しかし、今ここで言っておかなければ、きっと何か取り返しのつかない失敗を犯してしまう。……失ってしまう。
(何を……?)
 解らない。
 けれど、ルルーシュは逸る心のまま躊躇せず言い募った。
「それとも、お前にとっては違うのか? 俺は……」
 まるで、たった一人きりでこの世に生きると決めてしまったかのように、いつも遠くばかり見ているのは何故なのか。
 傍にいるのに傍にいない。そんな風に、遠く感じてしまう理由は何なのか。
「俺は、お前の友達なんじゃなかったのか?」
 スザクがさっき自分でそう言ったのだ。『友達なのだから、聞く権利が無いとは言わせない』と。
「ルルーシュ……」
「……?」
「ごめん、ルルーシュ……ごめん」
 何かを恐れる様なか細い声で、スザクは何度も頭を振りながら同じ言葉を繰り返し始めた。
「そうじゃない……そうじゃないんだ。違う、そうじゃ……!」
「!?」
 スザクの様子が豹変した。混乱しているのだろうか。
「おい、何呆けてる!」
 スザクの瞳は焦点を失い、虚空を彷徨っている。
 眼前の何物をも映していないその瞳を見た瞬間、反射的に「駄目だ」と思った。
(くそ……! 尋常じゃない!!)
 ひきつけを起こした様に浅く荒く呼吸しながら、スザクは許しを希う様に見開いた眼に薄く涙の膜を張りつけながらガタガタと震えている。
「おい……!!」
 あの雨の日を思い出す。
 こうして我を忘れたスザクの姿は、ずっと昔にも見た事があった。
(失敗した!)
 これ以上立ち入れば、スザクを壊してしまう。
 スザクの恐慌は、嘗て部屋を滅茶苦茶に荒らしていた頃のナナリーの姿に通じるものがあった。
 まさかとは思うが、何らかの精神的外傷でもあるのだろうか。山と積まれた死体の間を通っても理性を保っていられた自分と違って、スザクは多分、もっとナイーブだ。
「あ……。ル、ルルー、シュ……」
「もういい、何も言うな! 俺が悪かった」
 肘をついて体を起こし、背中を摩りながら「無理して話さなくていい」と伝えてやれば、瘧の様にガクガク震えていたスザクは、暫くしてからようやく正気を取り戻した。
「大丈夫か?」
「…………っ、ルルーシュ!!」
 起き上がって尋ねた瞬間、縋る眼差しを向けてきたスザクにいきなりがばりと抱きすくめられ、ルルーシュは声を失った。
「なっ……!? ス、スザク!? おい!!」
「ルルーシュ、約束して」
「……!?」
「危ない事はしないで。お願い。お願いだから……」
「………………」
 まだ震えの止まらないスザクの背に手を置いたまま、「お願い」と必死で繰り返す声を呆然と聞いていた。
(一体何があったんだ……!)
 七年前、軍に保護という名の監視を受けていた頃から再会するまでの間に、スザクに何があったのか。
(情報が足りなさ過ぎる。こいつに関する情報が)
 日本で別れてから名を変えてすぐの頃、スザクは唯一の家族だった父を――当時の日本国首相だった枢木ゲンブをも亡くしている。
(確か自殺だった筈だが、その後、こいつはたった一人きりで……)
 傍目から見ても、決して円満な親子関係では無かった記憶がある。だが、それでも……孤立無援となったスザクのその後は、想像するに余りある程悲惨な境遇だったに違いない。
 自分にはナナリーという存在が居た。血肉を分けた、たった一人の兄妹が。
(肉親が居るか居ないか、それだけでも違う。だが、こいつには……!)
 たった一人きりで残されたスザクの孤独を思うと堪らなくなり、ルルーシュは背に回した腕に力を込めた。
 耳元で、怯えたスザクの声が響く。
「ルルーシュ、僕は……僕はね、守る為に、軍に居る。……もう、誰も喪いたくないんだ。誰一人」
「……………」
 違う、と思った。
(守る為だと言うのなら、お前は軍なんかに居るべきじゃないんだ!)
 何故解らないのか。そうは思えど、今のスザク相手にそれを言い出す事はどうしても出来なかった。
「既に作られたルールがあるなら、それに沿った形で、中から変えていきたい。そうするべきだ。でないと、また沢山の人が死ぬ事になる。……今の僕はね、人を死なせない為に、生きてるんだよ」
 ぎゅっと目を瞑ったルルーシュは心の中で叫んだ。
(なら、お前はどうなる……!)
 聞いていられない程、悲痛な台詞だった。
(これ程までに固い決意を覆す事が出来るのか、俺は!)
 言葉にして伝えられない事が、こんなにも歯痒く感じられるなんて。
 でも、いつか必ず解らせてやらなければならない。これ以上、スザクがあの非情な国に搾取され続けるなど到底耐えられるものではない。
「解って欲しい。君にだけは。……だから、」
「スザク」
 これ以上痛々しい言葉を紡がせたくなくて、ルルーシュは話を遮る様に名を呼んだ。
「もういい。言うな。俺だって同じだ」
「……?」
 肩に埋めていた顔を上げてきたスザクと目を合わせる。
(約束は出来ない。……そんな、もう既に破られている約束など!)
 不安そうに瞳を揺らすスザクを見つめながら、ルルーシュは少しでも安心させてやる為に手を握ってみる。
 驚いた様に膝の上で重ねられた手を見下ろしたスザクが、再び顔を上げてくるのを待ってから静かに話し出した。
「お前と再会してから、俺は、お前が昔と随分変わってしまった様に思えていた。そんなのはお前らしくないと、何度思ったかしれない。だが、根っこの部分は変わっていない。何も。……お前はスザクだ。俺の、大切な友達の。そう思えたからこそ、今もこうして付き合えている」
「…………」
「だがな、例え人の秘密を穿るのが下品な事であったとしても、対話出来ない関係は、そこで終わると俺は思う。人と人とが言葉も無く解り合うのは容易な事じゃない。ましてや、七年も離れていれば尚の事だ」
 スザクは声も無く俯いた。責められていると感じたのだろう。
「お前を責めてるんじゃない。寧ろ俺の非だ。あんな風に追い詰めるつもりは無かったんだ。……悪かった」
 儚げな笑みを口元に浮かべたスザクが、無言で首を振る。
「ルルーシュの所為じゃないよ」
 口でそう言いながらも、スザクが自分を責めているのだと伝わってくる。
(駄目だ。まだ通じていない)
 一体どう言ってやれば、スザクに通じるのだろうか。
 肝心な時に使い物にならない自分の頭に、心底憤りを覚える。……こういうのは、全くもって柄じゃない。
 スザクの手を握り締める自分の手に力を込めながら、いっそ祈りにも似た思いでルルーシュは語り続けた。
「なあスザク。俺は、お前と一緒に居るだけで、時を忘れる程楽しい。例えお前の全てを知らなかったとしても、二人で笑い合っている時の気持ちは本物だと、それだけは信じられる。俺も同じなんだよスザク。お前と……」
「……?」
 頭に疑問符を張り付かせているスザクに、言い辛い思いを押して更に言葉を重ねてみる。
「俺だって不安なんだ。解ってくれ」
「……………」
 ただそれだけだと呟いたルルーシュを、スザクはしんとした眼差しで見つめていた。
 そっと目を閉じ、握り込んだ手の上からもう片方の手を重ね、口元へと運んでいく。
 尊いものに触れる様な、恭しい仕草。……指先に、温かな唇の感触がした。
「ありがとう」
 羽が触れたのかと思う程軽く、柔らかな口付け。
 話すスザクの吐息が、緩く握り締められた手の甲に掛かる。
「ごめんね、ルルーシュ」
 絡めた手に頬を寄せながら、スザクは泣き笑いの様な顔で寂しげに笑った。


悪あがき

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小説に詰まっているのでお絵描き。
1日1更新破られるのがなんか嫌で…ww

ゼロレクもの書きたくてたまらんのです。
皇帝なる直前くらいの頃のちょう切ないやつ。

皇帝なってからはこういう顔でばっか笑ってるイメージなんだけど、なんかゼロレク3日前くらいまではホントに死ぬのかなこの人?みたいなテンションで明るかったイメージしかない。
それも、まんざら演技で明るかったんでもなく、みたいな。
その辺りのルルーシュとスザクをがっつり書いてみたい…。

書きたいネタいっぱいありすぎて手が追い付かないよー!

引き続き

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らくがきかきかき。

絡み絵はバランスが難しいです(´Д`;)
特に顔…。表情込みで。
下絵なので服着てません。多分直す!
気が向いたらカラーでうpするかもです。

…とりあえず眠いのでもうねますー。
火着いた煙草くわえたまま意識飛んでた危険!

櫻井さんと、じゅんじゅん出てきたらバッチリ目が覚めました。
助かった…(´Д`)

……きゅん!^^

久々お絵描き。

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携帯からでーす。
サムネイル化しちゃうかも…(´Д`)

素敵サイトさん見てたらたぎっちゃって眠れないので、らくがきかきかきしてます。
ルルーシュのが描きやすいです。
スザクさんは難しいよー(・ω・;)

BGMにアニマックス流してます。
戦場のヴァルキュリアやってる。
櫻井さんもじゅんじゅんも出てる早く声聞きたい♪

オセロ 第9話(スザルル)




「……………」
 もういいと思った。冗談にしてもやりすぎだ。ここまで来るとさすがに不愉快だった。
(馬鹿馬鹿しい。何を言ってるんだこいつは!)
 幾ら気心の知れた仲とはいえ、悪趣味にも程がある。
 だが、そう思ってからすぐに考え直した。
(いや……。気心など、実はほんの欠片程も知れていないのかもしれないがな。今の俺達は)
 昔と今とを混同する気は無い。互いに食い違った道を進んでいる現状では仕方の無い事だと解ってもいる。だが、悔いるつもりなど毛頭無くとも、こう隠し事ばかり多いとさすがに嫌気が差してくる。
(意外と疲れるものだ。無駄に距離ばかり取り合うというのは)
 この関係の不自然さに気付く度、いつも同じループの中に嵌まり込む。取り留めなく続く思考を打ち消す為に、ルルーシュは深く嘆息した。
「さあな。お前の夢だろう。俺は知らん。聞く気も話す気も失せた。もう寝るから、お前も大人しく寝ろ」
「ルルーシュ、」
「寝ろって言ってるだろ。俺を本気で怒らせる気か? スザク」
 有無を言わさぬ命令調で吐き捨てるなり布団に潜り込み、さっさと寝る体勢を整える。これ以上ふざけた話に付き合うつもりは無かった。
 すると――。
「君はね、夢の中で、裸で縛られて寝かされてたんだよ。僕の目の前で」
 スザクがぽつりと呟いた。
「勿論、目隠しもした状態で、だ」
「……!?」
 静かな声が耳朶を打つ。幻聴と勘違いしかけたが、どうやら違う様だ。
(何を考えてるんだ、こいつは!!)
 続いて襲ってきたのは計り知れない程の衝撃だった。全身の血液が逆流する様な羞恥と共に、自分でも理解出来ない程の混乱が込み上げ頭が割れそうになる。
(幾ら何でも行き過ぎてるだろう! この馬鹿が!!)
 ルルーシュは不快も露に顔を顰めた。俄かには信じがたいスザクの発言に、全身がわなわなと震え出す。
「驚いた? 僕もすごく、驚いたよ。……正直、今日は君の顔見れないかもなー、って思った位にね」
 スザクは「まさかあんな夢見るなんてね」などと呟きながら、あれほど話すのを拒んでいた事など嘘だったかの様に恥じらいも無く言葉を続けてくる。
(それはこっちの台詞だ!!)
 腹の括り方が最悪だ。間違った方向に潔いのは認めるが、遮っていると気付かなかった訳でもないだろう。
 だったら大人しく黙れというのだ。
「そうか。そんな夢を見るとは災難だったな、俺もお前も。……だが、幾らお前でも、夢と現実の区別くらい付くだろう? 今のは聞かなかった事にしておいてやる。頼むからもう寝てくれ。お前がそんな馬鹿げた夢を見たのも、きっと疲れている所為だ」
 平坦な調子で一方的に言い切り、ルルーシュはきつく目を閉じた。
 とてもではないが、まともに取り合ってなどいられない。
(最悪のルート確定だな)
 まさか旧知の友人が変態の道に一歩踏み出しかけていたとは。予想の域を遥かに上回るショッキングな内容だったが、その夢に比べれば自分の見た夢など可愛いものだ。
「おい。さっさと布団に入れよスザク。寝ないのか?」
 姿勢を変えぬまま見下ろしてくるスザクの視線は、布団越しでも見られていると解る程あからさまだった。
 過敏になった神経に障る様で今は正直煩わしいが、無視してこのまま寝入ってしまおうと考えたその時、予告も無くバサリと布団を剥ぎ取られる。
「なっ……! 何をするんだお前は!!」
 肌に触れる外気に驚き、ルルーシュは跳ね起きた。せっかく温まりかけていた布団が奪い取られた事を知り、スザクの手から毟り取ると同時に語気も荒々しく怒鳴りつける。
 無遠慮も甚だしいスザクの振る舞いに、今度こそ本気で切れそうだった。
「まだ話は終わってないよ。それに、君の話も聞いてない」
「話!? そんなもの、もう終わりに決まってるだろ!」
「約束したろ。破る気か?」
「約束なんかした覚えは無い! お前が勝手に言い出した事だろう!」
「いいや、したよ! 君は『だったら先に話せ』と言ったじゃないか。了解してないなら言わないだろ、そんな事!」
 ムキになったスザクが眉根を寄せて凄んで来る。
(意味が解らない……!)
 本格的にスザクがおかしい。心なしか口調まで変わっている気がする。
「どうしたんだ、お前……。まさか本当にイカれたのか?」
 弱り切って尋ねてみれば、スザクはいからせた肩を無言で落とした。
「残念ながら正気だよ」
 真顔で訴えてくるものの、ルルーシュから見れば、それは酔っ払いが酔っ払っていないと主張しているのと大差ない。
「いいかスザク。一度しか言わないぞ。……俺は、その手の冗談が、大嫌いだ」
 わざと一言一句区切りながら伝えてやれば、スザクは心底心外そうに瞳を見開き、再び肩をいからせる。
「冗談で言ってるんじゃないよ!」
「お前は……っ!!」
 あれの一体どこが冗談じゃないというのか。
 聞き分けの無いスザクの態度に、ルルーシュはとうとう逆上した。
「いい加減にしろ!! 今のお前の態度は明らかにおかしいだろ! 自覚が無いだけで、それは疲れてるって事なんだよ!」
 もういっその事、全てそれで済ませてしまいたいくらいだ。
 込み上げる怒りに任せて握り締めていた布団を投げ付けてみたものの、スザクは避けるどころか微動だにしない。
 ばさりと乾いた音を立てて胸元に叩き付けられた布団が、立てられたスザクの片膝の上にずるりと落ち掛かかった。
「……………」
 嘗て無い剣幕で切れたルルーシュの一連の動作を、スザクは無言で見つめている。
 冷えた眼差しに貫かれ、一瞬だけ我に返った。再会して以来表立った対立などしていないが、スザク相手にここまで本気で腹を立てたのは初めてだ。
「じゃあ聞くよ。君、いつも夜中まで、どこで何してるの?」
「―――!!」
 切り付ける口調で言い放たれたスザクの台詞に、一瞬時が止まった。
「何……?」
 頭の中が真っ白になる。……今こいつは、何と言った?
「さっき、君がキッチンに行ってる時にナナリーから聞いたんだ。最近、君が夜遅くまで帰ってこない事が増えたって。学校もサボってる事、たまにあるよね? いつもそんな遅くまで、どこに行ってるの?」
 止まった息を吸い込むと、ひくりと震えた喉がひゅっと音を立てた。
「俺のプライベートだ。お前には関係ないだろう。それとも、逐一報告する義務でもあるって言うのか?」
 語尾が震えないよう、何とか平静を保ちつつスザクに語りかける。
(この状況だ。訝しがられる事は無い!)
 常に冷静なもう一人の自分が、頭のどこかで囁いた。ただスザクの様子に驚いているだけ。そう見えている筈だ。この反応におかしな点は無いと即時に計算する。
「関係ない?」
 すっと細められたスザクの目が、突如剣呑な光を宿した。
 気圧されたとは思いたくないが、あまりの迫力に体が竦む。
「関係ならあるよ。だって僕は君の友達だ。……そうだろ? 聞く権利が無いとは言わせない」
 膝の上で撓んでいた布団の裾を掴んだスザクは、こちらに向けた視線を逸らさぬまま無造作にそれを脇へと払い除ける。
「な、何を……!」
 ずいと体を寄せてきたスザクに圧され、反射的に後ずさった。ヘッドボードに背がぶつかると同時に、軋んだスプリングがギシリと嫌な音を立てる。
「隠しても無駄だよルルーシュ。いつも寝てない理由とも、関係あるんだろ? どこに出かけてるの?」
 ひやりと冷たい木の感触。後退する先を探るように背後へ回した掌はあっけなく行き場を失い、ゆるくカーブのかかった平らな面へと押し当てられた。
「聞かせてよ」
 押し付けられた背の脇にスザクの両腕が伸びる。片方は右腕の肘裏近くに、もう片方の腕は左耳の――丁度、顔の真横に。
「……っ!」
 動きを封じる様に両側から挟み込まれ、ルルーシュは本能的に恐怖した。
 さっきよりずっと距離が近い。……逃げられない。
「だから……ッ! 近寄りすぎだ!」
 一体何のつもりなのか。憤りながら体を捩り、顔の真横に伸ばされたスザクの腕に手をかける。
 勢い良く振り解こうとしたその瞬間、さっと手を引いたスザクに荒っぽく手首を掴まれた。
「何をする! 離せ馬鹿ッ!!」
「言ってよルルーシュ。どうして隠すの?」
「別に俺は……!」
「言い訳はいいから、ホントの事言って!」
 搾り出された叫びが部屋の空気を劈いた。驚きに目を瞠るルルーシュの眼前で、痛みを堪える様なスザクの瞳が悲しげに歪んでいく。
(どうしてそこまで知りたがる!?)
 再会してから向こう、スザクの身辺に関してあれこれ詮索した覚えは無い。常に一歩引いた態度で接してくるスザク相手に、安易に踏み込む事を躊躇し続けていた所為だ。
(それなのに、お前は今更……!)
 拒んでいたのはスザクの方だ。こちらの遠慮も知らず、戸惑いも知らず、例え仮面越しであっても、こちらから伸ばした手でさえ振り払ったのは。
「勝手なんだよ、お前は……!」
 縋る様な眼差しでこちらを見るスザクを、ルルーシュはあらん限りの気迫を込めてキッと睨み返した。
 全身が急激に熱くなり、みるみるうちに頭に血が登っていく。
「隠してたのはお前だろ! 気になってたなら何故言わなかった!」
 散々溜め込み続けた鬱憤が一気に爆発した。こうして問い詰められた苛立ちなど、言うなれば只の切欠に過ぎない。
 部屋に来てからも、スザクの様子は普通だった。だが夕食中に聞いたというのであれば、いつこの件に関して切り出そうかと気にしていたに違いない。
(演技してたのか今まで! こいつは!)
 たったそれだけの事で、ここまで腹が立つとは思わなかった。自分もスザクに対して同じ事をしていると解っていても、騙されていた様に思えて癪に障る。
 単に忘れていただけかも知れないし、疑いなど特に抱かず、ただ気にしない様に振舞っていただけなのかも知れない。
 しかし、そう考えると辻褄の合わない部分が出てきてしまう。
(それ程重く受け止めていなければ、こいつならもっと早い段階で訊いて来る)
 スザクの性格なら恐らくそうするだろう。大して気にかけていない事だったとしたら、後になってからこんなにも極端なやり方で問い詰めてくる筈が無い。
 ナナリーから聞いた事をそれなりに重く受け止めたからこそ、今の今まで黙っていたのだ。腹の底で何を考えていたのか悟らせず、平然と、おくびにも出さずに。
「言うつもりは、無かったよ。さっきも言っただろ? 今日は別々に寝るつもりだったって」
「だったら何故、」
「こうして近付いてしまえば、君と話してしまえば、歯止めが効かなくなるって解ってたから。……それに、君も気にしてたみたいだし」
「何をだ」
「昼間、僕の態度が変だった理由だよ。聞きたかったんだろ? 見てれば判るよ」
 スザクが皆まで言い終えるのを待たず、ルルーシュは力無く首を振った。
(こいつは……。解っている様でいて、やはり何も解っていないんだな)
 確かに、夢の話は糸口に成り得たかも知れない。
 しかし、スザクの口から聞きたかった事は、決してそれだけではないのだ。
「言いたい事は、それで全部か?」
 表情の消えたルルーシュを訝しみながらも、スザクは意を決する様に顎を引いてから再び話し始める。
「僕はね、ただ君の事が心配なだけなんだ。普段租界に居る君は知らないかもしれないけど、まだ途上エリアでしかないここでは、未だにテロが続いている。本当は、君が思ってる以上に物騒なんだよ?」
「そんな事は知っている! お前に言われなくても!」
 幼子を諭す様なスザクの口調に、突如反感が湧き上がった。
(俺が知らない訳ないだろ!)
 そもそも、そのテロの首謀者として既に関わっているというのに、このエリア内の悲惨な状況を知らない訳が無い。
(だが、それはまだスザクには言えない……!)
 スザクの口から直接聞きたい事も、こちらから打ち明けたい事も、本当は沢山ある。しかし、その全てが言えない事なのだ。
(お前さえ望んでくれるなら、それを受け入れてくれるなら、今すぐにでも打ち明けられるのに!)
 隠している事を言えずにいるのは、一体誰の所為だと思っているのか。本当の事を言えと要求しておきながら、互いの本質に関わる対話を避け続けているのはスザクの方だ。
 今が夜中だという事も忘れ、ルルーシュは混沌とした感情のまま激昂した。
「知ってるだけだろ! 君は何も解ってないよ!」
 恫喝に怯む様子も見せず、スザクも即、怒鳴り返してくる。
「いい加減に頭を冷やせ!」
「頭を冷やすべきなのは君だろ! 何怒ってるんだ!?」
「怒るのは当たり前だろ! いい加減この手を離せ!!」
 激した口調で言い返すごとに、スザクの手に力が込められていく。掴まれたままの手首に鈍い痛みが走った。
「っ痛……! 離せと言ってるだろ! この、馬鹿力がッ!!」
 空いたもう片方の手でスザクの胸を叩いて突き放そうとしてみるが、抑え付けてくるスザクの強靭な腕はびくりともしない。
 階下にいるナナリーの事を思い出し、ルルーシュは慌てて声を潜めた。渾身の力を込めて振り解こうとした途端、拘束されたままの手首を前に引かれ、元居た場所とは逆の方向に引き倒される。
「やめろ……ッ! 退けスザク!」
「退けないよ。君が正直に言うまではね」
「一体何の権利があってこんな事……!」
 言いかけた瞬間、上から圧し掛かってきたスザクが大きく息を吸い込んだ。
「じゃあ君は! いつも夜遅くまで何やってるんだ!!」
 空気が震える程の怒号が響いた。
 頬を引き攣らせたルルーシュは、激怒するスザクに只々圧倒され、剥き出しにされた激しさと獰猛さに息を飲む。
「正直に言えたら離してやる!! だから言うんだ、ルルーシュ!」
「もうよせスザク! でかい声を出すな! ナナリーが起きたらどうする!」
「………っ!」
 興奮しすぎだと気付いたのだろう。はっと目を見開いたスザクが口を噤んだ。
「俺に向かって命令する気か! お前は……!」
 手加減無しに握り込まれた手首は、明日にはきっと痣になっている事だろう。
 妙に醒めた思考の隅で、そんなどうでもいい事を考える。言うまでも無く、それは単なる現実逃避に過ぎない。
「違う……! どうして解らないんだ、君は!」
 詰る様に小声で叫びながら、スザクはもどかしげに瞳を揺らしていた。
 騎士団の件について気付かれるような行動をとった覚えは無いが、この段階で何かに勘付いているのだとしたらとんでもない嗅覚だ。
 ここまでしつこく突っ込んでくる位だ。かねがね疑問を抱かれていたのだろうか。
 隠匿された日常生活の裏に、何か秘密があるのではないのか、と。
(だとしても、ここまでやる必要は無いだろう)
 もっと冷静に話し合える筈だったのに、どこをどう間違えてこんな訳の解らない事になってしまったのか。
「もう一度訊くぞ、スザク。……お前は、気でも触れたのか?」
「そう見えるんだ?」
「当たり前だろ。違うというなら、今すぐその手を離せ」
「嫌だ」
 どうにも険悪な雰囲気だ。
 溜まりに溜まった鬱憤を吐き散らした自覚はあるが、膿を吐き出せばこうなる事は何となく読めていた。
(お話にならないな)
 これはきっと、今まで決定的な衝突を避け続けてきた反作用なのだろう。――だとしたら、こうやってぶつかっておくのも悪くは無い。
 早々に割り切ったルルーシュは、諦めた様に四肢を投げ出した。
「お前がまさか、俺に対してこんな荒っぽい真似を仕出かすなんてな。驚いたよ。一体何がしたいんだ? 手を離すのが嫌だと言うなら、せめてその理由だけでも説明してくれないか?」
 夢の中でまで縛り付けておこうとするなんてよっぽどだ。
 抵抗を止めたルルーシュを、スザクはやけに凪いだ瞳で見下ろしていた。
「僕はきっと、縛っておきたいんだろうね。君の事」
「ほう? それはそれは……随分熱烈な告白だな。では、何の為に?」
「君が、危ない事をしないように、だ。……だから、あんな変な夢を見る」
 今朝考えていた事を思い出し、ルルーシュはひっそりと笑った。
(こいつもか)
 煩悶する羽目になるのが自分だけではなかった事を、喜ぶべきなのだろうか。
 それとも、寧ろ憂えるべきなのだろうか。
「一応、変な夢だったという自覚はあるんだな。そいつは良かった。俺は危うく、お前のアブノーマルな性向について理解を求められているのかとばかり思ったんだが?」
「ふざけないで。真面目に聞いてよルルーシュ」
「ああ。俺も生憎、同性に屈折した執着を向けられて喜ぶ趣味は無いからな」
 不敵に笑って見せながら、ルルーシュは心の中で繰り返した。
 夢は、『見た者自身の深層心理の現れ』なのだという。
(……だとすれば、俺もスザクも、相当末期だ)


オセロ 第8話(スザルル)



(別に『言えない』とは言ってないが……交換条件だと!?)
 地雷どころの話ではない。スザクが持ちかけてきたのは明らかな取引だった。純粋だとばかり思っていたスザクの意外な策士ぶりに、ルルーシュは今度こそ解り易く固まった。
(お前……! それは天然なのか!?)
 只の白昼夢だと信じて疑わなかった昼間の悪夢がリプレイされていく。全て無意識でやっている事であって恐らく計算では無いのだろうが、何の悪意も無く只の思い付きであっさり条件を突き付けて来る辺りが末恐ろしい。
(目的の為に手段を選ばない様な奴だとは思わないが、こうも強引とは……)
 正直に話すか否か決めかねたルルーシュは、どぎまぎしながらスザクの肩にかかるよう布団をそっと引き上げた。
「ほら、ちゃんと布団かけないと風邪ひくぞ? もういいだろ。明日も早いんだ。そろそろ寝るぞ、スザク」
 両眉を八の字に下げ、ぎこちない笑みを浮かべる。
 何とかはぐらかしたい一心で布団の上からポンポンと肩を叩いてやれば、布団の裾を握るもう片方の手に向けられたスザクの胡乱な目が、再びルルーシュの両目をピタリと捉えた。
「まさかそれ、はぐらかしてる訳じゃないよね? ルルーシュ」
「………ッ! べ、別に、そういう訳では……」
 目敏く見抜いてくるスザクの鋭い指摘に、ルルーシュはへどもどと言い返した。凝視してくるスザクの眼差しには一点の曇りも無く、見れば見る程どこまでも真っ直ぐだ。とりあえず、この件に関して譲歩する気など皆無だという意思だけはハッキリと見て取れる。
(一体何の冗談だ! これは!!)
 布団の中しか逃げ場が無いなら、この際潜り込んでしまってもいい。とにかくスザクの視線から逃げたかった。
「嫌なの?」
「だか、だから、そうじゃなく! これは別に、お前の話を聞くのが嫌とかそういう意味じゃなくてだな……だからっ……その……!」
 一度話そうと思ったならそのまま話せばいいものを、何故一々交換条件など出してくるのか。
 既にカミカミなルルーシュが往生際悪く言い訳しようと言葉を紡ぎかけた瞬間、何かに気付いたようにスザクのくっきりした二重が大きく見開かれた。
「もしかして……」
「え?」
「ルルーシュも見た?」
「は?」
「だから、僕の夢」
「――――」
 その、異様なまでの勘の良さは何なのか。
 小動物に譬えれば子リスのように愛らしい作りをしたスザクの顔を唖然としながら見てみれば、息のかかりそうな至近距離から、細かな表情の変化も見逃すまいとばかりに一対の深緑が射抜いて来る。
(ここで見ていないと言うのは簡単だ! だが……!)
 これ以上シラを切り続ける事に、果たして意味があるのだろうか。あれだけ解りやすく拒絶したにも関わらず、全く臆せず、一度ならず二度までも突っ込んできたスザク相手に。
(それに、例え形はどうあれ、これはスザクの壁をブチ破るチャンスだ)
 夢にスザクが出てきたのは事実だが、どこまで話すかはあくまでも自由の筈だ。では、話してはまずい箇所だけ抜いて話せば嘘にならないのではないか。
 脳内でしつこく姦計を巡らせるルルーシュに気付いているのかいないのか、はにかんだ笑みを浮かべたスザクは話し続ける。
「あれ、違うかな……でも、まさかね? そんな夢見ちゃったのも、今日ここに来る約束してたからなのかなーなんて、思ったりしたんだけど」
「…………」
「ルルーシュ……?」
 無邪気ともいえるスザクの眼差しに屈し、とうとう目を逸らしてしまった。
(限界だ!!)
 出来れば誤魔化し切りたいが、そろそろ耐え切れない。必要とあればどうでもいい嘘の一つや二つくらい幾らでも並べられるのに、自分も話すからと直球で訴えられれば無碍には出来なかった。
「な、何だ……」
「どうして目、逸らすの?」
 逸らした視線を追うように、スザクがコトンと首を傾けて顔を覗き込んでくる。いっその事「こっち見るな!」と叫びたかったが、そもそも向かい合っている時点でそんな台詞を吐くのも変だ。
(それに、こいつが自分に関する打ち明け話をしてくる事自体珍しい)
 ルルーシュは悔しげに歯噛みした。実はも何も、本音を言えば聞きたいのだ。すごく。
 スザクに対する承認欲求が思った以上に高かった事に、ルルーシュは自分でも驚いた。下手に踏み込んでしまえば、もう二度と戻ってきてくれなくなるのではないか。何故かそんな恐れめいたものをずっと感じていた気がする。
「ルルーシュって、こういう時、嘘つくのヘタだよね」
 クスッと笑ったスザクが、悪戯っぽく目を細めた。
「はぁっ!?」
「……見たんだ?」
「だから、何がだ」
「うん。だからね? 君は急な事態に弱いって事。――見たんでしょ? ルルーシュも」
「……………」
 黙り込んだルルーシュをじっと見つめるスザクの口角が、我が意を得たりとばかりにゆっくり上がっていく。

「顔に出ちゃってる」
「――――ッ!!」

 えへ。と笑うスザクの顔が、果てしなくぬるい。
(えへ、じゃないだろ……!!)
 お前はもっと純粋な男だったんじゃなかったのか、その笑顔は何だ、等、あげつらえば数限り無く疑問が湧いて出る――が、万事休すだ。ここまで気付かれてしまったのであれば、もう観念せざるを得なかった。
 肩を竦めたスザクが、焦るルルーシュを往なす様に、今度はふわりと柔らかく笑う。
「隠すなんて水臭いな。それこそ言ってくれれば、僕だってもっと早く言い出せたかもしれないのに。……で、どんな夢?」
「なっ……!」
 二の句を継げないとはこの事だ。常に何か心に仕舞い込んだまま一線引くように接しているのは、こちらからしてみればスザクの方なのに。
 聞き様によっては酷く勝手に思えるスザクの主張に、ルルーシュは困惑も露なまま続く言葉を失った。
「聞かせてよ。僕も言うから。それとも、まだ内緒?」
「おい! 調子に乗りすぎだぞスザク!」
「ええ? だったら僕も内緒にするよ? それでもいいの?」
 予想が当たったと確信したらしいスザクはとことん強気だったが、さすがにこれはポーズだと気付く。平たい目をしたまま大袈裟に驚いて見せる仕草が逆に白々しい。
「お前……汚いぞ!」
「でも、気になる。……でしょ?」
 低姿勢だった筈が、どんどん押しが強くなる。まるで好奇心の塊だ。
「でしょ? じゃない!」
 控えめに怒鳴るルルーシュに構わず、スザクは「もしかしてシンクロしちゃってるのかなぁ?」などと、どこか見当違いな呟きを漏らしながら頻りに首を捻っていた。ゴーイングマイウェイなその姿が、どことなくやんちゃだった悪ガキ時代のスザクにダブって見える。
「だったら、お前が先に言え!」
 やっとの思いで切り出してみると、スザクはピクッと眉を上げてこちらを見た。
「え、僕?」
「俺のは大した夢じゃない。だから、お前が先に言え」
 あれだけ派手な反応だったのだ。さぞかしとんでもない夢に違いない。
 外れて欲しい予想ばかりよく当たる。そんな悪いジンクスが外れてくれればの話だが。
(この際だ。こうなったらとことん吐いてもらうぞスザク!)
 先に突っ込んできたのはスザクの方だ。洗いざらい話させてしまっても罰は当たるまい。
「あ、夢に僕が出てきたって事は否定しないんだ?」
 目をらんらんと輝かせ、早速と言わんばかりに身を乗り出しながら訊いて来るスザクに、元々丈夫ではない神経の糸がプチンと音を立てて切れそうになる。
「解ってるなら聞くんじゃない! 俺で遊ぶな!!」
 想像するのも腹立たしいが、肉食獣に弄ばれる獲物の気分だ。これ以上好き放題に振舞われては敵わない。男としての意地と沽券に関わるどころか、もっと悪くすればアイデンティティ崩壊の危機だ。
「ごめんごめん。怒らないでよ。話すから」
 ぎりっと眉根を寄せて思い切り睨んでみたものの、スザクは然して悪びれた風も無くカラカラと笑っている。
「反省してないなら謝るな」
「いたっ!」
 苛立ち紛れに、目の前でひらひら振っていた手をパシンと叩き落としてやると、最初から避ける気など無かったらしいスザクが大袈裟に痛がってみせる。
「ルルーシュってさ、そういうトコ、なんか猫みたいだよね」
 いてて……と呟きながら数回振った手を頭の下に仕舞ったスザクは、自分が怒られているにも関わらずどこか嬉しそうだ。
「うるさい! 俺に向かって同意を求めるな」
「うん。実は、小さい頃からたまにそう思ってた」
「そんな事は聞いてない! 無駄口を叩く暇があったらさっさと話せ!」
 にこにこしながら話すスザクの台詞は、あさっての方向から飛んでくる変化球さながらだ。
(人の話を聞け!!)
 歯噛みしながら強く思う。まるで消える魔球だ。意味を正しく認識出来るまで、若干タイムラグが出る辺りが特に。
(こいつと話していると調子が狂うな……)
 天然だと解ってはいたが、ここまで酷かっただろうか。つくづく一筋縄ではいかない性格をしていると思うが、その点に関してはあまり人の事を言えた義理ではないと自覚しているので一応黙っておく。
「あのね、ルルーシュ。引かないで聞いて欲しいんだけど」
「既に引いているが。……何だ?」
「僕、もしかしたら、Sかも知れない」
「…………………は?」
 たっぷりとした沈黙の後、あまりにも唐突なスザクの台詞に、ルルーシュは又も固まった。
 ――全く、意味が解らない。
「エ、ス?」
 こわごわと隣を見遣ると、スザクは尤もらしく……というよりは、昼間見た時の様に深刻そのものな面持ちでこくりと頷いた。
「うん。S」
 Sというのは、あれだろうか。性格の傾向を示す言葉として用いられる事のある……。
「一応確認しておくが、それは、ServiceのSか?」
「違うよ」
「では、SlaveのSという意味か? まさかとは思うが」
 一応、元の意味的には逆だった筈だ。
「ちょっと違うかな」
「……ちょっと、とは?」
「だから、その逆だよ。よく言われてる方の……つまり、性癖の方のS」
「せ………」
 ルルーシュは驚愕し、絶句した。
 さすがに、その意味が解らない程愚かではないし、世情にも疎くはない。だが、度肝を抜かれるというのは、こういう時に使う言葉だろうか。
「そう、多分性癖。しかもね、相手は君だったんだ」
「!!?」
 一気にぶちまけるように、早口で間を置く事無く補足してきたスザクに、思わずがばりと飛び起きたルルーシュは今度こそズザッ!と距離を置いた。
「お、お前……!!」
「うん、ごめん」
「ごめんじゃないだろ!!」
「やっぱり言わない方が良かったかな」
「そういう問題じゃない! どうなってるんだお前の頭は!? もしかしてお前、どこか病んでるのか!?」
「そうかもしれない」
「かも知れないって事あるか! 一体どんな夢だそれは!?」
 頭の螺子が飛んでしまったようなスザクの爆弾発言に、言ってしまってから「しまった」と思ったが、時既に遅しという感だ。
 ゆっくりと起き上がってきたスザクの目は据わっており、薄暗い部屋の中でむくりと起こされた上半身が、ベッドの端で呆然と佇むルルーシュの顔にゆらりと影を落とす。
 底の知れない無表情でこちらを見たスザクは、恨めしげな目付きでちらりとルルーシュを一瞥してから視線を逸らし、ぼそぼそと喋りだした。
「ホントはね、出来れば今日は、別々に寝たかったんだ。君は気付いてくれなかったみたいだけど、さすがにちょっと、後ろめたかったから……」
 途切れ途切れなスザクの声が虚ろに響く。成り行きとはいえ、同衾を頑なに拒んでいたスザクの様子を思い出し、ルルーシュは今更ながらに納得した。
(そうか……それであんなに……!)
 慌てていたので気付かなかったが、言われてみれば確かに、たかが同じベッドで寝る事になった程度でああも挙動不審になるのはおかしいと言えばおかしかった。
「それでね……」
 不意に、すいとスザクの腕が伸びてきた。
「オイ……!? 何を……!」
 上半身を屈めたスザクが、体の両脇に手を付いて逃げ場無くホールドしてくる。淀みの無い静かな瞳で見下ろされ、力無く折り曲げたままの片膝がビクリと震えた。
「夢の中で、君、どうなってたと思う?」
「どうって……」
 台本に書かれた台詞を棒読みする様な声音で話される度に、瞼の辺りに吐息が掛かってくすぐったい。
 そんな事、尋ねられた所で知る由も無い。瞼に残る吐息の感触を散らす為に、ルルーシュは当惑しながらぱしぱしと瞬きを繰り返した。
「まあ……それは、解る訳無いよね」
 質問に戸惑うばかりのルルーシュを見下ろしながら、膝を付いたスザクは自嘲する様にふっと笑っている。
(何がおかしい?)
 寧ろおかしいのはスザクの方だ。こんなスザクは見た事が無い。言動についてもそうだが、目つきが普段のスザクと全然違ってしまっている。
 第二ボタンまで開かれた寝巻きの襟刳りから覗く鎖骨の下が、呼吸に合わせて静かに上下する様を見つめながら、ルルーシュは焦りにも似た正体不明の感覚に任せてスザクをねめつけた。
「当たり前の事を訊くな。それから、何なんだこれは?」
 悪ふざけにしても少々度が過ぎる。そう思いながら睨む眦に力を込めて見上げてみれば、スザクはその意味を図りかねるように首を傾げた。
「何って?」
「近過ぎるだろ。離れろよ」
 冷静を装いながら後ずさってみれば、遠ざかった距離の分だけスザクが迫ってくる。
「そんな事は無いよ。寝てた時の方が近かったし」
「そういう問題じゃない!」
 時間を考慮して潜めていたが、気付けば声を荒げていた。異様な体勢に不安を掻き立てられているのに、スザクはそんなルルーシュの姿を何の感慨も抱かなかった様な目付きで見下ろしている。
「……それより、さ。ルルーシュ」
「何だ!」
「僕の夢の中で君がどうなってたのか、聞く気はあるかい?」


オセロ 第7話(スザルル)



「あのね」
 突然耳に届いたのは、凪のように静かで平坦な声だった。
「………?」
「そうじゃなくて……ルルーシュはどうして、そう思うの?」
 どうしても何も無いだろうとは思ったが、改めて訊かれると尚の事切り出し辛いものがある。
「俺がお前を心配してはいけないのか?」
 剣のある口調を止められない。自制したつもりだったのに、思った以上に詰るような響きになってしまった。
 いつだって人の事を気にするばかりで、自分の事には無頓着そうなスザクを言外に責めてしまう。
「それって、学校から帰ってきた時の事、言ってるんだよね?」
 明言は避けたものの、一応正しく伝わったようだ。
 ただ、こちらの事に関しては聞くなと釘を刺してしまった手前、あからさまに問い詰める訳にもいかない。
「あれは……ちょっとね、変な事思い出しちゃっただけだから、気にしないで?」
「変な事?」
「うん。……気になるんだ?」
 拳一つ分開いた頭の向こうで、君らしいねと呟きながらスザクがクスリと笑った。
「別に、気になんかなってない……」
「ダウト」
「……………」
「それ、ウソだろ」
「……………」
「ルルーシュ?」
「何だ」
 ふざけた口調にムカっ腹が立つ。こちらが感じているジレンマなど、スザクは疾うに見透かしているのだろう。
 様子がおかしくなったのは、確か『夢を見た』と言った辺りからだ。あれだけ派手に取り乱しておきながら、本人に自覚が無いなんて有り得ない。
(嘘つきで悪かったな)
 言えない事を隠しているのはお互い様でも、全く気にならないなんて嘘に決まっている。
(らしくないな)
 誰かに隠し事をするなんて、スザクには似合わない。嘘から最も遠い人種に見えるのに、もしかすると違うのだろうか。
(多分、打ち明けさせて楽になれるのは俺だけなんだろうが……)
 吐き出して楽になれる者もいれば、なれない者もいる。踏み込みたいと逸る気持ちを抑え付けるように、ルルーシュはそっと目を閉じた。
「何でも言い合う関係もいいが、お互いに言えない事もあるってのは普通だろ? お前が話したくなったら言えばいい。俺は気長に待ってるさ」
 敢えて追い詰めないようにする事も、時には必要なのだろう。ずるい言い方になってしまったが、今はこの程度譲歩するだけでも精一杯だ。
「ルルーシュ」
「何だ?」
「言っても笑わない?」
 ごそりと蠢く気配がして、スザクが振り返ってきた。自分だけ背を向けているのもおかしい気がしたが、今振り返ってもどんな顔をすればいいのか解らない。
「それは、実際に聞いてみてからでないと解らないな」
 自然とふてくされたような声になる。肘を枕にしたまま黙っていると、むくりと上半身を起こしたスザクがこちらをのぞきこんで来るのが解った。
「ルルーシュ」
「…………」
「こっち向いて?」
「…………」
 何度も呼ぶなと思いながら、渋々寝返りを打ってみた。
 向かい合ったスザクの顔が、カーテン越しに差し込む月明かりに照らされている。うつ伏せになって両肘を付く姿勢から、起こしていた頭を再び枕の上に横たえる所まで見届けていると、流し目でこちらを見たスザクは口元に緩く笑みを浮かべた。
 ぼんやりした薄闇の中で、互いの視線が絡み合う。
「うん。……あのね?」
 目の前に引かれていた筈のラインに、踏み込んでくる足元が見える。台詞の続きを促すように沈黙していると、スザクは戸惑いを浮かべた瞳を幾度か瞬かせた。
「昼間は言えなかったんだけど……実は僕も、今朝夢を見たんだ」
「夢?」
「うん」
 納得半分、もう半分は疑問だった。
(それで態度がおかしかったのか。……でも、何故?)
 ルルーシュは昼間の出来事を反芻した。ただ夢を見たと打ち明けただけにしては反応が過敏すぎると思ってはいたが、一体どんな悪夢を見たのだろう。
「お前もだったのか。そんな事、もっと早く言えば良かったのに。あの時様子が変だったのもそれが原因か?」
「うん、まあ……」
 面と向かって変と言われたスザクは決まり悪そうに苦笑いを浮かべていたが、謎が解けてすっきりする反面、まだ疑問も残る。
「……で? 寝覚めの悪い夢だったのはともかくとして、なんだってあんなに慌ててたんだ?」
 よっぽど怖い夢でも見たのだろう。青ざめているようにさえ見えたスザクの顔を思い出しながら尋ねてみると、スザクは笑いを堪えるような何とも微妙な表情のまま口ごもった。
「いや、寝覚めが悪いっていうか……」
「焦らすなよ。変な奴だな。ハッキリ言え」
「えっとね……。言い辛いんだけど、実は、その夢の中に、ルルーシュが出てきたんだ」
「はぁ? 俺が……!?」
 心拍数が一気に跳ね上がったのが自分でも解る。明らかにまずい兆候だ。
(まさか、そう来るとはな……)
 思わぬ展開に動揺してしまう。完全に予想外とまでは言わないが、いっそ見事なまでに予想の斜め上を行っている。
 周囲の闇に上手く紛れているなら幸いだが、ルルーシュの顔色の変化に気付かない様子でスザクは言葉を続けた。
「しかもさ、それが……なんていうか、ちょっと、変な夢で……」
「………!!」
 目を泳がせながら言うスザクの台詞にぎょっとした。言葉尻に潜むニュアンスに、今一番考えたくない類の想像が駆け抜けていく。
 それは勿論、今まで単なる可能性の問題として処理するだけで、敢えて考えないようにしていた最悪のルートだ。
(馬鹿な。有り得ない……!)
 激しく嫌な予感がした。これ以上喋らせてはならないと、本能が頻りに警鐘を打ち鳴らす。
「それで……」
「そ、そうか! じゃあ、お前も寝てないんだな?」
「えっ?」
「……あ?」
 虚を突かれたスザクが不審そうに眉を寄せている。あまりにも不自然な遮り方なのだから当然だ。
(まずい! ミスった……!)
 既に口を滑らせてしまってから、これでは文脈がおかしい事に気が付いた。
(何をやっているんだ俺は!!)
 信じられない程の、痛恨のミス。
 中途半端な作り笑顔だけは辛うじて引っ込めたものの、多分今の自分は、無表情を通り越して口角の下がった仏頂面をしてしまっている。米神の辺りに、つい、と一筋汗が流れた。
 困惑も露なスザクを前に、頭の中ではどう言い繕おうかとあの手この手だった。悪い勘ほど的中するものだ。最早皆まで聞く必要は無いようにさえ思えてくる。
「まあ、確かに眠りは浅かったけど……君よりは熟睡出来てるから、大丈夫だよ……?」
 いきなり話の腰を折ったルルーシュを見つめるスザクの眼差しは、当然疑惑の色に満ちていた。探るような視線を向けられ、掌にまでじんわりと冷や汗が滲む。
「そういえば……」
 瞬き一つ無いまま、スザクが言いかけて止まる。
 もうそれ以上何も言わないで欲しいと切実に願ってみたが、スザクは勿論空気を読まなかった。
「君も、言えないって言ってたよね?」
「何がだ」
「ん? だから、夢の内容」
「………!!?」
 ――まさかの、藪蛇再び。
(失態だ……!)
 ルルーシュは、これ以上無い程大きく見開いた目で呆然とスザクを見つめていた。
 スザク相手に、一瞬でも慌てた所を見せるべきでは無かった。……尤も、今更後悔してみた所で後の祭りなのだが。
 天井に向かってうーん、と呟きながら思案していたスザクが、何か良い事でも思い付いたかのように勢い良く振り返ってくる。
 無言で思考回路ごと意識がショートしたルルーシュを数秒程見つめたのち、スザクは邪気の欠片も無い上目遣いでさらりと言い放った。
「あのさ、僕も言うから、そしたら君も話してよ。……そういうの、駄目かな?」


オセロ 第6話(スザルル)



「川の字じゃなくて、これじゃ二の字だね」
 真横で背を向けて寝ているスザクが、もぞもぞと寝返りを打ちながら訳のわからない事を訴えてくる。
「にの字? ……ああ、漢数字の『二』か?」
「うん。片仮名の『ニ』でもいいけど」
 少し考えてから思い出した。川の字というのは、昔スザクが教えてくれた言い回しだ。ナナリーも一緒に、三人で屋敷の離れに寝泊りしていた時に。
(こいつも多分、今同じ事を思い出しているんだろうな)
 柔らかな思い出に身を任せ、ルルーシュは懐かしげに目を細めた。訊かなくても解り合える瞬間があるとすれば、そのタイミングが今なのだろう。
「ルルーシュ、狭くない……?」
「いや、大丈夫だ」
 ごそごそした衣擦れの音に紛れて、くぐもった声が耳を打つ。昼間聞く声と違って聞こえるのは、きっとまどろみの中に居る所為だ。
(これでは普段と逆だな)
 修学旅行を彷彿とさせる状況に、ルルーシュは息を潜めて笑った。あの女にも、スザクと同じくらい人を気遣える神経があれば苦労しないのに。
 まだ眠りに就くのが惜しく思えて、先程の話を繋げてみる。
「二の字でもいいが、平仮名か片仮名の『リ』でもいいんじゃないのか?」
「そう? でもそれじゃ、長さに差がありすぎない?」
 スザクの声には、単純に疑問の二文字だけが乗せられている。
「それを言うなら、『二』だってあまり変わらないだろ。勿論、長い方が俺だが」
「酷いな。そこまで差は無いよ」
 冗談めかして言ってみれば、ムッとしたらしいスザクが間髪入れずに呟いた。人種的な違いからか、少しだけ身長差がある事を気にしているのだろう。
「何だよ。希望的観測か?」
「事実だよ。それに、僕はまだ伸びるよ? 一応成長期だし、君より運動もしてる」
 からかわれたのが余程面白くなかったのか、ムキになったスザクが負けじと言い返してくる。小さい頃から体力面で劣っているのを気にしていたのはこちらだというのに、わざわざそこを突いてくるなんてつくづく負けず嫌いな男だ。
「俺は只の学生なんだ。運動量に差があるのは当然だろ? 怒るなよ、この体力バカが」
 運動でスザクに勝つ気など最初から無い。元々、ルルーシュの真価が最大限に発揮されるのは知力の分野だ。得意なジャンル自体異なっているのに、誰かに負けた所を見た事も無い相手と張り合うなんて馬鹿げている。
「それより、さ」
「ん?」
「ルルーシュ、今日はちゃんと眠れそう?」
 今日は、と言ってきたスザクに、昼間の事を思い出す。
(まだ気にしてたのか)
 今朝夢を見たのは事実だが、睡眠時間が極端に減っているのも、授業中に居眠りしているのも、本当はスザクが思っているような理由ではない。
「ああ。今夜はよく眠れそうだ」
「良かった。じゃ、今日こそちゃんと寝てね?」
 ほっとしているのは解るが、連日睡眠不足前提のような口ぶりだ。
(まあ間違ってはいないが、我ながら信用が無いな)
 散々寝倒している所を見られている所為か、反論しようにも立つ瀬が無い。
「わかったよ……。それにしても、お前は随分心配性なんだな」
「違うよ。僕が心配性なんじゃなくて、ルルーシュが僕に心配させてるんだ」
「はいはい。解った解った」
 説教が始まると長そうだ。真面目くさった台詞に反して、むくれ方が子供っぽい所は昔と変わらないが。
 ルルーシュは肩の震えを我慢しながら腹の痙攣をやり過ごした。心配も度が過ぎれば只の過保護だと思うが、それを言えば余計怒られてしまいそうだ。
(ちょっと行き過ぎてるとは思うが、まあ、こいつらしいといえばこいつらしいのかもな)
 他愛無い会話を交わす中、ふと我に返ったルルーシュは瞠目する。
 背を向け合う現状に、突然覚える既視感。
 冗談を交わし合い、一見仲が良さそうに見えても、スザクとは結局、ずっと背中越しの関係だ。丁度、いつもこの位の距離だろう。
 急に、そんな考えが脳裏を過ぎった。
(又か……。何故今そんな風に考える必要がある?)
 自問したルルーシュは忌々しげに顔を歪めた。
 何の事は無い、単なる気のせいだと自分に言い聞かせる。多忙な日々を送っているせいか、それとも緊張に満ちた学園生活の影響か、殊にスザクと再会してからは情緒不安定気味だ。
 この感覚に気付く度、ルルーシュは背中から冷水を浴びせられたようにヒヤリとした。一瞬で思考が麻痺し、どこかで心臓の軋む音がする。
(とにかく遠い……。でも、だから何だ。一体何が不満なんだ俺は?)
 今すぐ頭を掻き毟りたい衝動に駆られた。
 ただ、手を伸ばせばすぐ届く距離に居るのに、本当はいつだってすぐ傍にいるのに、ずっと背中越しに接するようにしか話せていない事だけは自覚している。
 お互いに、心のどこかで遠ざけ合っている。それだけは確かだ。
(少なくとも俺にとっては、自分の背中を預けてもいいと思える相手はスザクだけだ)
 それを知っていながら、正面切って向かい合う事からひたすら逃げ続けている。
 会話が途切れると同時に、部屋に深い静寂が降りた。……スザクはもう、眠ってしまっただろうか。
「スザク」
「うん?」
「お前……俺に、何か言いたい事があったんじゃなかったのか?」
「……えっ?」
 おもむろに問いかけてみれば、空気がピンと張り詰める。
(いっその事、向き合ってしまえればいいのにな)
 不意に自嘲が漏れた。今背を向けているのは、果たしてどちらの方なのだろう。
「どうして?」
 尋ねてくるスザクの声は硬かった。……答えたくないと思っているのが、嫌でも伝わってくる。
(お前のそれは、やはり拒絶なのか?)
 胸の奥に広がったのは、言い得ようのない不安だった。心なしか冷えた様にさえ感じられる指先で、ルルーシュはシーツをきつく握り締める。
 震える息を漏らすまいと引き結んだ唇が、ほんの僅かに戦慄いた。
「いや、別に……。大したことじゃないならいい」
 こうして一歩踏み出そうとする度に、いつもやんわりとかわされているような気がする。
 何か言い辛そうにしていなかったかと尋ねるつもりだったのに、強張ったスザクの声を耳にした途端、本音と真逆の台詞が口を突く。
(これじゃ、普段と何も変わらないだろう)
 ルルーシュは内心、苦い思いを噛み締めていた。
 器用に見える反面、不器用なのではない。基本的に不器用なくせに、やろうと思えば幾らでも器用そうに振舞えてしまうからいけないのだ。その所為で、演技ばかりが上手くなる。
 特技の一部と割り切って、驕っていられる時は楽でいい。
 だが、今だけはそんな性分が心底煩わしく思えた。
(一歩踏み出せば一歩下がられてしまうのか……。情けないな)
 自分に関わる事なら一応聞いておくべきかと思ったが、言いたがらないものを無理に穿る趣味は無い。
 夕食以降はまともだったが、今日のスザクの態度はとりわけ妙だった。
 一言で言えば挙動不審だ。単に気遣われているだけかと思えばやたらと突っ掛かって来たり、物言いたげな割に言いたい事を隠すような素振りを見せてみたり。
 自分から引き付けておきながら、スザクはずるい。責める権利など無いと承知の上で、そう思った。


オセロ 第5話(スザルル)



 三人で夕食を済ませた後、暫し雑談してから自室へと移動する。
 CCは今頃、客間に居るだろう。この時間帯になれば、うろちょろ出歩かれる心配も無い。
「はぁー……。夕食、すっごく美味しかったよ。ご馳走様、ルルーシュ」
 礼を聞かされるのは何度目だろうか。部屋のドアは自動だというのに、先回りしたスザクは扉が閉まらないよう片手で押さえてリードしてくる。
 紳士然とした性格を発揮する場を間違えていると思うが、ルルーシュは敢えて何も突っ込まずにそのまま通り過ぎた。
「どういたしまして。それより、もう腹は一杯になったのか? 何なら部屋で摘めるものでも用意するが」
「うん、大丈夫! もうおなかいっぱい」
 機嫌の良さそうなスザクを見ていると、こっちも嬉しくなってくる。
 終始にこにこ顔のスザクにつられたのか、夕食以降ルルーシュの笑みも絶える事が無かった。
「そいつは良かった。そう言ってもらえると、俺も作り甲斐がある」
 自室に辿り着き、取り敢えず椅子に腰掛けると、お腹を満足そうにさするスザクもベッドに座ってのんびり足を伸ばしている。
(ようやく緊張が解れたか……)
 こうして二人きりになった時にしか見られないリラックスした様子に、つい表情が綻ぶ。
 旺盛な食欲を見せるスザクは、三百グラム以上あるハンバーグと一緒にライスを三皿平らげた。かなり多めに用意してみたのだが、前菜、メインに、デザートも含めてあっさりぺロリだ。
「毎回思うんだが、凄い胃袋だな、お前のは。腹が痛くなったりしないのか?」
 ブラックホールに直結しているのだろうか。お腹一杯と言っていても、ともすればまだ入りそうだ。
「これくらいの量食べるのは普通だってば。ルルーシュが食べなさ過ぎなんだよ」
「そうか? 俺にとっては、これが普通なんだが……」
 どちらかというと食の細いルルーシュからすれば信じられない量だ。お互いに食べ盛りな年頃ゆえ解らなくもないが、筋肉質とはいえ、どう見ても細身なスザクを見ているといっそ不思議に思えてくる。
「食べっぷりがいいのは、見ていて気持ちがいいんだがな」
「あ。もしかして、もうちょっと遠慮した方が良かったのかな……。僕、食べ過ぎちゃってた?」
 揶揄する口調に聞こえたのだろう。スザクはどうやら意味を曲解したようだ。
「別にそうじゃない。変な遠慮なんかするな。食欲旺盛なのは、良い事だろ?」
 腹が痛くならないなら別にいい、と告げてやれば、スザクは安心したように頷いてから、仰向けでベッドの上に転がった。
「僕はともかく、ルルーシュはもっと食べた方がいいよ。君はちょっと細すぎ」
「悪かったな。だが、これは食べる量の問題じゃない。体質なんだ。だから、スリム、と言ってくれないか?」
「スレンダー、でもいい?」
「どっちも変わらないだろ」
「あはは! そうかも」
 軽口を叩き合いながら笑い合う。他愛無い時間が酷く楽しく、幸せにさえ思えた。
 二人一緒に居るだけで話が尽きない。他の誰かに言われればきっと腹が立つだろう台詞も、相手がスザクがであれば全く気に障らなかった。
「それにしても、君は相変わらず料理が上手いな。もしかして、この間来た時よりも腕上がった?」
 椅子の方にコロンと体を反転させ、片肘をついて寝転がったスザクが尋ねてくる。ハンバーグくらいでと思わなくも無かったが、好物だからこそ余計美味しく感じられたのだろう。
「さあ、どうだろうな。普段は咲世子さんが作ってくれてるから、俺が作るのは久しぶりなんだ」
「そっか。でも慣れてるよね? 将来レストランでも開いたら、きっと儲かると思うよ」
 しみじみと呟かれ、思わず噴出しそうになった。次々と繰り出される褒め言葉のオンパレードが、何だかこそばゆく感じられる。
「よせよ。褒め殺しか? 包丁捌きのスピードならお前の方が上だろ」
「でも、料理の腕なら、確実に君の方が上だ」
 一体何の勝負なのか、スザクはより良い部分を見つけようと競うように褒めてくる。
「そう連発してくれるな。……だが、そうだな。ついでに言うなら、人を褒めるテクニックもお前の方が上だよ、スザク」
 苦笑混じりに言葉を返せば、どういたしまして、とでも言うように小首を傾げてきた。
(全く……。こいつと居ると、本当に退屈しないな)
 人を調子に乗せるのが上手いと思うが、ここまで喜ばれるなら本望だ。只のオダテだと解っていても、決して悪い気はしない。
「ありがと。そう言われると嬉しいよ。それに、君に言われるなら、本当なのかもって思えるし」
 スザクは肩を竦めながら恐縮してみせる。きっと本心なのだろう。洒落っ気のある動作なのに、わざとらしく見えない所が凄いと改めて思う。
「ああ、信じていい。俺はお前と違って、そう簡単に人を褒めたりしないからな」
 片眉を上げながら言ってやれば、ベッドの上で頬杖をついたスザクが照れくさそうに笑っている。
「それに、お前の言葉は本心だからこそ、人にもちゃんと伝わるんだ。褒め言葉に関しては、本音に勝るテクニックは無い、って言うからな。美徳だろ? それは」
「うーん……。人からは天然って言われるんだけどね」
「そうだな。当たってる」
 具体的には聞いていないが、軍では時々「この世の終わりを感じさせる食べ物」を出される事があるらしい。
(どうせ碌なものじゃないんだろうが、普段は一体何を食べさせられているんだか……)
 ここまで大袈裟に褒めてくる位だ。どちらにせよ、あまり良い物は食べていないのだろう。
「あんな感じで良ければ、俺がいつだって作ってやる。だからお前も、遠慮なんかしないでもっと遊びに来いよ」
 スザクは一瞬呆けた顔をしていたが、すぐに真顔に戻って軽口を叩いてくる。
「うん、そうだね。君はきっと、いいお嫁さんになれるよ」
 有り得ない切り返しにムッときた。生憎だが、この手の冗談は受け付けない。
(俺が嫁だと? 笑えないな)
 ――それに、他意は無いものと信じたいが、何か大事な部分をはぐらかされたような気がする。
「バカ。俺は男だぞ。嫁なら貰ってやってもいいが、婿なんか取る気は更々無い」
「だよね。そう言うと思った」
 プッと噴出したスザクが、悪びれもせずクスクスと笑っている。
「何がおかしい。言っておくが、嫁を貰う予定も当分無いぞ」
「うん。僕も無いよ?」
「そんな事は知っている!」
 怒ってみたところで意に介する様子もなく、天然で返してくるスザクに気が抜けてしまう。
「ほら、下らない冗談言ってる暇があったら、さっさと寝ろ」
「……あれ、そういえば、簡易ベッドは?」
 スザクに言われて気が付いた。
(そういえば……)
 スザクが泊まりに来る時に使う簡易ベッドは、普段邪魔にならないよう客間に置かれている。いつもは事前に運んでおくのだが、今は丁度、布団諸共CCの居る客間に置きっぱなしだ。
(追い出す前に運んでおけば良かったか)
 今朝言い合いをした所為でタイミングを逃したのがまずかった。臍を噛む思いでどう説明しようか考えていると、スザクは身軽な動作でひょいとベッドから起き上がる。
「客間にあるんだろ? 運んで来るよ」
 言うや否や部屋を出て行こうとするスザクを、ルルーシュは全力で呼び止めた。
「ああ悪い! スザク、ちょっと待て!」
「ん、何?」
 くるりと振り返ったスザクは、今にも突撃しそうな勢いだった。もしCCと鉢合わせでもすれば、言い繕うのはどう考えても不可能だ。
(クソ……! こいつ相手にあまり派出な嘘はつきたくないが、仕方が無い!)
 焦りながらも、たった今思いついた言い訳をつらつらと並べてみる。
「実はな、あのベッドは今壊れているんだ。だから、」
「ああ、使えない程じゃないならいいよ。気にしないで?」
 スザクはにっこりと笑いながら、静止の声も解さず出て行こうとした。人好きのする笑顔が、今は何とも憎らしい。
(なっ……! 気にしないで、じゃない!)
 背に腹は変えられない思いでついた嘘を軽くスルーされそうになり、上塗りになると知りながらも、口から飛び出る勢いに任せて嘘を重ねていく。
「だからそうじゃなく! あれは今修理に出してるから、うちに無いんだ! それから、俺の客用布団もクリーニング中だ!」
「え……?」
 途端、ピキッと音を立てるように固まったスザクの視線が、部屋の中に置かれたベッドと入り口との間を数回往復した。そのままギギギ、と音が鳴りそうな動きで回された首が、椅子から立ち上がったルルーシュの方へと向けられる。
「布団も、無いの?」
「ああ」
「そんな……。じゃ……僕、今夜はどこで寝れば? あ、もしかして、今日は客間?」
「違う!!」
 だから、どうしてそうなる。
(確かに、簡易ベッドの他に設えられたものが一台あるが……!)
 察しが悪いと言いたいが、察されると困るのはこちらの方だ。この場合、寧ろ勘がいいと言える。
 ともあれ、スザクの解釈は、ルルーシュにとって決してそうあって欲しくはない方向にばかり突き抜けていた。
「言い忘れていたが、あそこは今、理事長の客が泊まるのに使っている」
「えっ……そうなの……?」
「ああ、そうだ。急な客でな。明日には帰るそうだが」
「……そうなんだ?」
「だから、そうだと言ってるだろ。何故二回も訊いてくる?」
「まあ……それなら……。うん……解ったよ」
 見るからに不自然な笑みを貼り付けたスザクは、ぎくしゃくしながらベッドに戻った。
(何なんだ……)
 昼間も様子がおかしかったが、またしても挙動不審になっている。
「とりあえず、そういう訳だから、間違っても客間の方には行くなよ? 鉢合わせると向こうの迷惑だからな」
「うん……。でも、珍しいよね」
「何がだ」
 まだ何か言ってくるつもりだろうか。不穏な気配を察知したルルーシュはギクリと背筋を強張らせる。
「今日、僕が泊まりに来るって知ってるルルーシュが、布団用意し忘れるなんて」
「ああ……ちょっとな。出すのが遅れた所為で間に合わなかったんだ。悪いな」
「いや……いいけど」
 スザクは暫く目を白黒させていたが、言い渡した事については取り敢えず納得したようなので安心した。
(客が泊まっていると言う前に、俺が部屋に運ぶ、などと言い出さなくて正解だったな)
 うっかり口を滑らせて、止めても聞かないスザク相手にそれを言っていたらアウトだった。
 スザクの事だ。ベッドや布団だけは確実にあると判断させてしまえば、運ぶのを手伝う等言い出しかねない。例え客が泊まっていようと、夜遅くに非常識だろうと、頼めば運んでくる事も全く不可能ではないからだ。
 ルルーシュは内心、ひっそりと胸を撫で下ろした。
 少々回りくどい感は否めないものの、咄嗟についた嘘にしては上出来だ。……勿論、派手にしくじったのも事実だが。
(だが、今度からCCは客間以外の部屋に寝かせるしかないな)
 一応クラブハウス内には他にも何部屋かあるが、幾ら一部を居住区にさせてもらっているとはいえ、全ての部屋を好き勝手に使える訳ではない。
 クラブハウス内どころか学園内全てのセキュリティに通じている為、本当は入ろうと思えばあらゆる場所に出入り出来てしまうのだが、好意で間借りさせてもらっている以上、理由も無くあちこち使うのも気が引けると思っていたのだが……。
「ルルーシュ!」
「はい!」
 突然大声で呼ばれ、驚いて飛び上がりそうになった。
「何なんだお前は! もう遅いんだから大声を出すな。ナナリーが起きたらどうする」
 ナナリーの部屋はルルーシュの部屋の真下だ。恐らく就寝しているだろう時間を気にして、ルルーシュは声を潜めた。
「あ……ごめん。……そうだね。ナナリー、もう寝ちゃってるよね」
「はぁ?」
 ナナリーに何か用でもあるのだろうか。
 頭の上に疑問符を並べているルルーシュを見て言いたい事を察したのか、スザクは両眉を下げた困り顔でおずおずと尋ねてきた。
「あ、いや……。客用の布団とか、他には無いよね? ええっと……例えば、ナナリーのお客さん用のとか」
「女性用のものしか無い。それに、もうナナリーは寝てるだろ」
「そう、だよね……」
 ベッドは修理中、布団はクリーニング中、客間は別の人間が泊まっている。
(よし。取り敢えずこれで条件はクリアだ)
 何としても、CCの居る客間にスザクを行かせる訳にはいかない。
 それゆえ、今夜は半強制的に、二人は同じベッドで眠るしかないのだった。


オセロ 第4話(スザルル)



「そうか。じゃ、君はまず、夜眠れるようにしなくちゃね」
「はぁ!?」
 有無を言わさぬ断定口調だ。向けられた視線が心なしか冷たい。
(何故怒っている!?)
 どこで地雷を踏んだのか。当然と言わんばかりに言い渡され、ルルーシュはぎょっとすると同時に酷く慌てた。
「だって、寝てないからああやって居眠りばっかりするんだろ?」
「だから、なんでそうなる……」
 苦虫を噛み潰すような呟きが漏れる。藪蛇を突く羽目になるのは御免だというのに、スザクは思った以上にしつこかった。
(この段になってから蒸し返されるとはな)
 押しの強さに唖然とするものの、何とか話を逸らさなければ振り出しに逆戻りだ。
「だから、睡眠ならちゃんと摂っていると言っただろ」
「ウソばっかり。君、目の下にクマ出来てるよ」
「えっ?」
 苛立ちが募る中、言質を取られてギクリとする。
 今朝鏡を見た時は気付かなかったが、屋外にいると目立つのだろうか。
(余計な事にばかりよく気付く奴だ)
 適当にかわそうと思ったのに、これでは言い逃れ出来ない。思わず舌打ちが出そうになったが、焦るルルーシュを余所に追及は容赦なく続けられていく。
「まだそこまで目立ってはいないけど、ちゃんと寝てたらそんなの出来ないよね?」
「……………」
「寝てるっていうなら、それは何?」
 米神がピクリと引き攣った。
 トーンこそ抑えられているが、声に妙な威圧を感じる。しかも、畳み掛ける口調と共に詮索ぶりまでエスカレートしていく様だ。
「何って……ちょっと待て。お前、気になるのは解るが、少ししつこいぞ」
 幾ら相手がスザクとはいえ、さすがに一言言いたくもなる。表立って言うのも憚られるかと思って黙っていたのに、これでは質問攻めだ。
 牽制の意味も込めて軽く睨んでみたが、立ち止まったスザクは鋭さを増した目つきで睨み返してくる。
「君は、僕に嘘を吐くの?」
「別に嘘は吐いてないだろ」
「じゃ、どうして眠れないのか言ってごらん?」
「お前な……!!」
 あまりにも一方的な言い分に、一瞬本気で腹が立った。……が、しかし。
「ルルーシュ」
「………っ!!」
 再度強く名前を呼ばれ、言い返そうと口を開きかけたルルーシュは完全に沈黙した。
(そういえば、こいつは昔から、一度言い出したら聞かない奴だったな)
 スザクの目に浮かんでいるのは非難の色だけではない。心配がベースになっているのが解るだけに、それ以上何も言い返せなかった。
 普段温厚な人間に限って、機嫌を損ねるとタチが悪いというのは本当のようだ。……それに。
(今からうちに来る相手と、喧嘩になるのは御免だ)
 夕食を共にする事をナナリーも楽しみにしている。約束が流れたとなれば、きっと悲しませてしまうだろう。
(仕方ない。折れてやるしか無いか)
 気まずく黙り込んだルルーシュは、呆れと諦めの狭間で深く嘆息しながら再び歩き出した。
「今朝見た夢のせいだ」
「夢?」
 背後で怪訝そうにしているスザクに頷き、半ばやけくそ気味に言葉を続ける。
「ああ、そうだ。それで熟睡出来なかったんだろう。クマが出来ているのもその所為だ」
「……………」
 夢の内容を伏せたまま事実を告げてみたが、応えは無い。
(まだ疑われているのか?)
 返された沈黙を不審に思って振り返ってみれば、何だか様子がおかしい。
「スザク?」
「えっ?」
「どうした? 具合でも悪いのか?」
 弾かれたように勢い良く顔を上げたスザクが固まっている。顔色があまり良くない。
 いや、寧ろハッキリと悪い。
「あ、いや……大丈夫。何でもないよ」
 うっすら青ざめたスザクが、ぎこちない笑みを浮かべたまま視線を逸らした。
 口元が明らかに引き攣っている。決して何でもなくは見えないが、一体どうしたのだろう。
(何だ? スザクの奴)
 何かおかしな事を言っただろうかと気になったが、これ以上深く突っ込まれても面倒だ。このまま受け流すかどうか思案していると、黙り込んでいたスザクが先に口を開いた。
「っていうか、訊いてもいいかな」
 又かと思ったが、一応聞いてやる。
「何だ」
「それ、どんな夢?」
「!!」
 今度こそ地雷を踏んだ。完全に藪蛇――最悪のパターンだ。
(今日は厄日か!)
 スザクの顔は真剣を通り越して深刻そのものだったが、生憎その質問にだけは答えられない。
(言える訳ないだろ! お前が出てきたなんて!)
 只の笑い話で済めばいいが、下手をすれば人格を疑われかねない内容だ。正直に話して墓穴を掘るより、黙っていた方が無難だろう。
(おかしい……。そんな話をしているか? 今!)
 反応が大袈裟過ぎるのはともかくとして、この悪夢のような流れは一体何なのか。
「どうしたんだ急に? なんか変だぞお前」
「いいから。質問に答えてくれないかな」
「……………」
 どうにかしてはぐらかそうとしてみるが、全く乗ってこない。……どころか、完全に目が据わっている。
(お前……その顔やめろ!)
 単に聞きたがるだけにしては妙なテンションだ。真に迫りすぎていて正直怖い。
「落ち着けスザク。俺は何か変な事を言ったか?」
「いや……そうじゃ、ないよ。……そうじゃないけど」
「けど、何だ」
 スザクは拳を握り締めながら、物言いたげに視線を彷徨わせている。
(言いたい事があるならハッキリ言え)
 予測の付かない言動を取られるのは、あまり好きではない。苛々しながら訊き返すと、スザクは決然とした面持ちでこちらを見た。
「聞かせてよ」
「なっ……!」
 突然の訴えに目を剥いた。本気で言っているのだろうか。
「聞かせろって……夢の内容をか!?」
「そう。……駄目?」
 上目遣いになり、この世の終わりについて尋ねるような顔で訊いてくる。
(だから、何なんださっきから! その迫力は!)
 全く意味が解らない。一歩後ずさったルルーシュは、訳も解らぬまま口を開いた。
「な……内緒だ!」
「内緒!? どうして?」
 否やがあるなど最初から受け付けていなかったのだろう。答えられて当然と思っている反応だった。
「どうしてじゃないだろ! 大体、なんでそんな事聞きたがるんだお前は!」
 動揺のあまり、自分でも驚く程の大声が出る。まずいと思った次の瞬間、大きな瞳を丸めていたスザクが途端にしゅんとなった。
「そうだよね……。ごめん」
「……………」
 ルルーシュの怒声が効いたのか、スザクは貝のように黙り込んだ。頭と尻に犬の耳と尻尾が付いているように見えるのだが、今はそのどちらもが力無く垂れ下がっている。
「いや、俺も別に、怒鳴るつもりは無かったんだが……。その、大丈夫か?」
「うん……」
 よく解らない状況に少なからず動揺させられた所為もあるが、相手はスザクだ。悪気が無いのだから仕方が無い。
(子供の頃じゃあるまいし……勘弁してくれ!)
 消沈したスザクを見ていると、そこまで隠す必要も無かっただろうかと自信が無くなってくる。板についてしまった秘密主義と、性格のひねくれぶりに自分でもうんざりした。
 せっかくスザクの方から踏み込んできてくれたのに、もしかして早まっただろうか。
「ルルーシュ」
「何だ」
「今日の晩御飯、ハンバーグがいいな」
「……わかった。善処する」
 善処も何も、作るのは自分なのだが。
 顔色を伺うように恐々と見上げてくるスザクに、一応機嫌を取ろうとしていると察して笑顔を向けておく。
「デミグラスソースのでいいのか? お前好きだろ」
「うん」
 好物を覚えられていたのが嬉しかったのだろう。スザクの顔にぱあっと笑みが広がった。
(危なかった……)
 どうやら引き下がるつもりになったようだ。クラブハウス入口の階段を上りながら、ひっそりと安堵の溜息をつく。
(確かにおかしなやり取りだったとは思うが、怒鳴ったのは失敗だった)
 何とか誤魔化す事に成功したものの、正直言って肝が冷えた。
 取り敢えず、夕食はスザクの好物だけで作ってやろうと思いながら、ルルーシュは招き入れたスザクと共に、ナナリーが待つ自宅の中へと入っていった。

オセロ 第3話(スザルル)



 つつがなく一日を終えれば、他の生徒達もばらばらと席を立ち、銘々が帰路に着いていく。
 放課後は生徒会室に寄ろうかと思ったが、今日は正直時間が惜しく思えた。
「スザク。今日は予定通り来られるんだろ?」
 斜め後ろの席に振り返って呼び掛ければ、ちょうど帰り支度を済ませたスザクが立ち上がる所だった。
「うん、お邪魔するよ」
「どうする? 一度帰ってから来るのか?」
「ううん? まっすぐ行くよ。一緒に帰ろう?」
「ああ」
 生徒用玄関へと続く道すがら、隣を歩くスザクの鞄を見る。
 泊まる用意をしてきたのだろう。ぶら下げられた鞄は、いつもより少し膨らんでいるように見えた。
 軍務も休みならテロも休み――もとい自粛だ。
(只のスザクと一緒にいられる日、というのは貴重だな)
 ルルーシュは戦争のつもりで仕掛けているが、ブリタニアへのテロが激化すれば、こうして肩を並べられる日も少なくなるだろう。
 学生の肩書きは、スザクにとってもルルーシュにとっても今や副業だ。本職を休んだ今日の二人は、『只のスザク』と『只のルルーシュ』だった。
「そういえば君、また居眠りしてたね」
「ん?」
「だから、授業中だよ」
 上履きを下駄箱に仕舞い込みながら、スザクはとぼけても無駄とばかりに追及してくる。
「よく気付いたな」
「背中見てればわかるよ」
 もっともらしく言うので笑ってしまう。人の気配や動きに聡いのは解るが、それは常識ではないだろう。
 外靴に履き替えるスザクを待ちながら、鋭い観察眼に舌を巻く。
「幾らなんでも目敏すぎだ。普通解らないだろ」
「え? そうかな」
「そうなんだよ」
 爪先で地面をトントンと叩いていたスザクは、意外とでも言いたげにひょこんと顔を上げ、目を丸くしている。
(大体、真横に座ってる奴にさえ見抜かれないのに、後ろから見ているお前が気付くとは何事だ)
 良い意味で、なのかどうかは疑問だが、スザクはつくづく常識の通用しない男だと思う。
「バレないコツはな、スザク。文章を目で辿るように頭の角度を変える事と、時々ノートを取ってるフリするのを忘れないって事さ。それから、当てられたら即座に答えるんだ。正解を」
 勿論その為の下準備も完璧だ。予め当てられそうな箇所にヤマを張っておくのも忘れない。
 テキストは汚したくないので間違っても偉人の顔に落書きを施したりしないが、その代わり、ルルーシュのノートには無数の「丸書いてちょん」が規則正しく並んでいる。
「何か他にご質問は?」
「ないよ」
 隣に向かって小首を傾げながら尋ねてみると、スザクはいかにも胡散臭そうな眼差しでこちらを見つめていた。
(こいつの事だ。そこまで言ってやったら、余計怒るんだろうな)
 何となく反応が予測出来たので、これ以上のネタバレについては自粛しておく。
「ご教授ありがと。でも聞いてないよ、そんなの。それに、そんな器用な真似出来るのは君くらいだって」
「ああ、それは否定しない」
 堂々と頷いてやれば、スザクはすっかり呆れ顔だった。
「もう……そんな悪知恵ばっかり働かせて。もっと真面目に授業受けなよ」
「真面目にやってるさ。テストの前日だけはな」
 外の空気が気持ち良い。ルルーシュはうんと腕を上げながら、背筋を伸ばした。
「真面目っていっても、君の場合、どうせ全教科のテキストに一回目を通すだけ、とかなんだろ?」
「まあな」
 やる気の欠片も無いルルーシュの返事に、スザクも空を仰ぎながら大きな溜息を吐く。
「前から思ってたけど、君は頭の使い方間違ってるよ」
「そうか?」
 ぼやくスザクに聞き返せば、非難がましい声が耳を打つ。
「そうだよ。だって、本気でやれば、今よりずっといい成績取れるのに」
「まあ、それも否定しないな」
 褒めているのか責めているのか解らない台詞に、尤もらしく相槌を打ってみる。
「もう……。君ってなんでそう不真面目かなぁ? もしかして、夜ちゃんと寝てないの?」
「寝てるさ。おかげさまで毎晩快眠だ」
「だったらなんで?」
 納得出来ないのか、スザクはしつこく追及してきた。真面目なのは解るが、これではまるで監督されているようだ。
「オイオイ、先生みたいな事言うなよ、お前まで……」
「違うよ。シャーリーがそう言ってたんだってば。ルルはやれば出来る子なのにーって」
「成程」
 そういえば、確かにそんな台詞を聞いた覚えもあった気がする。
(やれば出来る事くらい解ってる)
 スザクは知らないが、それでも敢えて勉学に一生懸命取り組まないのは、勿論他に打ち込みたい事があるからだ。
「全く。お前、なんだってそこまで真面目になったんだ?」
「そういう君は、昔に比べて遥かに不真面目になったよ」
「そうかもな。……で? お前もシャーリーと同意見なのか?」
「……………」
 テンポのいい会話を交わせる相手は限られている。
 打てば響くスザクの声を楽しんでいたのに、そこでふっつりと会話が途切れた。
「スザク?」
 顔を覗き込むと、スザクは僅かに目を伏せてからふっと笑った。
「まあ、僕は知ってるからね」
「え?」
「うん。だからさ、君の事情」
「―――…」
 たった今まで浮かんでいた笑顔が消えていく。突然の指摘に、胸の奥が冷えた。
 不意に去来するのは、過去の映像だった。
 元皇族として、常に危険と隣り合わせの日々を送っていた頃の。
「君が不真面目な理由も、身の上と全く無関係ではないんだろうなって、思ってるから」
「……………」
 押し黙るルルーシュの隣から、気遣うような視線が向けられる。雲一つ無い晴天の下、二人の間に微妙な空気が漂った。
(まさか、こいつがそんな見方をしていたとはな)
 特別避けたい話題ではないが、あながち外れてもいない指摘に戸惑いを隠せない。
「今でも、誰かから狙われたりする事は?」
「今は……無いな」
「そう。ならいい」
「……………」
 どう言葉を紡げばいいのか解らず沈黙してしまう。
 何事にも真剣に取り組もうとしない様子が、スザクには危うく見えていたのだろう。単に表面的な部分を案じていただけではない思慮深さに、思わぬ一面を垣間見る。
「ルルーシュ」
「何だ」
「そんな顔しないでよ。僕はただ、君達二人に何かあったら、って思っただけだから」
「ああ。……解ってるよ」
 柔らかな笑顔に気持ちが和いだ。
(心配、されているんだろうな。これは)
 何だかんだ口煩く言ってくるが、スザクは常に気配りを忘れない男だ。
(こいつはまた、人の事ばかり気遣って)
 優しい奴だと思う反面、そんなに人の事ばかり気にしていて疲れないのかと心配になってくる。
 自分の事には一切頓着しないくせに、他人に対しては極端に気を使う。
 初めてうちに呼んだ日も、こちらの事情を気遣って、学校では他人でいようと言ってきた位だ。
「俺達の身を案じてくれるのは嬉しいが、お前はどうなんだ?」
「え、僕?」
 訊ね返されるとは思いもしなかったのだろう。スザクはきょとんとした顔で振り返ってくる。
「俺にも何か出来る事は無いのか? お前に対して」
 どう答えるのか予想はつく。無駄な問いかけになると解っていたが、それでも訊かずにいられなかった。
「うん。僕の事はいいんだ。君には充分良くしてもらってるし。……それに」
「……ん?」
「前にも言ったけど、僕はすごく嬉しいんだよ。また、君達二人に会えて」
 思っていた通りの台詞だった。物憂げなスザクの表情に胸が痛む。
(何故、そんな切なそうな顔をするんだ、お前は……)
 以前、「また会えると思っていなかった」と言っていたスザクの台詞を思い出す。
「それは……俺だって、同じだ」
 再会を願っていたのが、自分だけだと思っていたような言い方などしないで欲しい。
「うん。でもね、その反面、僕は少し不安になってるのかもしれない」
「不安?」
「そう。不安だ」
「それは何故?」
 真意を量りかねて問い返すと、遠い目を前に向けていたスザクがしっかりと視線を絡めてくる。
「僕はね、ルルーシュ。君にもナナリーにも、もう辛い思いはして欲しくない。……それに、諦めて欲しくもないんだ――…これ以上」
「……………」
 ようやく得心がいった。
 裏を知らない以上仕方が無いが、要するに、将来を諦めているように見えるのだろう。
(確かに、行動を起こす前はそうだった)
 ただ生きているだけの命。緩やかな死と同じ生き方。
(だが、今は違う)
 スザクにはまだ言えないが、今はもう、厭世に囚われて刹那的な生き方しか選べなかった頃の自分ではない。
「俺は大丈夫だ。ナナリーの事もあるし、これからも何とか上手くやっていくさ」
「ホント?」
「ああ、本当だ。実際にその為のプランだって幾つか考えてる。……だから、お前がそんな心配をする必要はないんだぞ?」
 スザクが安心出来るよう、ルルーシュは努めて優しげな声音で話した。
 実のところ、そのプランの最たるものがブリタニアをぶっ壊す事なのだが。……まあ、とりあえず嘘は言っていない。
「ホントにホント?」
(ん?)
 心の声が聞こえたのだろうか。一度は安堵したスザクが、すぐ胡乱げな目を向けてくる。
「お前相手に嘘言ってどうするんだ。本当だよ」
 押された念をかわす為に笑いながら答えてやれば、少しムッとしたらしい気配が伝わってきた。
 僅かに怒らせた肩を下ろしたスザクから、不自然に見えない程度に視線を逸らしておく。
(何だ? 具体的に説明しなかったのがまずかったのか。まだ疑われてるな)
 それとも、真剣な思いに水を差された気分にでもなったのだろうか。
 あれこれと思案を巡らせてはみたが、スザクから返されたのは思わぬ台詞だった。

オセロ 第2話(スザルル)



 鞄からテキストを取り出していると、隣からおもむろに声をかけられた。
「おはよう! ルルーシュ」
 声の方へと目をやれば、ちょうど斜め後ろの席に鞄を置いたスザクがにっこりと笑いかけてくる。
「ああ、スザク。おはよう」
 気のおけない笑顔につられ、ルルーシュの顔にも微笑みが浮かぶ。
 ついさっきまで無数の刺々に覆われていた心が嘘のように和んだ。さながら清涼剤だ。ささくれ緩和にかなり効く。
「今日は早いね」
「お前こそ。午後までは軍の方で仕事があるんじゃなかったのか?」
「うん。それがね、機体の調整とかで、今日は丸一日休みって事になったんだ。だから」
(ん?)
 技術部に所属しているスザクの口から出た聞き慣れない単語に、一瞬ルルーシュの表情が曇る。
「機体……?」
「いや! ああ! だから、その……」
 不思議そうに聞き返してみれば、スザクは何故かあたふたと慌てていた。
(なんだ? 朝っぱらから寝ぼけているのか?)
 キョトキョトと目を泳がせる様子が可笑しく思えて笑ってしまう。……別に、只の言い間違いくらいでそこまで慌てる必要も無いだろうに。
「何だよ。お前、もしかして機材って言いたかったのか?」
「へっ!?……あ、うん、そう! だから機材とか……その他諸々、全部点検したりするんだって」
「ふうん」
 スザクは助け舟を出された事に酷く安心した様だった。息せき切って話す様子が、千切れんばかりに尻尾を振る仔犬の様に見えてくる。
(それにしても、こいつは本当に変わったな)
 鞄を仕舞い込みながらルルーシュは一人ごちた。
 強引で頑固な上に人の話を聞かない所は相変わらずだったが、スザクが辿っただろう経緯を思えば、今の性格へと変容を遂げた理由について納得出来なくも無い。
 まだごそごそと落ち着かないスザクが何をしているのかと思って見てみれば、まだHR前だというのに早くも一時限目のテキストを机の上に並べている。
 律儀というより生真面目がかった行動に、笑ってはいけないと思いつつ苦笑が漏れた。
「おいおい。まさか予習でも始めるつもりか? 随分真面目だな」
「いや、予習じゃなくて。っていうか、いっそソッチだったら良かったんだけど」
「うん?」
「実はさ、僕、昨日出された宿題、まだ終わってないんだ」
「ああ、確かに結構なページ数だったからな。俺もいっその事、全て潔く投げ出そうかと悩んだ」
「またそんな事言って……。でも君の事だから、どうせちゃんと終わらせてるんだろ?」
「ま、一応はな」
「もー……」
 肩を竦めながら答えを返せば、むくれたスザクが唇をへの字に曲げたままぼやいてくる。
「ホント、君のそういうトコ、たまに羨ましくなってくるよ」
「一応不真面目なりに、宿題くらいはやっておかないとな。……で?」
「ん?」
「どの辺りまで終わってるんだ?」
 上半身を捩って椅子の背に凭れながら尋ねてみると、淀みなくテキストを捲るスザクの手が一瞬止まった。
「うん。一応途中までは終わってるんだけど。……昨日はその、ちょっと、時間無くて」
 言い終えた直後に呼吸が詰まる。
 捉えどころの無い表情のまま淡々とノートにペンを走らせてはいたが、普通ならば見落とす程度でしかない反応の違いに気付かないルルーシュではない。
「なんだ。そんな事情があったんなら早く言えよ。手伝おうか?」
 条件反射的に口をついたのは、本心とは真逆の台詞だった。
「ダメだよ、宿題なんだから。こういうのは、ちゃんと自分でやんなきゃ」
「ふ……お前は……。自分でやらなければ意味は無い、か? 全く、予想通りの答えだな」
 あまりにもらしい台詞に、「堅物め」と思いながらも一応笑っておく。
「ルルーシュ。ボクを甘やかしても、いい事はないよ」
「はいはい……。そうかもな」
 いつからそんな真面目な男になったのか。最早くそ真面目の領域だ。
 苦笑の中に複雑な思いを押し隠したまま、ルルーシュは演技を続けた。
(時間がない、か……)
 こういうぎこちない瞬間に立ち会うのは、別に今回が初めてではない。
 時折走る緊張と、垣間見える心の乱れ。
 それは例えて言うなら、互いの間を隔てる透明な壁だった。
 一歩間違えば崩壊と紙一重な関係だと知るルルーシュだからこそ、こうして突き刺さってくる棘に気付く瞬間がある。
「解らない所があったらいつでも言えよ? その範囲なら、教えてやれない事もないからさ」
「ありがと。心強いよ。やっぱ、持つべきものは頭のいい友達、ってね……。まあ、ホントにわかんないトコが、あったらだけど……。あった、時だけって……ああぁー……」
「ふふ。じゃ、頑張れよスザク」
 早速障壁にぶつかったらしいスザクが頬を引き攣らせながらテキストと睨み合っているが、ルルーシュはそれきりスザクに背を向けた。
 一応ここは進学校だ。スザクとて人並み以上の学力はあるのだろうが、学生としてのブランクの長さに加えてレベルの高いカリキュラム――加えて軍務も掛け持ちとなれば、授業についていくのは決して容易な事ではないのだろう。
 背後で唸るスザクに対して知らんふりを貫きながら、ルルーシュは賑わい始めた教室をぼんやりと見渡していた。
(隠しているのは、お互い様か)
 踏み込んでいいものかと悩むのは、ちょうどこんな時だった。
(大体、コイツも少しは人に頼るという事を覚えたらどうなんだ)
 先程ああは言ったものの、スザクは決してこちらが望む通りに頼ってなどこない事をルルーシュはとっくに知っていた。
(ここに、スザクの味わっている苦労や苦痛を知る人間は、一体どれくらい居るんだろうな)
 この学園に漂う空気は、平穏しか知らぬ人間の幸福な日常そのものだ。無責任な程平和で、残酷な程『普通』な、けれど酷く居心地の良いぬるま湯の中。
 ――まるで、檻で鎧われた鳥篭だ。
 軍にいる理由を、ルルーシュは問い質さない。
(責める気なんか無いんだ、俺は)
 スザクは自分で選んだ道を進もうとしているだけだ。割り切れていなくても、理解しているつもりだった。
(ただ、こいつはまだ解っていない。ブリタニアという国の醜さを)
 ルルーシュは目を細く眇めて宙を睨んだ。
 例えベクトルは違っていても、何かを守りたいという気持ちは本物なのだ。
(ならば共に在るべきだ、お前は。……軍ではなく、俺の傍に)
 そうすれば、必ず守ってやれるのに。
 七年前、一人ぼっちで置き去りにしてしまった世界から、今も傷付いたままのスザクを救ってやりたかった。
(こいつは昔から頑固だからな)
 ゼロの言う事に耳を貸さなかったとしても、ルルーシュとしての言葉ならどうだろうか。自信が無いとは言わないが、正直まだ解らない。
(だが、いずれ必ず同じにしてみせる。俺達が進む道行きを)
 スザクと離れた日を、今も鮮明に覚えている。
 夕日を背に、遠ざかる車をずっと見送っていたスザクの姿。……身が引き千切られるようだった。
 ずっと案じていた。ようやく会えたのだ。手離してなるものかとルルーシュは思った。
(お前を傷付ける全てから、今度こそお前を守ってやる)
 八年前の借りは、まだ返し終わっていない。
 俯いたルルーシュは思考を閉じ、いつの間にか静かになった斜め後ろへと首を傾けた。
「おい、終わったのか? そろそろHRが……」
「……………」
 解らなかった問題は解けたのだろうか。結局尋ねてはこなかったスザクを気にかけつつ振り返ったそこには、さっきまでとは全く違う幼馴染の顔があった。
 集中しすぎて呼びかけられた事に気付かなかったのだろう。唇を真一文字に引き結んだスザクは、こちらが干渉する隙も無い程真剣な面持ちで問題を解いている。
(スザク……?)
 もう一度声をかけようとしたが、思わず躊躇した。
 スザクが普段から他人に対して笑みを絶やさない理由が、何となく解ったからだ。
 こちらの視線に気付いているのかいないのか、スザクは無言でペンを走らせ続けている。さすがは現役の軍人。集中力が違うといったところか。
(それにしても、改めてこういう顔を見ていると、幼い頃のこいつを思い出すな)
 地金が出ていると言ってやったら、スザクは傷付くだろうか。
 表情の無いスザクは少し冷たく、いつもと違って近寄りがたく見える。
 果たして本人が認識出来ているかどうか知らないが、スザクは普段から誰に対しても平等に優しく、常に温和温厚で、いつ如何なる時でも柔和な笑顔を絶やさない。
 幼い頃のスザクは、今でも人からきつい性格と評される事の多いルルーシュと同等、もしくはそれ以上に口も愛想も悪かった。
(いつまでもあのままだと確かにまずいだろうが……しかし、ああいう時の顔よりはマシか)
 これも自覚があるかどうか解らないが、スザクは時々、感情ごとストンと表情が抜け落ちている時がある。……まるで、ぽっかりと口を開いた黒い穴のように。
 それに気付いたのは、一体いつの事だっただろう。
 日頃見せる屈託の無さや朗らかさが消え、完全な無表情になっているスザクを見かける度に、ルルーシュは何故か、ずっと昔からよく知っているような、それでいて全く知らない誰かを見ているような錯覚に陥る。
(まあ、誰であっても、無表情の時は少なからずそう見えるものなんだろうがな)
 鳴り響く始業ベルを遠い気持ちで聴きながら、ルルーシュはぼんやりと物思いに耽っていた。体をスザクの方に向けたまま、視線だけは別の所を彷徨っている。
「ルルーシュ?」
「えっ?」
 名前を呼ばれ、突然現実に引き戻された。
 顔を上げてからふっと笑ったスザクが、閉じたテキストとノートの上に肘をついて身を乗り出してくる。
「どうしたの? なんだかボーッとしてる」
「……いや、別に」
「そう?」
「ああ。ただ、そろそろHRが始まるぞ、って言いたかっただけだ。気にするな」
「あ、そう……」
 歯切れの悪い物言いがおかしく思えたのだろう。スザクはハッキリしないルルーシュを不思議そうに見ていたが、ルルーシュは何故かスザクの顔を直視出来ず、何事も無い素振りで前へと向き直った。
(あんな夢を見たりしたせいだ)
 夢の中のスザクは酷く寂しがりで、何でも打ち明けてくれたのに。
 やはり、夢には願望が現れるものなのだろうか。愕然とするが、外れていない。
 いつの間にか教師が出席を取っている。頬杖をついたルルーシュは、スザクに聞こえないよう溜息をついた。
 イレブンのスザクに友人は居ない。特別親しくしているのはルルーシュだけだ。
(それなのに、俺にさえ何も話してくれないのか、お前は?)
 話せと言われても、何をどうと聞かれれば返答に困るのだが。……それでも。
 今は遠い、心の距離がもどかしかった。

オセロ 第1話(スザルル)



 ハッと見開いた目に映ったのは、見慣れた自室の天井だった。
「なんだ……? 今の」
 目覚めてようやく気が付いた。
(そうか。今のは夢か。夢だったのか)
 耳の奥で煩く鳴り響く心臓の音を押さえつけようと、自分に言い聞かせるように心の中で呟きを繰り返す。
「焦った……」
 起きるなり頭を抱えたままベッドに突っ伏し、くの字になって蹲る事数秒。恨めしげな横目でちらりと隣の枕元を見たルルーシュは、肺の空気全部を吐き出すような重々しい溜息をついた。
 寝起きの頭を切り替える為に洗面所へ向かい、まずは洗顔に取り掛かる。普段はぬるま湯で洗うルルーシュだが、今朝に限って言えば、まだ残っている眠気も一気に覚めるような冷たい水の方がいい。
 ついでに、夢見の悪さごとすっきり洗い流してしまう事が出来れば尚の事文句は無いのだが。
 洗い終えた顔を上げてみれば、目の前の鏡の中には何とも冴えない顔をした自分が映っていた。
(まさか、夢の中にスザクが出てくるとは……)
 笑えないにも程がある。そもそもスザクはああじゃないだろう。
 つい先程まで見ていた夢の内容を思い出しながら、ルルーシュは鏡の中に映るもう一人の自分へと問いかけた。
(では何か? あれが俺にとって理想のスザク像だったとでも?)
 というか、なんだ理想のスザク像って?
 自分の思考に思わず突っ込む。夢は見た者自身の深層心理と説いていたフロイトを、今は少し呪いたい気分だ。
(いや、寧ろそう出来るものなら一発殴ってやりたいな)
 残念ながら、完全に八つ当たりだが。
 暗澹たる気分になりながら濡れた顔をタオルで拭い、立てられた歯ブラシへと手を伸ばす。歯磨き粉を付けたそれを口の中に突っ込みながら、ルルーシュは数日前に起きた出来事へと思いを馳せた。
 七年前に別れたきりの幼馴染と再会を果たしたのは、つい先日の事だった。
 転入生の自己紹介など興味も無く、ぼんやりと頬杖をつきながら窓の外を眺めていたのに、語られた名前を聞いた瞬間、驚きのあまり椅子から転げ落ちそうになった。
 数年ぶりに再会した同い年の彼――スザクは、恐らくは過酷だったのだろう境遇の中で性格を激変させていた。どちらかといえば乱暴で荒かった口調は柔らかくなり、物腰も年相応という言葉以上に落ち着いてしまっている。
 一言で表現すれば、丸くなった。
(いや、単におとなしくなったというよりも、あれは……)
 まるで別人のような変貌ぶりに、全く戸惑いを感じなかったと言えば嘘になる。
 だが、そういった性格面での変化そのものよりも、離れていた年数以上に開いてしまったらしい心の距離の方がルルーシュには気になった。
 七年は確かに長い。ヒト一人の性格を変えてしまうには充分すぎる程の長さだ。……だが。
(あれは幾らなんでも変わりすぎだろう)
 離れて過ごしていた間、スザクに一体何があったのだろう。気になってはいるものの、何故か肝心のスザク本人を前にすると切り出す事が出来ない。
 本当の意味でスザクと再会したのは、彼が学園に転入してくる少し前だった。
 軍からKMFと毒ガスを強奪したテロリストの車に閉じ込められ、停車した先のゲットーで逃げ出そうとした時に背後から襲い掛かってきた軍人。
 あろうことか、それがスザクだったのだ。
 毒ガスだと思っていたカプセルの中から現れた少女ごとルルーシュを庇い、軍に反抗したと見做されたスザクは上官に撃たれた。
 恐らく死んだ。そう思っていたスザクは奇跡的に生きていた。
 ――但し、クロヴィス総督殺害の容疑者として。
 二度目の再会を遂げたのは、ゼロとして彼を助けた時だ。スザクはゼロがルルーシュだと知らずにいるが、ルルーシュにとってスザクとの再会は実質三度目になるのだった。
(まあ何にせよ、俺にもまだ打ち明けられない秘密はあるがな)
 ゼロがルルーシュだという事は、スザクにだけはいずれ打ち明けるつもりでいる。……その前に、まずは反応を見てからだが。
(言えない事を隠しておきながら、相手にだけそれを尋ねるのもフェアじゃない、か……)
 嗽を済ませてから口元を拭い、濡れたタオルをランドリーボックスの中に投げ入れた後、再び部屋へと戻る。
(起きたのか)
 開いたドアの向こうには、ベッドの上に座ったままこちらを見ている少女の姿があった。
「おはよう、ルルーシュ」
「…………」
 冷たい顔つきでベッド前を素通りし、挨拶してくる少女を無視したルルーシュは、クローゼットの扉を開いて着替え始める。
「今日は学校か?」
「見れば解るだろ」
 当たり前の事を聞くなと思ったが、壁に掛けられた時計を一瞥したルルーシュはとりあえず着替えを優先した。
 制服の上着に袖を通しながら殊更そっけない口調で答えてやれば、少女は着替えるルルーシュの背中を無言でじっと見つめてくる。
 物言いたげに向けて来られる視線が鬱陶しい。思わず舌打ちが出そうになったが、辛うじて出る寸前で溜息に摩り替えた。
 見事自制に成功した自分に拍手喝采したい気分だ。
「おい」
「なんだ?」
「俺が学校に行っている間は、絶対外に出るなよ」
 バタンとクローゼットの扉を閉めながら、寝起きのままベッドに座っている少女――CCの方へと振り返って警告しておく。
(こいつには前科があるからな)
 このCCこそ、スザクが撃たれる羽目になった元凶だった。
 ある日突然転がり込まれて以来、仕方なく匿っている。理由は、軍に追われているからだ。
 見た目こそ人形めいた造りをしているが、口も態度も最悪な上に素性も正体も不明。只でさえライトグリーンの髪が目立つのに、自分の立場も弁えず学園内を勝手にうろちょろする。
 要するにCCは、ルルーシュにとって只の厄介者でしかなかった。
「ふーん? じゃあ、お前が学校から帰ってきた後ならいいんだな?」
 加えてこの性格だ。揚げ足取りとしか言いようの無い返事が酷く勘に触る。
(この女……)
 みるみるうちに眉間に皺が寄った。
 人を小馬鹿にしたような口調に殺意が湧く。からかわれるのは全くもってルルーシュの趣味ではない。
 閉めた扉から離した手をゆっくり下ろしたルルーシュは、面白がっているとしか思えない顔でこちらを見ているCCを鋭い目つきで睨んだ。
「バカかお前。帰ってきた後も出るなという意味に決まってるだろう。解り切った事を言わせるな」
「はいはい、解ったよ」
 侮蔑混じりな口調の中に潜む本気の怒りを感じ取ったのか、それ以上皮肉めいた台詞は言って来なかったが。……それにしても。
(吹けば飛ぶ程軽い返事だ)
 CCに向けられたルルーシュの視線は冷ややかさの度合いを増していた。
 生憎ながら、反省しない相手に腹の虫を収めてやろうと思う程親切でもなければ、お手軽な作りもしていない。
「たかが居候の分際で、この俺の手を煩わせようとはいい度胸だな。あまり俺をナメるなよCC。……一つ断っておくが、俺は別に、お前のお友達になってやった覚えはない。口のきき方に気を付けろ」
 適当にあしらおうという意図が見え見えだ。そんな返事は却ってこちらの神経を逆撫でするだけに決まっている。
 一応まだ我慢してやっているとはいえ、相手が女でなければとっくに張り倒しているところだ。
(こいつは、ギアスの件以外では何の接点も無い女だからな)
 今まで他人とどんな付き合い方をしてきたのか知らないが、馴れ合うつもりもない相手からふざけた口のきき方をされる筋合いは無い。
「ふ……つれないな。同衾までしている仲だというのに」
「好きでしている訳じゃない。……それから」
「ん?」
「別の部屋を用意しておいた。今夜はそっちで寝てもらう」
「誰か泊まりに来るという事か?」
「……………」
 刺した釘が効いているのかいないのか。偉そうな目つきや態度こそマシになったものの、空々しい馴れ合い口調だけは変わらない。
(何故お前相手にいちいち答えてやらなきゃならない?)
 柳に風とはこの事だ。怒りを通り越して呆れてくる。
 ルルーシュは顎の下を掠る制服の襟元を荒々しい手付きで引っ張る。些細な事にさえ、今は激しく苛立った。
 察しの悪い奴は嫌いだが、察していながら遠慮しない奴はもっと嫌いだ。
(煩わしいんだよ、お前は)
 性懲りも無く尋ねてくるCCを視界から追い出そうと、ルルーシュは漏れる溜息を噛み殺して目を瞑った。
「聞かなくても解るだろ。大体ここは俺の部屋だ。何か文句でもあるのか?」
「いいや、別に? お邪魔だというなら、私はおとなしく別の部屋で寝てやるとするさ」
「そうか。そいつは大変残念だ。不満があるなら今すぐにでも出て行けと言えたのに」
 皮肉の応酬が続く中、CCは悪戯を思いついた猫のように目を細めた。
「前にも言ったが、今私に出て行かれたら困るのはお前だろう?……それにしても、今日は朝っぱらからやけに絡むじゃないか。お前がご機嫌斜めなのは、もしかして嫌な夢でも見た所為か?」
 クスクスと笑いながら尋ねてくるCCに今度こそ舌打ちが出た。わざとらしい指摘に心底嫌気が差す。
「馬鹿を言え。決まってるだろ。俺が不機嫌なのは全てお前の所為だ」
「そうか、図星か」
 絵本に出てくる魔女そのものだ。扱いづらい事この上ない。
「口を縫い合わされたくないなら今すぐ黙った方がいいぞ。俺は縫製が得意だ」 
「悪くない趣味だとは思うが、それは自慢か?」
「ああそうだ。お望みなら綺麗に縫い合わせてやる。その忌々しい口が二度と開けなくなるようにな」
 CCに口を返しながら、ルルーシュは朝食を摂るかどうか思案した。
 ナナリーは既に出かけている。身支度は整ったが、馬鹿女に構っていたせいで朝食が胃に入りそうにない。
 勿論、時間が無い、というのとは別の意味でだ。
(こんな女相手に、我慢してやろうと思っていた事自体馬鹿馬鹿しくなってくるな)
 単なる知ったかぶりなのか、それとも起き抜けに漏れた一言を聞き止めていたのかどっちだ。
(いずれにせよ、わざわざ確認してやる必要などあるものか)
 ベッドから降りてきたCCを無視しようと、鞄を取りに踏み出しかけた足が止まる。
「これだろ? お忘れものは」
 差し出された鞄を見下ろしてから、満足そうなCCの顔を見た。
 本気で礼を言われるとでも思っているのだろうか、この女は。
「別に忘れてなんかいない。……それから」
「ん?」
「勝手に俺の私物に触るな!」
 渡された鞄をひったくると、ルルーシュは無言で部屋を後にした。

さて問題です。(スザルル・ギャグ)

嘗て無くしょーもないです。
最早自分でも意味不明な程キャラ崩壊してますのでご注意下さい。

真面目ちゃん代表なスザクくんが、特にソーファーラウェイな感じである。
ちなみにジャスティスの行方も星の彼方ですので、ある意味猛毒です。
OKドンと恋!な方だけレッツスクロール。









**********************

「おいスザク、ちょっと……」
通りの向こうを歩くカップルへと、スザクは憚ることない視線を向けていた。
ガン見もガン見、超・絶ガン見だ。

断言しよう。
今時、親の敵を討とうとしている奴でさえそこまでの眼力は発揮出来ない。
まあ無論、それは他ならぬ俺自身の事なんだが。

先程からシャツの袖を二、三度引いて呼びかけてみたものの、何故かまるで反応が無い。
今何を考えているのか全く読みとれないその表情は完璧なるポーカーフェイス。さながら獲物を狙う鷹の目だ。
お前の無表情で凝視される身にもなってみろ。ハッキリ言ってかなり怖いぞ?

「スザク!」
「んっ?何?」
「何じゃないだろ。それやめろ!」
「え、何?」
「だから、見てるだろ向こうも!」
「ん?」

駄目だこいつ。まるで気付いちゃいない。

「いくら気になるからって、赤の他人だぞ。そんなにジロジロ見るものじゃないだろ」
「え?……ああ!」

ようやく気が付いたのか。はっきり言って遅すぎる。
何だか久しぶりに合った気がする視線に訳も解らぬままホッとして、とりあえず脱兎の如く駆け逃げ出して行くカップルへと申し訳なさそうな視線を送っておく。
ジェスチャーやニュアンスというものは非常に大切だ。特にこういう局面においては。

うちの子が、ご迷惑お掛け致しまして大変申し訳ありません。
例えて言うならそんな感じだ。

というか!何故俺がそんな事してやらなきゃならない?
お前がやるんだよスザク!
寧ろ言え「ガン見してごめんなさい」と!リピートアフターミー!

突然の通り雨に振られ、現在本屋の軒先に退避中。
車通りの多い道を挟んだ向かいの通りには、振り出してから出かけて来たのだろう一組のカップルが歩いていた。
……歩いて、いた。つまり、過去形だ。
言わずもがな、ついさっき駆け逃げ去っていったばかりの、スザクのガン見被害に遭ったあのカップルがそれである。

無論、今はもう、彼らは居ない。


「おい……」
「なに?ルルーシュ」
「何じゃないだろ。何か俺に対して言うべき事は無いのか?」
「ああ。傘が無いね

そんな事は解ってる。いや、解り切っているんだよスザク。
俺が言いたいのは、そういう事じゃない。
繰り返して言うが、決して!そういう事を言いたい訳じゃないんだ。わかるかな?

「何故あんな目で見てたんだ?」
「うん。相合傘したいなって思って」
「………………」
「勿論、君と」
「…………………」

「最近ね、二人で差してもどっちも濡れない楕円形の傘が売られるようになったんだって。相合傘専用の傘らしいんだけど……。でも僕はね、ルルーシュ。あれは、邪道だと思ってる
「で?」
「気付かなかったのかい?彼らが持ってた傘……あれこそが邪道だ。だって、楕円形だったんだよ?信じられるかい?実際に使ってる人がいるって事なんだ。わざわざ数千円も出して買って、二人で差す為にだけにわざわざ雨の日選んで出かけてるんだよ彼らは」

「それの、どこに、問題が?」

極上の(但し、生温い)笑顔をスザクへと向けながら、一言一言区切るようにして尋ねてみる。
嘗て魔神を目指していた俺だが、敢えて言おう。
今なら悪魔ではなく、天使にだって聖者にだってなれる。

「違う!間違ってるよルルーシュ!」
「それは、俺の台詞だ!!二重の意味で!」
「だって、相合傘って何の為にするものだと思ってるの!?」

ええい!人の話を聞けこの天然!
仕舞いにはジェレミア召還してもう一回ギアス使うぞ!

「ほう……では、答えてやろう」
「ああ、いいよ。聞こう」
「相合傘とは!男女が!二人きりで!愛を囁き合いながら、差すものだ」
「そうだ!解ってるじゃないかルルーシュ!」

「はあ?」
だったら、二人ともきちんと肩を濡らしながら差すべきだよね?



「何故そうなる?」



ルルーシュの質問を余所に、スザクは酷く満足そうな表情でニッコリ微笑むと、


「ルルーシュ!今から傘を買いに行こう!」


どっか吹っ切れちゃったような表情で雨の中に飛び出していった。



そんなスザクの背中は、無数の雨粒をその身に纏い、世界中の誰よりもキラキラと輝いていた。



**************


「相合傘っていうのは、わざわざ二人して濡れる為に差すものなんだよ。
だって、でなきゃそのまま○○○に連れ込めないだろう!?」

※上記○○部分は良心です。



でもルルーシュ。
君はそんな事、一生知らないままの君でいて?(矛盾!


相合傘は、二人して濡れてこそ。
それがスザクさんのジャスティス。

ちなみに、性別の壁など愛の力で越えてみせるそうです。
頼もしい限りですね。


**************


嘗て無く訳わからんもの書いたな…眠いのかな私?(何故か2日完徹である!)
攻の軸がブレてればブレてるほど、そして受がガチノン気であればノン気である程、ギャグは書き甲斐(書き害ともいう)があるとおもっています。

……友達に見捨てられても全く文句言えないなあ、コレ。(遠い目)

真実は白と白(スザク・ゼロレク後)

「愛は与えるものだ」と君は言う。
そしてそれは、きっと間違いでは無いんだろう。
だって、真実は最初から一つきりなんじゃなくて、本当はいつだって二つあるものだから。
二つあるうちの片方を自分で選んだ時に、初めて真実は一つきりに変わるんだ。

君を知っていればよく解る事だよ。
君は大地に降り注ぐ恵みの雨のように、惜しげもなく与える事だけを選ぶ人だったから。

当時の僕は、そんな君の姿を見る度に「それこそ偽善だ」と憤っていた時もあったけど……でも、今なら解る。
目には見えない慈しみに溢れ、どこまでも与える喜びだけに包まれていた君の姿は、罪の意識に黒く歪んだ僕にとって、いっそ痛いくらいに眩しく映っていただけだったんだと。

けれど、世界を愛し、明日を欲した君は、全てを愛するが故に全てを壊し、そして奪った。

僕もそうだよ。
何一つ思い通りにならない世界であっても、僕もまた、君と同じ様にこの世界を愛していた。
そして、愛したものが何かを酷く間違えているのなら、僕はその間違いだけを奪ってしまいたい。
いっその事、奪う事で取り除いてしまいたい。そう思ってた。

だって、それが僕の愛なんだ。

勝手だと思うかい?
でも、君だって充分勝手だ。解っていると思うけど。

ああ、けれど、君はそれでも与えたがる。
それが例え、酷く勝手で一方的な想いなのだと気付いていても。
だからこそ、愛ゆえに人々から奪った明日を、君は命と引き換えに与えて去った。

君は「ただ返しただけだ」と言うかもしれないけど、でも知ってるよ。
君は本当に、最後の最期まで、ただ与えるだけの愛にこだわり続けていたって事。
そんな君が僕から奪っていったもの、そして与えてくれたものを、僕は絶対に忘れない。

僕は君の願いを叶える為に、君から君の命を奪う。
それが君との約束で……それが僕の愛し方だからだ。

ねえ、ルルーシュ。
君が与えたがりながら奪った事もあったように、僕も多くのものを君から奪ってしまったけれど、僕は君が奪ったものと同じだけの何かを、君に与える事は出来ていただろうか?

君がまだ僕の隣に居た頃、君と僕は正反対で、全く似てなんかいないと思ってた。
でも今は……そうだな。
きっとそっくりなんだろうと、思ってるよ。

ほらルルーシュ、見てごらん?真実って二つだろ?どちらを選ぼうとするか自分で決めてしまうまでは。

それに、すごく不思議だ。
例え選んでみたとしても、選ばれなかったもう片方が、こうして真実に変わってしまう事だってあるんだから。

だけどね。今の僕はもう、そんな事実に抗ったりはしないよ。
どちらかを選択するまでは白と黒のようにしか見えない真実も、本当は、白と白で出来てるんだって気付いたから。
だから今はもう、何一つ否定する事なく生きられるようになったと思う。

……そんな今、ここに。
僕の隣に、君が居てくれたなら。


君は幸福の皇子。ピンクの髪のユニコーン。
人々に愛と幸せを与える度に、自分自身が不幸になっていく。
けれど、僕の思い出の中にいる君は、何故か微笑んでいない時が無い。



でもね。



そんな君の最期の笑顔が、今にも泣き出しそうな子供の顔と同じだった事なんて、きっと僕しか知らない事なんだ。




ルルーシュ。




与えてくれて、ありがとう。
愛しているよ。


君がくれた最期の抱擁も、仮面越しの掌も、僕は、一生忘れない。

暫くピザはお預けだ!(ルルシー)

お初ルルシー。
若干ギャグ色が濃い仕上がりになってしまったよ。
決してお上品な内容ではないので、ノマカプとお下品なのがOKな方のみどうぞです。
絡みはハッキリとありません。


**************************


目が覚めた。
何か生暖かい感触がふくらはぎの辺りに絡んでくる。
なんだこれはと思いかけたがすぐ気が付いた。……またこいつか。

いつも背中を向け合ったまま寝に入るのに、気付けばぴったり抱きつかれていたり足が絡まってきたり、酷い時には腿の間に手を突っ込まれていたりする。
お前にはチーズくんがいるだろう。それに俺はゆたんぽでは無い!

やはりベッドをシングルからせめてセミダブルに切り替えるべきだろうか。暖かいのはいいが、これでは狭くて仕方が無い。
だがスザクが来たらどう説明する?あいつはノックと同時に返事も聞かずいきなり人の部屋にズカズカ上がりこんでくる上に、落ちている髪の毛にまで気が付く程目敏い男だぞ。

大体、こいつは女のくせに寝相が悪すぎる。鼾をかかないだけいいだろうとかそういう問題じゃない。
寝返り一つ打つなとは言わない。シャツ一枚に下着一枚きりで寝るのも結構だ。その慎みの無さにももう慣れた。
だが、頼むから俺の安眠を妨げないでくれ。

毎晩快眠出来ていた頃が懐かしい。そう思いながら後ろへと振り返ってみれば、CCはあどけない顔をしてすやすやと眠っている。
その気持ちよさそうな寝顔が余計忌々しい。
熟睡出来ているようで大変結構だ。ついでに口を塞いで鼻も摘んであげようか……。

掛けてあったタオルケットが大幅にずれている。そうか、蹴飛ばしたのかこいつが。
掛け布団を敷布団にするとは何事だ。お前はともかく俺が寒いだろう、俺が。
気付けばたった一枚羽織っているシャツのボタンでさえ、第二どころか第三まで外れている。だらしない事この上ない。

「うーん…」

舌打ちしながらシャツのボタンを嵌めてやろうとすれば、タイミング良く(寧ろ悪く)CCが寝返りを打つ。
おい待て。何故今うつ伏せになる?
全く、寝ている間まで俺の手を煩わせるとは……一体どうしてくれようこの女。
まあこれは俺のシャツだからサイズが合わないせいもある。仕方無い、今度こいつ用の寝巻きを用意してやるか。

「ん?」

二の足の下敷きにされている布団を引っ張り出そうと手を伸ばした瞬間、さすがにそれは無いだろうと思うものが目に入った。
寝返りを打ったせいで捲れ上がったシャツの裾から、下着諸共尻が丸見えだ。
しかも、パンツのゴムがズレて片側の尻が露出している。

「有り得ない………」

さすがに口に出た。
何故そんなズレ方をする?女の尻というのは、普通寝返りを打っただけでそこまではみ出るものなのか?
それに、その下着は通販とはいえ一応そこそこ名の知れた下着メーカーから購入したものなんだぞ?
それとも何か?俺はもしかしてサイズを間違えたのか?……と。

そこまで考えてみて、思い至った結論に愕然とした。



まさか……!Mじゃない!?



CC、お前……尻だけサイズがLなのか?
痩せろ今すぐに!!安産型にも程がある!
大体、毎日毎日ピザばかり食べているから、乳脂肪分と脂質が全部尻に回る羽目になるんだろう!
デカいのは態度だけかと思っていたのに、幾ら何でも女のパンツがLだなんて俺は認めない。
それが例え女性の風上にも置けないお前のようなはしたない女であったとしてもだ!

ゴムの下に指を通してズレたパンツを元に戻してやれば、ピシッ!という景気の良い音と共に尻が仕舞われる。
それでいい……これで本来あるべき形に収まった。なべて世は事も無しだ。よし俺は寝る!寝てやるぞ何としても!

手にしたタオルケットを引き上げてCCの肩にかけてやった後、俺は深い深い眠りについた。
次の日、何故か起き抜けにCCからチーズ君アタックを食らった(当然軽やかにかわした)が、とりあえずクレジットカードは暫く使えないよう止めておいた。ざまあみろ。


これはお前の為なんかじゃない。俺の為の処置なんだよ、CC。



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「女の下着を二度も買い直す羽目になるなんて、俺は絶対にごめんだ!」


*******************


…あ、第三まで外れてるボタンの中身は勿論ポロリしてます(でも動じない)
「自分には妹がいるから、異性の裸を見るのも慣れてる」(風呂とか入れてやってたから)とかふっつーーーに思ってるルルーシュです。

CCは勿論起きてます。ええ、わざとですよ。色々と。
ま さ か 全 て 空 振 る とは思ってなかったと思いますが。

ちなみに飛んできたチーズ君人形を軽やかにかわすルルーシュについてのツッコミは受け付けていません。
何故ならこれはシールルではなくルルシーなのだから。(強調)
そして、C様の穿いていらっしゃるおパンツ(ブラジャー)は、全てルルーシュ君が(恥を忍んで通販で)購入してあげたものです。

ルルーシュは家計簿に何て書いたんだろうね?
おそらく怒りに震えた大文字で「雑費」って書いてあるんだろうね……^^

性的な意味で男臭くてオスっぽい部分があるのはスザクさんだとおもいますが、そういう意味じゃなく「あ、やっぱり男なんだな」と思わされるようなルルーシュの側面が書きたかった筈なのに…おかしいな!

本質的には異性同性関わらず、人を一人の人間(個人)としてしか認識しないフェアリー・ルルーシュですが、公式から認定される程のド受けとはいえ、性格そのものは男性的でちょうノンケでスカしてて、攻成分とSっ気たっぷりな所がルルーシュの側面的魅力(つまりカッコ良さ)だとおもっています。

だが、気付けば母性愛とお兄様要素たっぷりな、面倒見の良い世話焼きルルーシュになってしまっていたwww
それはデフォルトだよルルーシュ!

可愛いルルーシュとか綺麗なルルーシュとか清楚なルルーシュとか妖艶なルルーシュもいいんだけど、出来ればふっつーにかっこ良くて攻めっ気たっぷりでちょっと意地悪な男っぽいルルーシュが書きたいよ!(童○だけど!)(○部分は良心です!)

例えばバニーなカレンに「ところで、いつまでそんなカッコしてるんだ?」って言ってた時みたいな!
そして「ゼロに向かって…(苦笑)」みたいな!(敢えて肩にシャツをそっとかけてやってたシーンではない!わかるかなこの違い!?)
ああいうシーンを彷彿とさせるような、余裕ぶっこいてる意地悪攻なルルーシュが書きたい。
そしてそんな性格のまま、でも受!っていうのがたまらなくいい。

♪まわれまわ~れ

さだーめーのら~せーんよ♪

…ということで、出来ました。
あげとく。そいや!

Scan10013-2s.jpg

意識しないとすぐに童顔になってしまう…。
じつはお顔があんまり気に入っていません。しょんもりする。
そして毎度のことながら、髪の毛のハイライトに泣かされます(‐д‐)
うわーん難しいよルルーシャァァァ!!

スザクっていうより、どっちかっていったらリヴァルっぽいなこの発音。

*********************

↓大きいバージョンはこちら。クリックで別窓です。

Scan10013-3b.jpg

♪世界がかわる~

そーの~とき~まーで~♪

無題

REGENERATION聴きながらイラスト中。
今から彩色にはいりまーす。
じゅんじゅんの声は素敵だね!

実はキャラソン両方ともだいすきです^^
スザクくんの歌も聴きたかった…な…。
まあ、セイント○ーストの歌聴いて我慢する事にします。

ルルーシュくんのお手々は思わず触りたくなるような手にしたいです。
にぎっ。(それでは変態である)(否定はしない!)

プッチンプリンネタなスザルル1

プッチンプリンネタの漫画です。
とりあえず出来上がってるページだけ上げておきます。

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Scan10016.jpg


Scan10018.jpg


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トーン貼るつもりは、最初から、無いです…。
何ページになるかな。一応続きます~。

デスクトップバトン。

1 あなたのデスクトップを晒して、一言どうぞ。


↓現在の私のデスクトップはこうです。(公式画像使用な為、一応畳んでおきます)
more...

これでお互い様だと判じられるだなんて、心底、心外だ。(スザク)

同ネタ多数かとは思いますが。
ぬる~いギャグだと思って読んで頂ければ幸い。



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普段自分を取り繕っている人に限って、素の部分が大概抜けているのは何故なんだろう。
人の性格と本質って、案外逆な事が多いよね。
性格、性質、本質。似ているようでいて、どれも違う。

間近でルルーシュを見ていると、とにかくよくそう思う。
何故ならルルーシュは、「根が良い人に限って殊更悪ぶってみせる」という、生きた見本のような男だから。
とはいえ、まあ、嘗てはゼロであり、今は世界の頂点に君臨する独裁者で、悪逆皇帝として名を馳せている君を悪じゃないなんて口が裂けても言わない。
君は悪だよ。れっきとした。

ゼロだった時でさえ、強盗と強姦以外の悪事は全てやってのけてたの知ってるし。
そんな相手にこんな事言うのも、かなり今更かとは思うけど。

でも、ちょっとおかしいんじゃないかな。
っていうか、僕も人の事言える立場じゃないけど、ルルーシュはとにかく極端だと思う。
泥棒とか放火とかよくありがちな悪事だけすっ飛ばして、ありとあらゆる悪事の筆頭である「殺人」にだけはたんまりと手を染めてる辺りとか。

僕は君のそういう悪の部分こそがゼロなんだと思って、「ルルーシュ」から「ゼロ」の部分だけを取り除かなきゃと思っていた事さえあったんだよ?……それも、割と本気で。
それもこれも、素のルルーシュがどういう人間なのかって事を、小さい頃からよく知ってたからなんだけど。

それなのに、思えば君、随分筋金入りの悪(ワル)になったね、ルルーシュ。

「取り繕っている」という言葉をものすごく分かりやすく言ってしまえば、要するにそれは「カッコ付け」という事になる。
短所含めた本性を対外的に隠すのは、弱味や弱点を知られたくないからこその行動だ。
でも、「隠す」という行為そのものが、実は隠している部分がどこで、何なのかを、逆に明白にしてしまう事もある。

要するに、隠そうとすればする程、隠している部分が際立っちゃうっていう意味だけど。

ドジとか迂闊とか抜けてるとかいう単語は、普段はルルーシュだけにしか適用されないと思ってる。
僕は人から「天然」とは言われても、間抜けっぽい印象だけは抱かれない。そういう自覚があった。

何故かって?
それはね、人は見た目だけで人を判断する程、馬鹿な生き物じゃないからだ。

その証拠に、どれだけ高飛車だろうが不遜だろうが人を人とも思わない態度とってようが、ルルーシュはとにかく人から好かれてた。
学園の生徒全員がルルーシュに参ってたしハマってたと思う。これは語弊なんかじゃない。事実だ。
そもそも、非公認ファンクラブの人数が優に100人越えてる時点で異常だよ。
君、役者かタレントにでもなれば良かったのに。

要するに、僕が何を言いたいのかっていうと。
常にそんな風にカッコ付けてるルルーシュだからこそ、たまに垣間見られる抜けた本質が余計に目立つって話。

隠そうとするものの方が目立ってしまう。何故かいつも。
君の中に居る君がどんなに繕っても隠しても周りに見えていたように、僕の中に居る俺も、周りの人達の目には透けて見えていたのかもしれないね。


僕は多分、君と同じように、本当はあるものを隠そうと思っていたんじゃなく、本当はあるものを無いと思い込んでいただけなんだけど。
でも、そんな君と僕との違いはきっと、意識して人には隠さなきゃと思っていたものが、真逆だったって事なんだ。


だから、まさか、迂闊としか言えない大失敗をやらかすのが君ではなく自分の方になるだなんて、僕は思いもしなかった。



「行くぞ。我が騎士。枢木スザク」
「イエス!マイ・マジェスティ!」



それはあまりにも、勢いの良すぎる間違い方だった。




……訂正?


そんなの。




出来る訳ないよ。





*********************************



僕はこういう時、君のようにうろたえたりなんか、絶対にしないよ?
(文章としては間違ってない。だから訂正なんかしない!)



~追記もといメモ~

「自分の中には善意が無い(寧ろ悪意と復讐心の塊だ)」と恥じるルルーシュと、
「自分の中には悪意が無い(理想や正しさに従順だ)」と信じたがっていたスザク。

自分の中にある悪意を隠そうとしていたルルーシュと、
自分の中にある善意を人が理解する必要は無いと隠していたスザク。



*****************************


「…………」
「………………」
「…………………おまえ…」
「………………………どうしたの?ルルーシュ」



「頼むから、今の……絶対に、人前では言うなよ?」

「イエス・ユア・マジェスティ!」


******************************


たったひとつの単語を置き換えただけで、もう、なんか大変なことに。

綺麗なお兄さんは好きですか?

Scan10017-2-s.jpg

的な……絵になってしまった。
背景入れようかと思ったけど、眠すぎてパソ前でガックガクになってたので無理でした。
SAIで主線描くとアニメ塗りしやすい事に気付いたよー。
ルルーシュくんは黒髪なので、線見えづらくて塗りにくいですけども。
もしかしたらあとで背景入れるかもです。

ところで、今日はスパコミなんですね。
前ジャンルの時はそれなりにイベントにも出てたんですけども、今はオフ活動してないのでイベントに出かける事自体全く無くなりました。
一応札幌市在住なんですが、市内でもイベントはやってるんだろうなぁ。
主に萌え充電はネット内のみなので、読むのは小説に偏りがちです。
素敵御本が読みたいな!

お絵描き中。

カラーやってます。
キムタカ様リスペクツなあまり、ちょっと線画の線を変えてみようかと画策中。
似る気がしないどころか道のりはてしなさすぎる。
GW中にカラー何枚UP出来るのだろうか…。

************

下描き~線画中↓
kyap4.jpg


線画のみの状態↓
kyap5.jpg

************

アニメ誌とにらめっこである。
鉛筆線太すぎると切り絵になってしまう…!ハラハラです。
かわいいルルーシュが描きたいよ!

まさかの。

ikinari.jpg

ルルbotとスザクbotと話がしたくて…。
カッとなってつい作ってしまった。まだ誰にも教えてないよ。

つか、スザクくんからは返信来ないのに、陛下めっちゃ即レスです。


しかも、なんと話しかけて二言目でたらされた!

この人たらしッ!!wwww



まさかツイート二言目で「好きだ」って言われるだなんて…!
なんというタラシテク炸裂。(でも「好き系」直接ワード投下な辺りがやっぱりルルーシュ!)

ある友達との会話3(※実話ネタです)

実話ネタ第三弾です。
スザクがかった友人のアレな発言を漫画にしたものです。

漫画量産中な為、きりが無いのでトーン貼るのは諦めました…。
ペン入れだけは終わってたけど、改めて見てみると既に絵が変わってきているのが分かります。
自分にだけ分かる違いならいいんですけども!


*************


Scan10014.jpg

Scan10015.jpg

前回の辺りから「この人、たまに言う事がホントなんかアレだな…」(明言は敢えて避ける)とは思ってましたが。
まさか、公衆の面前でブチかまされるとは思ってもみませんでした。

*************

つか、ホンットーーーに言うんですよ?こういう事。素面で!
それも心の底から本気で言ってるので、私を含めたその場にいる誰もが突っ込めないんですよ?
すごいでしょ!?

しかも、口調とか話し方とか声のイントネーションまで似ているので、まじでリアルスザクすぎます。
結構付き合い長いのですが、昔からこういう歯の浮く台詞を普通に言う人ではありました。
……が、この手の台詞を言われる度に、「わざとじゃないんだよな!?」って何度確認したくなったか分かりません。(言動がスザクさんに被っている事に気付いてからは特に)


余談ですが、A子との初対面時、実はいきなり胸倉掴まれて喧嘩吹っかけられてるんですよね、私。
私の何かが気に障ったらしいのですが、それが今を遡る事10年以上前の話。
当時、確か中学生くらいの時だったと思いますが、ぶっちゃけ第一印象は最悪でした。

しかし、その数年後。
共通の友人からの紹介で再会した時には、一体何が切欠になったのか、彼女はすっかり丸くなっていました。

もうね、ほんと、被りすぎ!


そして、そんな彼女の住むアパートの部屋番号は、何故か私の誕生日と同じである。
こういうのも、運命って言うんですかね?

プロフ

夕希(ユキ)

Author:夕希(ユキ)
取扱:小説・イラスト・漫画

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