12/30のツイートまとめ

toychest0308

@placebo_lab 見た目よりも中身、というのは今の時代既に贅沢だよね!^p^ 絶滅危惧種は絶滅危惧種と番いになるものなのだ、わかっている……。
12-30 21:08

@chacha_tan おかえりー!l・ω・´)ノ お正月準備大変だったね! 9時にいます★
12-30 21:07

@placebo_lab 見た目は清楚可憐でも口を開くとどぎついギャル語なんだろ。認めん、認めんぞwwwwww(゚Д゚) スーパースターは手の届かない存在だからこそスーパースターなのだよ。
12-30 14:32

兵長とルルーシュが居てくれればいいのにー! そしたらすぐに片付くよ!!!
12-30 14:11

@placebo_lab スーパースター!懐かしいwwwww 可愛いロマンスグレーは清楚可憐な女子高生と同じくらいの絶滅危惧種だと思うけれども、夢を見るのは自由だよね……!!
12-30 14:10

私のお掃除はゴミとそれ以外を分別することから始まる。基本的にゴミは片すけれども、一年の間に「これはゴミじゃない」と思っていても実際はゴミだったというものがある筈。埃という埃、汚れという汚れを削いでそれらを全部駆逐すれば我々人類の勝利だ。
12-30 14:09

@placebo_lab 比較の対象がおかしい。^p^ それは福山雅●と縁がある筈なのにまだ出会っていないだけ、とかいう友達の言い分に限りなく等しい(笑) 確かにこの世のどこかにはいるだろうが会える確率の問題や。
12-30 14:05

さあ……駆逐してやる。大掃除の時間だ。(ゴミ袋片手にマスク装着しつつ)
12-30 14:00

@placebo_lab わろたwwwww 何も現実的じゃない!何も!(笑)
12-30 13:57

@placebo_lab わかりすぎるぞ……(´・ω・`) 面倒くさがりが自発的な行動に移るためには何らかの動機や縛りが必要だよね……。※自分管理人は自分です。
12-30 13:56

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12/29のツイートまとめ

toychest0308

胃袋たぷたぷするー。すかいpタイムりだつい!
12-29 21:00

@ST_aine あれリプ来てない?と思ったらそういう事情だったのですね……//// つい先ほど視界に映るなと言って頂いたばかりでございます……。
12-29 20:59

@ST_aine 蹴り飛ばしたその爪先が汚れたじゃないかぐらいの勢いで。ええ。いちモブとしての誇り……† ゴミ屑扱いは我々にとっては御馳走でしか。
12-29 20:51

ほんと……ほんと台詞増えて欲しい。でもそう易々と望みには応じないツンでも構わない。ツンデレのデレはるるしゅにで結構ですツンドラたまらん鼻血出る。
12-29 20:47

オタコムさんどうなされたの。
12-29 20:42

@520_RE ルルーシュ以外のメスをゴミとしか思ってないセブン様たまらん……((((´Д`))))
12-29 20:42

@ST_aine 震えますよね。おそろしいbotですよこれ。
12-29 20:42

ハアハアしすぎて呼吸困難に陥った。ルルーシュいつもこんな言葉責めに耐えてるのかすごいな!!!
12-29 20:41

@ST_aine さあ!さあ!!! 一緒に萌えましょうずくっっっっそ萌えますよwwwwwww
12-29 20:40

おそろしいbotだ……。
12-29 20:39

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12/05のツイートまとめ

toychest0308

@popo_ta なにこれキャワユイ!!目の色めっちゃ綺麗だね!(・∀・)
12-05 23:18

@te_deum おかえりー!苦行おつかれさま!_(???`_)⌒)_
12-05 23:17

@placebo_lab majide?なんかいいなぁそういうの!お酒がなお美味しくなりそう?(°▽°) アクアリウムちゃんとしたの見るの初めてだから楽しみ!誘われてなかったら札幌にも来るってことさえ知らなかった~!懐かれてるというか、今バイトさんいないから余計にね!ww^p^
12-05 16:39

じゃねったさんリスト無双なう。ルルチュかわゆし。
12-05 16:25

@placebo_lab じゃあ年始の方がいいかな~、どのみちお酒飲むし混んでるかどうか考えてたらキリないしw 社長ね、最近はおっさん的な可愛げよりもウザ度の方が増し増しですことよ。ケイナが来たら全てが解決する!!\(^o^)/
12-05 16:21

@lelou_chu_bot ルルーチュお誕生日おめでとう! 日付変更後までそっと見守らせていただくね!l・ω・´)~?
12-05 16:18

気付いたら五万ついーと超えてた。数えてみたらるるしゅのトレンド入り祝ってるツイートが五万ツイート目だった。いい感じ!
12-05 16:10

@popo_ta るるしゅのだったらさっさとスザクの突っ込んでる。三十分後には二ラウンド目に突入してるから。
12-05 16:09

@popo_ta るるしゅのじゃなくて申し訳ない……それは入れられない。
12-05 15:04

@popo_ta 破廉恥罪でつかまりますな!!!
12-05 15:04

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夜空のゆりかご(スザルルC・2013年ルル誕)


 C.C.は「遂に来たか」と思った。
 意外にも頭を下げてきたのだ、ルルーシュに負けず劣らずの頑固者が。
 ルルーシュ絡みだろうとは想像がつく。何より、この男から持ちかけられそうな話といえば二つに一つだった。

 男は奇数、女は偶数。人付き合いにおける法則はこれだという。では、男女混合の場合はどうなのか。上手く居続ける為にはやはり偶数で集うのが望ましい。奇数で集まった場合、ほか二人の仲が良ければ残り一人があぶれてしまう。
 三人で暮らすことになった時、ルルーシュも危うい均衡だと解してはいた。とはいえ然したる懸念も抱かず、深刻な仲違いも起こさずやってこられたのだ。自分が「二、あまり一」の「一」にならずに済んでいたからかもしれない。ちなみに今のルルーシュとスザクは友達だった、あくまでも。

 帰宅したルルーシュが居間で目撃したものは、仲睦まじい友人という域をやや逸脱した二人の姿だった。同居人その一とその二。ソファに腰掛けているスザクと、向かい合ってスザクにまたがるC.C.。抱っこちゃん人形よろしく互いの背に腕を回したまま、二人はドアを開けるなり凍りつくルルーシュにのんびりと話しかけてくる。
「「おかえり、ルルーシュ」」
 完璧なユニゾンだった。重なる声に返事も出来ず、その場で棒立ちになっていたルルーシュは平静を取り戻すのにたっぷり三十秒を要した。その間、ただ真っ白になっていた訳ではない。十五秒ほど経過した辺りでルルーシュの頭は自動的に回転を始めた。
 からかわれている、きっとそうだ。でなければもっと隠す筈。だが普段、恥じらいの欠片もないC.C.とてこれでも女。スザクとて健常な男子であれば欲の一つくらい持つだろう。仮に深い関係になっていたとして、だからどうした。止め立てする権利なんて自分には無いのではないか。
 に、しても。いつからだ。
(秘密にしていたなんて水臭いじゃないか、なあ。もしかして今からそれを打ち明けようとしているのか?)
 通常、類稀なる優秀な頭脳に解けない問題などない。だが設問自体を読み違え、途中式が公式通りでなければ正解には辿り着けないものだ。
(この俺が動揺している? まさか)
 ルルーシュは鼻に抜いて笑った。明らかに強がりだ。完成された数式は美しいというが、ルルーシュのはごちゃごちゃだった。
「おい、今にも泣き出しそうだぞ」
「なっ!?」
 キスしそうなほど顔を寄せ合ったままC.C.が囁き、ぎょっと目を剥くルルーシュをスザクが一瞥する。「ああ」と一拍置き、視線を逸らしたスザクはC.C.に向かって言った。
「ルルーシュはイレギュラーに弱いから」
 混乱しているだけだよ、という口ぶりに混乱させられている当のルルーシュは呆然としていた。ひとまずドアを閉め、やり場のない感情を吐き出しにまっすぐキッチンへ向かう。外に出ている間、無性に喉が渇いていた。冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを取り出し半分ほど煽る。
 はあっ、と吐息するルルーシュをC.C.とスザクはじっと観察していた。リアクション待ちのつもりだろうか、ぴったりとくっついたままどちらからも離れようとしない。
(そんなに仲が良かったか? こいつら)
 シュールな光景だ。知らぬ間に宗旨替えでもしたのだろうか。もともとこの二人は折り合いが悪く、急接近する動機も特になさそうに見えていたのに。
(話だけでも聞いておくか)
 人心地つき、ルルーシュが余裕を取り戻しかけたその時。
「君もこっちおいでよ」
 スザクが手招きしていた、膝上にC.C.を乗せたままで。
 ルルーシュは二人を見比べつつ再度混乱に陥った。まず降ろせ、その女を。「というか降りろ」
 気付けば考えの通り口走っていた。
「いいから来いよ、ルルーシュ」
 C.C.を降ろすことなくスザクが自分の横をポンポンと叩く。ルルーシュが『降りろ』と言った時、薄く笑ったように見えたC.C.は真顔に戻っていた。
 このおかしな状況に伸るか反るか。暫し逡巡したものの、ここで引くのは負けたようで少々癪に障る。ルルーシュはペットボトルを持ったまま静々と歩み寄り、まっすぐ見上げてくるスザクの隣にポスンと腰を下ろした。
「おかえり、ルルーシュ」
 改めてスザクが微笑む。「まだ君のただいまを聞いてないな」
 C.C.もスザクに凭れたまま話しかけてきた。「お疲れ様、ルルーシュ」
 ルルーシュは黙って二人を見つめ、「これは新しいお遊びか何かか?」と訊ねてみた。スザクはC.C.と顔を見合わせてまた振り返り、「そうだよ」と気軽に答えてくる。
「ルルーシュも一緒に遊ぼう?」
 楽しいぞ、とC.C.が語尾を引き継いだ。……何故だか気が抜ける。
 ふとルルーシュは、つい先日この二人が派手に喧嘩していたことを思い出した。調理中にキッチンに立つ自分の後ろでタバスコのビンが飛び交い、罵声の応酬にたまりかねて雷を落としたことも。
 今この三人が住むマンションの家主となっているのも、日々の食事作りを担当しているのもルルーシュだ。スザクや自分の分だけでなく、もちろん毎日のようにC.C.が食べるピザも作ってやっている。腕は職人というより達人の域だった。スザクも家事が出来るので手伝うのだが、C.C.は基本的に横着なので呆れるほど動こうとしない。やっていることといえば食っちゃ寝と無駄に部屋を散らかすことくらいで、下着の洗濯をさせられたスザクが苦言を呈したのが争いの発端だった。
「反省したんだ、ルルーシュを困らせないようにしようって」
 ね、とスザクが緑の髪を梳きながら言う。優しくロングヘアを梳く手を許してC.C.はルルーシュへと腕を伸ばした。
「慰労のようなものだ。今まで通りピザは作ってもらうが」
 尊大な物言いにルルーシュが苦笑する。眉尻を下げた淡い笑みはほどける花弁のようで、傍で見ていたスザクは眩しげに目をそばめた。頬に触れてくるC.C.の手を黙って受け入れ、ずっとこちらを見つめているスザクをルルーシュも見つめ返す。
 異性と触れ合っていた頃のスザクをルルーシュは知らない。いや、知ってはいても実際に見たのは初めてだった。
 C.C.の髪を梳きながらもスザクはルルーシュから視線を逸らそうとしない。片腕は相変わらず丸みを帯びた腰に回されている。思った以上に新鮮だ、女性に触れているスザクというのは……。そう思いながら、ルルーシュはC.C.の手に頬をすり付けた。
 女の手というのは柔らかい。耳をくすぐってくる指をルルーシュは好きにさせていた。スザクも愛玩動物を眺めるかのように戯れる二人の姿を楽しんでいる。
 ルルーシュはC.C.のことも好きだった、人として。彼女も同じように自分を好いてくれている――愛してくれていると言った方がいいかもしれない――ことを知っていたからでもある。
 そしてスザクも、そんなルルーシュの気持ちを知った上で三人暮らしを続けてきたのだった。

 廊下でまごつくルルーシュにスザクが立ち止まり、先にバスルームへと送り出す。後をついて行くC.C.に続き、三人分のタオルとガウンを用意してスザクも浴室へ向かった。この部屋を買う決め手となった広い浴室は三人一緒に入っても窮屈とまではいかない。当然という体で脱衣所へと踏み込んでくる二人にルルーシュは閉口していたが、大胆に脱ぐ二人に気圧されて結局タオルを巻き付けたまま入ってしまった。
 いくら見慣れた女だろうと、至近距離で全裸になられれば落ち着かなくもなる。耳まで赤くしているルルーシュに引き替え、一度たりとも裸の付き合いなどしていない筈のスザクはごく平然としていた。黙々と身体を洗うルルーシュの脇腹をからかい混じりにスザクが突っつく。C.C.はじゃれ合う二人を余所にバスタブを占領し、身体を流し終えて入りたがるスザクに黄色いヒヨコの玩具を取りに行かせていた。
(いつの間に買ったんだ、あんなもの)
 無駄遣いした分は小遣いから差っ引いてやる。棚にずらりと並ぶバスグッズを眺めながら、ルルーシュはタオルでしつこく下半身を隠していた。が、頭を洗っている隙に誰かに取られてしまう。「返せ」と手をばたつかせていると、これまたどこからか解らない方向から勢いよく湯が飛んできた。
 パシャッ! パシャッ!
 頭にかかって泡が乱れ飛ぶ。一方からだけだったのが今度は二方向からになり、合間にカチャカチャとプラスチックのような音が聞こえていた。泡だらけになったルルーシュの頭めがけて一直線に、ピュッと飛んでくるのは水鉄砲か何かに違いない。
「お前らいつの間に……っ、やめろ!」
 ルルーシュが抗うたびに忍び笑う気配。「やめなよC.C.」とスザクが諌め、やっとお湯攻撃が止まった。途端、ターゲットが別の相手に移ったようだ。「うわっ!」とか「目はやめて!」とか、虐げられるスザクの悲鳴が聞こえてくる。
 湯船を出入りする水音と背後で行き交う足音。その中でルルーシュがシャンプーを追加して洗髪を再開する。たびたび頭に固いものが突き刺さってくるのでルルーシュは苛立っていた。何を刺されているのか解らないが、指ではない。無視してすすいでいるうちに悪戯は収まり、やがて二人とも大人しくなった。
「何してる、なんだ今の?」
 トリートメントのポンプを押しながらルルーシュが顔を上げると、ちょうど鼻先の辺りに虹色の丸い物体がふよふよと漂ってきた。
「懐かしいだろう?」
 赤いストロー状のものを咥えたC.C.がふうっと息を吹き込む。
 量産されていたのはシャボン玉だった。浴室全体がメルヘンチックな空間に変えられている。つい魅入ってしまったルルーシュは爪先へと緩やかに落ちていくそれを無意識に目で追っていた。パチンと弾け、シャボン玉が消える。
 はっと我に返り、ルルーシュは鋭くC.C.を睨んだ。
「お前か。さっき刺しただろそれで」
 C.C.はニヤリと笑ってスザクに視線を送った。「私じゃないぞ」
「嘘だ!」
 スザクが慌てて言い返す。
「犯人はC.C.だ、騙されるなルルーシュ!」
 溢れ出た湯がルルーシュの足元まで流れてきた。真面目くさったスザクの顔は、しかしタイミングよく頭の上からずり落ちてきたルルーシュのタオルに覆われてしまう。素っ裸の覆面姿が異常に怪しい。ルルーシュは思わず噴き出した。
「喧嘩両成敗だ、疑わしきは罰する」
 悪い笑みに切り替えたルルーシュがシャワーヘッドを二人の方に向ける。そして、湯温を「冷」にしてハンドルを思い切り捻った。
「うわ冷たっ!!」
「やめろ水はよせ!」
 真水を浴びせられた悪者達が湯に沈んでいく。ルルーシュはシャワーを二人に向けたまま悠然と前髪をかき上げた。
 無意味に楽しい。やたらとハイになっている。奪われたハンドタオルがバスタブに浮いていて、けれど取り返そうとルルーシュは思わなかった。C.C.の水鉄砲から逃れようとしたスザクの仕業に違いない。
「反省したか?」
 勝者の笑みを浮かべながら、ルルーシュはふと考えた。
(このまま浮いてこなければ、二人とも死んでしまうだろうか?)

 ひとしきりふざけ合っているうちにルルーシュの羞恥心は大分薄まっていた。浴室のライトが少し暗めにされていたのが良かったのかもしれない。後片付けは大変そうだったが、そこはスザクが気を利かせた。出しっぱなしの玩具を片付け、乾燥機のスイッチをドライに設定し、絞ったタオルで一通り壁の水気を拭き取っている。
 先に出たC.C.とルルーシュは着心地の良いパイル地のガウンに袖を通し、リビングでのんびりと寛いでいた。
「ハーゲンダッツ」
 冷蔵庫に向かったルルーシュにC.C.が声を掛け、要求通りルルーシュが投げてやると続けて「スプーン」と訴えてくる。
 冷えたミネラルウォーターを取り出したルルーシュはキャップを開けてカップボードの引き出しを開いた。デザートスプーン片手にリビングへ戻ったところでスザクが濡れた髪を拭きながら上がってくる。
「お前は?」
 ルルーシュが訊ねると、ピタリと止まってスザクは腹に手を当てた。
「お腹すかない?」
 口にしてからルルーシュの手元を見て、「あ、水欲しいな」と呟く。一口飲んでルルーシュが渡してやると、アイスを包み持って溶かしていたC.C.がルルーシュの持っていたスプーンを手から器用に引き抜いた。
「出来合いのものならあるぞ」
「それでいい。ナッツあったっけ?」
「ナッツ?」
 怪訝そうに眉を寄せるルルーシュに片目を瞑り、「寝室で飲もうよ」とスザクが言い出す。アイスの蓋を開けているC.C.にも同意を求めるように顔を向けたので、C.C.はルルーシュを見上げながらアイスを一口運び、無言でスザクへと親指を立てていた。


 マンション最上階の角部屋。たったの三人で住むにしてはかなり広い造りだ。
 ルルーシュがここを買い取ったのは贅沢を好んでではなく、単にプライバシーとセキュリティを重んじてのことだった。嘗てのエリア11、トウキョウ租界。この地が日本という国名を取り戻したのは遥か昔の話だ。
 僥倖か奇禍か。長い永い時を生き、渇求を抱いて再会を果たした。ルルーシュが英雄の剣に貫かれる日まで生を共にした人らは皆、天寿を全うして思い出の中へと溶け込んでいった。
 ゼロ・レクイエム以降のルルーシュはC.C.と旅を続け、徐々に平和を取り戻していく世界の傍観者となった。そのC.C.とも百数十年ののちに自然と連れ添うのをやめ、ルルーシュは一人きりで二世紀目を跨いだ。
 スザクがこの世を去り、ナナリーを喪ってからルルーシュは何度か餓死した覚えがある。欲という欲が消えてしまったのだ。ゼロとなったスザクと同じだった。ルルーシュのように食べなくなった訳ではなくともスザクの心は半分死に至り、約束を果たす器でさえ居られれば良いと考えて無機質な人生を送った。
 心は穏やかに凪いでいただろう、苦悩の元凶であった自分自身はルルーシュと共に逝ったのだから。けれど、ルルーシュとの約束を果たす為だけに生きたスザクは最後の最期まで、ルルーシュの望み通りに生きることはなかった。わけてもスザクという人間はルルーシュにとって、思い通りにならないものの筆頭にいた男だ。
 スザクは死ぬまで償った。ルルーシュは既に死した者として、存命中のスザクに会いに行くことを決して己に許さなかった。本末転倒の結果だ。もう生きていると嘘を吐くのは嫌だったからこそ、あの無謀ともいえる反逆に踏み切ったというのに。
『成すべきことは成した。生きた証も立てられた。あとは無為に生き続けていくだけ……。これも罰なのか? 死に損なったことだって――』
 痩せ衰えた身体を寝台に横たえたまま『あいつに顔向けできない』とルルーシュが嘆く。スザクが死んだ後も拘りを捨て切れず、強い自責の念に囚われ続けていた。人里離れたあばら家で虫の息。途切れ途切れに苦しげな喘鳴が響く。
 悪業を一身に背負い、平和の礎となった二人の少年。十八歳の彼らが出した結論はあまりに正しく、また世界は、全てが計算の裡に収まり切るほど単純でも都合のいいものでもなかった。不老不死の呪いも同じ。ルルーシュ自身が受けると決めた通りの罰にならなかっただけだ。
 寝台の縁に腰掛けていたC.C.は背を向けたまま俯き、穏やかに尋ねた。
『それも罪なのか?』
 喘ぐような呼吸の狭間でルルーシュが薄く嗤う。
『皮肉なものだ』掠れた自嘲は譫言のようだった。『罪じゃないのか? 大勢殺してきた俺が生き延びているのは』
 問い返しながらルルーシュは咳き込んだ。C.C.にとっては繰り返し耳にしてきた台詞だ。
『相変わらず自己完結が得意か、ルルーシュ』
 ……答えはなかった。喘鳴を残してルルーシュが昏睡に陥る。不意に静まり返った背後へと振り返り、返る声は無いと知りながらC.C.は呟いた。
『似た者同士だな』
 その言葉が届いていたかどうかは解らない。もう暫くすれば呼吸が止まるだろう。一度死んで、また生き返る。
『馬鹿は死んでも治らんらしい』
 コードを継承した者はCの世界の先へは行けない。百数十年間見続けてきた顔を見下ろしながらC.C.は細く吐息した。やつれているとはいえ綺麗な面差しだ。苦悶の表情を浮かべていた名残だろうか、眉根だけが寄せられているのが勿体なく思えるほどに。
『マゾには付き合い切れん』
 目覚めを待たずにC.C.は去った。
 ルルーシュは精神世界から帰ってくるだろうか。やろうと思えば引きこもることも出来る。但し、覚醒するたびに後悔するのが関の山だ。
 生に縛られた二人。ルルーシュは父、シャルルのコードを受け継いだ。何の覚悟も持たぬまま蘇った時の絶望は、瞬く間に死ねない未来への不安で塗りつぶされていく。この先もし核戦争が起こっても、掴まって実験台にされたとしても、たとえ地球が滅んで無酸素状態の宇宙に放り出されたとしても死ねないのだ。その不安と恐怖は時を選ばず浮き上がり、絶望よりもいや増して、生きる苦しみに色濃い影を落とすのだった。
 C.C.も経験したことだ。だがルルーシュほど潔く諦めてしまえる訳でも渇望を捨て切れる訳でもなく、シアン化合物をロケットペンダントに仕込んで生きる自殺志願者の如く、呪いとしかいえぬ生に終止符を打てるいつかを頼りに、百万の諦めを引きずりながら生きるしかなかった。
 数週間後。幾度か死んだルルーシュが幾度目かに目覚めた時、隣に立っていたのは消えた筈のC.C.だった。そしてルルーシュは、全身を蝕む壮絶な痛みに耐えていた。
『死ぬのは飽きたか? そろそろ適当に生きるぞ』
 ぞんざいな言い方だった。「これから買い物に出かけるぞ」とでも言い出しそうな口調。
 ルルーシュは死ねないことを身を持って思い知った。蘇った直後は苦痛を感じていても、身体は勝手に回復し続けてしまう。その途中で目覚めてしまったのは今回が初めてではない。
『懲りない奴だ』
 息も絶え絶えなルルーシュをC.C.は冷ややかな目つきで眺め下ろしていた。超然とした琥珀色の瞳――何世紀にも渡って生き続けてきた者の。その瞳に自己憐憫に浸る甘さを見抜かれているようで、ルルーシュは久々に烈しく苛立った。
『何をしに来た』
『御挨拶だな』
 淡々と言い返しながらC.C.が寝台に腰掛ける。死ぬのも生きるのも億劫で、ルルーシュはとても相手をする気にはなれなかった。絶望の先には諦めがあり、諦めの彼方には無気力が横たわっている。無気力の果てにあったものは緩慢な死だったが、死にさえ見放され拒絶された現実はどこまでも残酷だった。
 一息ついてからC.C.が切り出す。
『スザクを見つけたぞ』
 一瞬、名前を聞かされてもルルーシュはピンとこなかった。蹲ったまま身動きも碌にとれず、生ける屍そのもののように呆けている。
 なにせ、たった今まで死んでいたので、
『早く起きろ。明日からこの家は取り壊される』
 そう急かされても何とも思わなかった。
 起きてどこへ行く? 行く場所も目的も何も無いのに……。ルルーシュの中に湧いてきたのは純粋な怒りだけだった。
 忌々しげに吐き捨てる。『死ぬ方法が見つかったという意味か?』
 こいつはどこかで死んできて、運よくスザクに会えたのだろうか?
 今になって思えばこれほど頓珍漢な質問もないだろう。けれど、その時のルルーシュは心の底からC.C.を羨んだものだ。
『馬鹿かお前は』
 呆れの中に幾許かの哀れみを滲ませてC.C.は素っ気なく告げた。『生まれ変わったようだ』
 驚きにルルーシュが目を瞠る。怒りが霧散したのも束の間、鈍痛に苦悶の声を噛み殺して海老のように背を丸めた。荒い呼吸が数回。どうにか枕に頭を戻し、茫洋とした瞳を壁に向けてルルーシュが鼻で笑う。
『……だから?』
 C.C.が予想した通りの答えだった。『冗談なら止してくれ』と。
『冗談は嫌いだ』
『冗談だろう。それもとびきり笑えない』
 押し黙るC.C.にルルーシュが視線を向ける。
『まさか会いに行け、なんて言うつもりじゃないだろうな?』
 内臓の痛みも相まって目付きは剣呑だ。睨まれたC.C.はそれでも、堪え切れず緩むルルーシュの口端を見て不憫に思った。緩慢な動作で額の汗を拭い、震える声を誤魔化しつつルルーシュが懸命に嘯く。
『新しい人生を生きるべきだ、だったら……。記憶があろうと無かろうと、関わるべきではない』
 まごうことなき本心だった。口先で幾ら嘯こうとも。
 生きている限り会いたい想いは消えない。消えることはない。せめて一目だけでもいい、元気な姿を見たい。焦がれるように願い縁を求めてしまうのは、生に意義を見出せなくなった者の足掻きなのだから。
 未来永劫死ねない身体。思い知ったからこそルルーシュは拒むのだろう。再び別の形でスザクを巻き込むまい、もう二度と関わってはなるまいと。


 赤ん坊の頃から生きている実感のない人間なんて果たしてこの世にいるのだろうか。
 思春期に「自分は変――という名の特別な人間」という、ごくありきたりな空想に耽るのであればまだ解る。しかしスザクは何の原因も根拠もなく、この世にタイムスリップでもしてきたのではないかと自身を疑っていた。
 生まれから生い立ちに至るまで何にでも違和感が付きまとう。違うと頭では解っているのに、『僕の生きていた世界では戦争をしていたような気がする』とか、『よその国から来た幼馴染がいたような気がする』とか、訳の解らないことばかり言うスザクに両親は大層手を焼かされたそうだ。
 それでいて、幼馴染の顔も名前も思い出せなかった。『いないんだよ』と幾ら諭されても悲しげにするばかりなので、ただ想像力豊かなだけなのか、でもやはりこの子はおかしいと危ぶんだ両親に精神科へ連れて行かれたこともあった。スザクはおぼろげにしか記憶していないのだが、その時下された診断名は『離人症』。――小学校五年生、スザクが十歳の時だった。
 何々な気がする。その“何々”の部分だけが不自然に欠けていて、分厚い膜で覆い隠されているかのよう。
 まだ口もきけぬ赤ん坊の頃から兆候はあった。両親が呼びかけても笑い返さず、ただ不思議そうな顔で見たという。
 まるでビー玉のような、他人を見る目。魂の抜け殻のようで心ここにあらず。おおよそ自我といえるものが感じられなかったと聞かされた。いつも外ばかりぼんやりと眺めていて、常にこの世そのものに居心地の悪さを感じているようだった、と。
 疎みたくなくともそんな我が子を薄気味悪く感じてしまうのは無理もなかったかもしれない。中高一貫の男子校に進学したスザクは高校に行ってから、親許を離れて寮に入った。その頃には二人目の子供――スザクからすれば妹が生まれていたので、もともと女の子を欲しがっていた両親は幼い娘に夢中になっていた。
 桃色の髪の可愛らしい女の子だ。外見はスザクにそっくりで、ふわふわの髪も大きな瞳も、色こそ違えどとてもよく似ていた。スザクは何の気なしに、
『この子は大きくなったら僕と結婚するのかな』
 そう尋ねた息子を見た時の両親の顔は、今でもスザクの脳裏に焼き付いている。
 ……そんな出来事があって、スザクは何不自由なく一人で暮らしてきた。成長した妹は懐いてくれたが、その頃にはスザク自身「やっぱり違うな」と解っていたし、付き合っていた女の子も何人かいたので実家にはあまり寄り付かなくなっていた。
 頻繁に頭が痛くなり、それだけが悩みの種だったといえる。でも「もうすぐだ」という安心と確信がどこかにあって、もうじき、やっと本来の自分自身に戻れる――焦げつきそうな切なさの中でほとほとと涙しながら、やがて訪れるであろうその日を指折り数えて待ち続けていた。
 十八歳の誕生日。朝を迎えたスザクは生まれ変わっていた。
 一度死んだ訳ではなくとも全てを悟っていた。教えられた訳でもない、それでも解った。この身体は今の自分に戻るための器だったのだ。だから、今まで生きている実感が全然なかったのだ、と。
『ルルーシュ』
 ただただ、涙が零れた。
 ルルーシュはこの世にいない。ずっと昔にスザクが殺してしまった。
 でも、たった一つだけ希望が残されている。スザクがこうして生まれ変わったのだから、半身の彼も世界のどこかで生まれ変わっているかもしれない。
『俺は君の騎士だ』
 この身体に生まれついて初めて、スザクは「俺」という呼称を使った。なんだか不思議な感じがして(やっぱり「僕」でいいか)と思った瞬間、寮の部屋のチャイムが高らかに鳴り響いた。
『お迎えだ。わざわざ来てやったぞ』
 ドアの向こうに居たのは懐かしい顔。泣きべそで出迎えたスザクを見てC.C.は満足げに笑った。
『説明は不要のようだな』


「――酷いよな、もう。感動して泣いてるのに『汚い』なんて」
 半年ほど前の話に花を咲かせながら、寝室にこもって三人は飲んでいた。身体はともかく中身は全員未成年ではない。部屋の中央にはクイーンサイズのベッドが鎮座し、スザクのジム用具とC.C.専用のマッサージチェア、オットマンとセットになったテーブルが入口ドアの手前に置かれている。
 広々としたベッドの上でスザクは胡坐をかき、クッションに凭れ掛かったルルーシュの足を枕にしてC.C.が寝そべっていた。
 作り置きの料理やつまみがヘッドボード上の台に並べられ、長テーブルのようなそこには空になったワインやシャンパンのボトルも数本並んでいる。
 ラスト一本のコルクを抜きながらルルーシュはクスクスと機嫌よく肩を揺らしていた。スポンと景気の良い音がする。
「二百年経っても直らなかったんだ。これから何年経とうが、こいつの口の悪さはそのままだ」
 ルルーシュに注いでもらってからスザクがボトルを受け取り、自分以外のグラスにも注いでいく。
「改めて乾杯する?」
「何回目だ」
 台にボトルを戻すスザクにC.C.がすかさず突っ込む。幾つかアーモンドを掴むスザクにルルーシュは「いい」と首を振り、その膝でC.C.が代わりのようにあんぐりと口を開いた。スザクは苦笑混じりにルルーシュと顔を見合わせて、
「雛みたい。見て?」
 餌を与えるように一粒ずつC.C.の口の中に落としていく。小気味よい音を立てて咀嚼していたC.C.はスザクの指まで齧った。
「いったッ……!」
 懐かしい光景に思えてルルーシュがふっと微笑む。
「こいつの方が明らかにズボラだ」
 優雅にグラスを傾けるルルーシュの隣でスザクは呻いていた。猫がするようにC.C.が齧った指を舐める。そして、いかにも不味そうに顔を顰めた。もう、と不平を漏らしながらスザクが手首を叩き、残ったナッツを飛ばして自分の口でキャッチする。C.C.が雛か猫ならば、スザクはさしずめ犬だろう。
「相変わらず器用な奴」
 感心したルルーシュが皿からピスタチオを摘み、丁寧に殻を剥いていく。合図として一度スザクに翳し、天井近くまで放ってやると、スザクはまたも見事に口で受け止めていた。喉にストレートに入って噎せ返っている。注いだばかりのワインをスザクは一気に飲み干した。ほろ酔いのC.C.が意地悪そうな笑みを浮かべ、
「フリスビーをキャッチするのも得意だろう、今度買ってきてやろうか?」
「いらないよ、そんなの」
 茶化すC.C.に涙目になり、スザクが情けない顔で言い返す。ルルーシュはC.C.と目くばせを交し合いながら一緒にぷっと噴き出した。他愛ないやり取りが妙に可笑しくて、楽しくて嬉しくて、有難くて。肩を寄せ合いながら三人はいつまでも笑っていた。
 一番笑っているのはルルーシュだ。アルコールのせいだけではなく、この場の空気が常になくルルーシュを陽気にさせていた。
 どうしようもなく愛おしい。……なのに、ほんの少しだけまだ寂しい。
 この寂しさがどこからくるのかルルーシュには解らなかった。他の二人にしてみてもそうだろう。互いに口に出さずとも想いを共有出来ているし、その実感があるだけで充分だ。何の因果か偶然か、こうしてもう一度巡り合うことは出来たけれど……でも、しみじみと胸に迫りくる何かがある。
「ところでさ」
 と、笑いがおさまった頃にスザクが切り出した。
「君は覚えてる? 自分の誕生日」
 出し抜けに尋ねられてルルーシュはぱちくりと瞬いた。C.C.が「わからいでか」と起き上がり、ワインを喉に流し込む。
「あ――」
 思い当たったらしいルルーシュに微笑みかけながらC.C.と連れ立ってスザクはベッドから降りた。
「先に気付かれるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ」
「ここのはさすがに開けないだろう」
 口々に言い合いながら、二人して部屋の奥に設えられた簡易冷蔵庫へと向かっていく。そこから恭しく掲げられてきたものは真っ赤なリボンで飾られた上品な箱だった。
「開けてみて?」
 スザクに促されてルルーシュが箱を見下ろす。リボンの端をC.C.に持たされて緩く手前に引っ張ってみた。
 解いたリボンをよけるルルーシュを二人が見守っている。おそるおそる開いた箱から現れたものは、宝石のように粒ぞろいの苺がぎっしりと乗ったバースデーケーキだった。格子状のチョコが飾られていて、よく見るとところどころに細かい金箔が散らされている。厚めのプレートにはルルーシュの名前と祝いの言葉が優美な書体で記されていた。
 光る苺の赤が純白のクリームに映える。その美しさにルルーシュが魅入っていると、突然ふっと照明が落ちた。
「暗すぎだ、何も見えん」
 C.C.に言われてスザクが一旦眩しくなるくらいまで明るくする。再び暗くなっていく視界の中で、ルルーシュは夢うつつのままだった。向かいでぽっと火が灯る。C.C.が点けたライターだ。スザクがダイヤルを調節し、手元が見える程度まで明かりを落としていく。
 C.C.がカラフルなキャンドルを取り出して数字の先端に火を点けた。一の形をした緑のものと、八の形をした紫色のキャンドル。
 ルルーシュはそこでようやく、自分がまだ十七歳までしか迎えていなかったことを唐突に思い出した。数え年では十八だ。だが、正式には十七歳。スザクの誕生日をささやかに祝ったあと、翌々月の二十八日にはゼロ・レクイエムを決行していたのだから。
 今日は十二月五日――ルルーシュの生まれた日だ。
 小さな炎を灯した一のキャンドルがプレートの前に挿し込まれ、その横に八の字が並ぶ。ベッドに座ってケーキを覗き込むルルーシュの顔とC.C.の顔が煌々と照らし出されていた。スザクが足音も立てずに寄ってきて、ルルーシュの肩を後ろから抱きかかえる。C.C.が両手を打ち鳴らし始めると同時に、ルルーシュの耳元に心地の良い低音が流れ込んできた。

 Happy Birthday To You.
 Happy Birthday To You.
 Happy Birthday Dear Lelouch.
 Happy Birthday To You.

 朗々と響く歌声。一足早い聖夜が訪れたかのよう。
 ルルーシュが灯火を吹き消すとぱらぱらと拍手が鳴り響く。どこからともなくフォークを取り出したC.C.がスザクへと一本渡し、スザクが手前の苺を刺してルルーシュの口元へと運んだ。
 好物だった、ずっと昔から……。砂を噛むような思いでしかものを食べられなくなっていた頃、ルルーシュは自分の好物でさえ忘れていた。真っ赤に熟れたつやつやの苺。唇を開き、こんなものを食べるのは何年ぶりだろうと思いながらルルーシュは口に含んだ。甘酸っぱい果汁が口の中全体に広がっていく。C.C.がもう一粒、切り分ければ別のカットの上に乗りそうな部分から取ってきて、ルルーシュは一個目を飲み込んでからフォークの先に齧り付いた。
「美味いか?」
 C.C.に問われてこくりと頷く。溢れた汁を舐め取っているうちに残り半分をC.C.が食べていた。スザクが抱いていたルルーシュの肩を揺らし、
「これでやっと同い年になれたな」
 感慨深げに覗き込んできて、「でも、僕の方が半年お兄さんのままだ」
 言いながら抱く腕に力を込める。
 寄ってきたC.C.がルルーシュの頬に口付けて、頷き合ったスザクも逆側の頬に唇を押し付けた。代わる代わる交互に口付けが続く。掠めるような感触は羽のようだ。
 C.C.が箱ごとケーキを避けている間、スザクは示し合わせたようなタイミングでルルーシュをベッドに押し倒した。
 真上から見下ろし、密やかな声で囁く。
「昔は嫉妬したよ、君が選んだのはC.C.なんだって。僕と君が道を違えてしまったのも、C.C.がギアスを与えたせいだ、と」
 今は大丈夫。そう呟いてスザクが目を瞑る。瞬きを挟んで落とされた視線はルルーシュではなく、遠い過去を探っているようだ。深い翠が揺れる。呼び起こされた苦悩に。ルルーシュの紫も水気を含み、共振するように揺れ動いていた。
 規則正しく拍動を続ける心臓。ルルーシュのそこに手を置いたスザクが押し殺したトーンで言葉を紡いでいく。
「キスも抱き合うことも、もう二度としなくていいと思ってた。それだけの覚悟があった、共犯者になると決めた時から……。ゼロ・レクイエムの前夜でさえ、その判断は正しかったと疑わなかった」
 ――君もそうだろ?
 断定するように尋ねながらスザクはゆるりと首を傾げた。ルルーシュは無言で頷き、スザクの両頬を引き寄せて額を重ねる。
 絡み合う目線。互いに応えようと鼻先を触れ合わせる。スザクはルルーシュの胸元をきつく握り、戻ってきたC.C.へと視線を流した。先にルルーシュが手を差し伸べ、次にスザクが。二人に導かれてC.C.もベッドに上がった。隣に横たわるのを見届けてからルルーシュが口を開く。
「ゼロ・レクイエムで、俺たちは一つになった」
「……そして離れた」
 スザクの声音はひび割れていた。乾き切った響きが越えてきた年月の長さを物語る。ルルーシュの隣に寄り添いながらC.C.は粛として尋ねた。
「これで良かったのか?」
 スザクが神妙に頷く。納得したという表情でルルーシュは緩く吐息を漏らした。心臓の辺りを掴むスザクの拳を覆い、その上からC.C.が自分の手を重ねる。微笑を浮かべるスザクを見上げながらC.C.は「そうか」と呟いた。……つい先日の出来事を思い出す。

『協力して欲しい』
 意外、というほどではないのかもしれない。ただ「そっちを選ぶのか」とは思った。スザクとの間にはある種の隔意があったので、C.C.は正直すぐ頷く気持ちにはなれなかった。
 ルルーシュは今でも信頼しているのだろう、この男のことを。愛してもいる。唯一無二の親友、運命の相手、魂の半身として。
『あいつは死に損なった身だ。それでもか?』
 C.C.の問いかけにスザクは黙考していた。ややあって、静かに瞼を伏せる。
『枢木スザクは死んだ。今の僕も枢木スザクであって、そうじゃない』
 この男の言うことは抽象的で解りづらい。だが、とC.C.は悟る。見つめてくるスザクの眼差しは真摯だった。
『確かにな。以前のお前はもっと厳格だった』
 断言したに違いない。「たとえ幾度死んだとしても許される罪などない」と。ゼロ・レクイエムは二人にとって世界への償いであり、互いを赦す為の儀式でもあった筈だ。ルルーシュが何度か死んだことも予め伝えてある。
 それでも――。
『僕はルルーシュの騎士だ』
 君は盾だろ?
 問う声は嘗てのように当てつける響きではなかった。『有難う』とスザクが口にする。
『まだ言ってなかったよね、迎えに来てくれたお礼』
 そのことか、とC.C.は黙って聞いていた。スザクが押し殺した声で言う。
『大切な友達が死ぬより辛い罰を受けている。君と同じ、誰かに押し付けることでしか逃れられない罪の……。それに』
『…………』
『ルルーシュを裁く権利なんて、僕は持っていないよ』
 その一言にC.C.の胸はズクリと疼いた。
 遥か昔、もう彼岸の手前で佇む時くらいにしか思い出すことの出来ぬ記憶がC.C.を苛む中、スザクは思う。
 ――もし生きているのなら。もう二度と死ねないというのなら。
(君が引き受けた罰とは何だったんだ? ルルーシュ)
 幾度も死に、また蘇り、今後も世紀を跨ぎ続けていくことに何の意味がある?
『生きていたって死んでしまったって、罪は消えない』
 ならばその罰とは、一体誰が定めるものなのか。
『十八歳の僕らにはそれが解らなかった』
 大人たちが言った。『これは戦争だよ?』
 人を殺した他の人達だって生きていた。笑っていた。等しく罪を背負ったまま、その誰もが過ちを繰り返そうなどとは思ってもいなかっただろう。それなのに望んだ明日の中に居場所がなかったのはルルーシュ本人だけだ。
 赦せなかったのは。赦したくなかったのは……。
『喪ってから気付いた。本当は解ってた。でも通らなければならない道だと思っていた、あの時は』
『そうだろうな』
 うん、と頷き、スザクが悲しげな笑みを浮かべる。
『あれは結局、僕ら二人の業だった』
 言い切るスザクをC.C.は咎めない。今となっては全てが過去だからだ。しかし、思いは一緒だった。スザクの答えを受けて足元に視線を落とす。
 ……誰になら裁き切れるというのだろう。何をもってすれば罰は罰たりうるのか。愛を求め、弄び、その果てに裏切られたC.C.も天に向かって幾度となく問いかけてきたものだ。答えが返ることは遂になく、C.C.はやがて一人きりで気付いた。
 赦しのない永劫の罰など裁きですらない。見放されただけだ、世界から。断ち切られてしまった者の生でない生など放逐と同じだった。この先幾ら良いことをしようと悪いことをしようと、世界にとってはもう何ら関係がない。昇天することすら赦されず、あてどもなく彷徨い続ける幽鬼と同じ。
 行き着いてしまった地の果ては荒漠とした砂礫の世界だった。その光景を見届けても尚、流れ着いてしまったことさえ誰にも伝えられぬまま虚ろと化すのだ。そして叫ぶ。叫び続ける。どこにも届かぬ声と知りつつ呪い続けていく。縛られ続ける不自由と無意味でしかなくなってしまった人生、この世の全てに向かって。
 ――『理不尽だ』と。
 スザクは微笑みながら言った。
『だったらもう、好きに生きるしかないじゃないか。無責任かもしれなくても』
『そうだな』
 C.C.も笑った。解っている、これは只の悪あがきだ。でなければ人間でなくなってしまった者による人間の真似事。
 記憶はある。後悔も。それらを背負ったまま苦しみ続けるのも、何かに寄与することで贖おうとするのも、あるいはより良く生きようと人に優しくあろうとすることも。
 本来それが、人という罪深い生き物にとっての『生きる』ということではなかったか。
 ……ならば愛でよう、せめてその営みを。まだ人であった頃を懐かしみ、永遠に慈しみながら足掻き続けよう。
 百万の諦めの中で祈りは土に還る。光など届かぬこの土の底、もう贖いさえ叶わぬ身となり果ててしまっても。
『仕方がない』
 C.C.は負けてやることにした。ルルーシュもこの男の不器用さに絆されていた。正反対なようでいて本当に、よく似ている。
 ルルーシュにとってこの男は太陽なのだろう。この男にとってのルルーシュは月の如く不実で掴み切れない存在だったかもしれないが、眠れぬ夜に思い出す光ではあったことだろう、たとえ離ればなれの時であろうとも。
 頭まで下げたのだ、認めてやるしかない。C.C.はチェシャ猫のような笑みを浮かべ――いや、腕組みをしてつい、と鼻先を見る角度で答えてやった。
『いいだろう』

 一番最初に受け入れていたのはC.C.だったのかもしれない。スザクもまた、抗ってはいたが受け入れたのだ。もう一人の共犯者と、他ならぬルルーシュのために。
 固く手を握り合ったまま三人は横たわっていた。この後どうするのかは決まっている。ルルーシュは肩を竦めた。
「礼を言った方がいいのか?」
 真顔でスザクはその台詞を受け止めた。伺い合うような間が空いても誰も喋らない。二人にベッドに流れる黒髪を梳かれながら、ルルーシュだけが口元に淡い笑みを浮かべている。
(ずっと思っていた、俺は)
 この二人の愛を引き比べてみたところで、片側だけに天秤が傾くことなど有り得ない。だから、この内のひとりだけがもしあぶれてしまうのだとしたら、それはほんの少し寂しいことなのだと。
(今はもう、あの頃よりずっと許し合えている)
 そのことに、ルルーシュは深く安堵した。
 死に損ねた罪、更なる罰を畏れる孤独。決して赦されない、赦してはいけないからこそ、歓びを胸にルルーシュは目を閉じた。
 仄かな明かりの中で衣擦れの音が響く。開かれた喉元に触れてくる優しい掌――スザクとC.C.の。
 ルルーシュは満たされていた、心の底から。自分の目だけでは見られない箇所にある不死の紋章のことも、未来永劫に続く命の果てについても、今だけは忘れていても良いと己に許せる気がした。
 正義の剣に貫かれ、一つになれた瞬間こそ全て。真に許し合えたその先の世界をルルーシュは知らない。
 長い永い時の間の、まばたきほどの時間。どうしようもなく「まだ寂しい」どこかを埋める為。その時はまた、冬の夜空に並ぶ三つ星のように。

 ……ごく穏やかな交わりだった。確かな安息でもある。またするかもしれないし、もう二度としないかもしれない、どちらでもいい。
 抱き合ったあと、二人が両側からルルーシュの頬にキスをする。それは共犯者三人で決めた新しい儀式だった。


 ルルーシュが微睡む。
 まだ生まれる前、夜空のゆりかごに抱かれた幼子のように、その寝顔は幸せそうに微笑んでいた。




・゚・☆・゚・。★**・゚・☆・゚・。★**



スザク:「喧嘩ばかりしていたけれど、二人で愛することに決めました!」
そんなIfルートがあってもいいよね。
考えてみたら不老不死ネタも転生ネタも書くの初めてでした。ずっと書けなかったんですよね、何故か。
るるしゅは他の人も幸せになれないと嫌がるだろうしなぁ。

えぐい話ですが、「餓死したことがある」って書いちゃってから「不老不死でも餓死するのか」という疑問に陥って一人でぐるぐるしてました。
るるしゅは積極的には自殺しなさそうだけど欲はなくなりそうで……。
ただ、細胞の壊死や内臓の損傷があれば治癒してしまうかもですし、その辺どうなんだろうと。如何せん餓死についても不老不死についても詳しくないのでよく解りません。「わたし詳しいよ!」って人もそういないでしょうが。
居たら訊くんですけどね。「リアリティないよ!」と思われた方、もしいらっしゃいましたらすみません。
不死の概念が曖昧なので、そもそも「食べなくても死なない」のか、「食べなければ一度は死ぬけれど蘇りはする」ということなのか。解らないままベリーハードモードな後者を選択してしまいました。

るるしゅは一人ぼっちにされたら死んじゃうとおもう、たとえ不老不死でも。
ルルーシュのことが好きなのであれば、皆でルルーシュを愛でればよいのですよ!
だので、このスザクは年とりませんきっと。最初から規格外だったということにしてあげてください。(酷い!)
原作のスザクも有り得ないレベルで人外だったからいいよね……。

ちなみに文中(序盤)でのお風呂シーンのことですが、るるしゅのタオルを奪ったのはスザクではなくC.C.です。
最初にバシャバシャしていたのはスザクが手でお湯を飛ばしていた音で、便乗したC様が水鉄砲攻撃を開始。
スザクはその間タオルで水風船を作って遊んでいましたが、自分がターゲットにされたので盾代わりにタオルを使ってました。
るるしゅ惜しい!(これぞ濡れ衣)

これも余談ですが、「わからいでか」って大阪弁なのだそうで。このC様は大阪にも住んでいた可能性が。
小説か漫画で知った言い回しだったのでてっきり全国区なのかと。ン十年間生きてきて初めて知りました。
調べてみて「えっ」と思ったけどなおさない、あえて。


最初はなんも考えずにスザルルCで3P書こうと思ってたんですよ?
ボツにした分コミで、気付いたら全部で一万五千文字くらい書いててビックリでした。
遅刻した代わりに愛だけはたっぷり詰まってます。るるーしゅ脱・童貞おめでとう!
じゃなかった。おめでとうお誕生日! これからもずっとずっとあいしてる!


【追記】2014/2/2 どうしてもまとまらない、納得出来ていなかった箇所を修正・加筆しました。

12/04のツイートまとめ

toychest0308

RT @geass_bd_bot: #12月5日ルルーシュの誕生日 #キセキの誕生日 #優しい嘘つきの誕生日 #オールハイルルルーシュ #ルルーシュハッピーバースデー #ルルーシュお誕生日おめでとう #ルルーシュ生まれてきてくれてありがとう #ルルーシュの誕生日を全力で祝う #…
12-04 23:59

@popo_ta おやすありー!(・∀・)ノシ あと三十分でルル誕だね!
12-04 23:32

@te_deum おやありー!アイコンるるしゅに変わってるワーイ!\(^o^)/
12-04 23:30

@caltooo お休み有難うでした~!(*・v・*) いまごろ!
12-04 23:29

さっきの呟き読み返して思ったんだけど、もう二次書いてる時点で色々とねじ曲がっているのだよ。諦めが肝心なんだよね結局……ねもるー。
12-04 06:39

ねもい限界……。
12-04 06:37

勿体なきお言葉です……。(深々) #逝ってきます
12-04 04:48

はい。
12-04 04:45

Rさんwwwwwwwwww
12-04 04:45

あと、本編敬愛しすぎてると二次で設定やキャラ捻じ曲げる時ものっそ罪悪感。 #それ以上考えてはなりません どの口が言うんだどの口がwwwwwww
12-04 04:44

more...

12/03のツイートまとめ

toychest0308

@ha_ruta !!!!Σ(゚Д゚) いつの間にかエルエルフ担になってる!wwww
12-03 14:42

@chacha_tan 「ワンタンメン一つだ」→ちょうもぐもぐしながら銃発射→「ひょこまでだ(そこまでだ)」でくっそ笑ったwww 「俺は52の肉体的処罰を用意している。言っておくが、俺の責めに容赦はない」で腹筋崩壊www 攻め宣言!
12-03 03:18

@520_RE 全部時縞のせいwwww^p^ わざわざ気遣ってくれて有難う~? ヴヴヴ見終わったらまた適当に呟いてるとおもうよ!w
12-03 03:06

@te_deum おやすー!l・ω・´)ノシ
12-03 03:05

12/02のツイートまとめ

toychest0308

@chacha_tan 昨日受け取ったよー!有り難う!\(^O^)/ ワンタンメンくそかわwwwwww
12-02 07:38

プロフ

夕希(ユキ)

Author:夕希(ユキ)
取扱:小説・イラスト・漫画

スザルル大好きサイトです。版権元とは全く関係ないです。初めましての方は「about」から。ツイッタ―やってます。日記作りました。

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