◆ノンケスザクとガチルルちゃん。(R18)/SAMPLE◆



※ダブスタ常備。時系列については深く考えないで下さい。



「男が可愛いなんて言われて喜ぶ訳ないだろ」
 その台詞と共に床に突っ伏す男の髪を引き上げた。軍の生活に不満がないとは言わないけれど、一番腹が立つのは何といってもコレだ。ブリタニアの差別など日常茶飯事、本当の敵は仲間である日本人の中にもいる。
 腹を押さえてうずくまっていた男をもう一度蹴り飛ばした。見える所でやれば目立つから陰でこっそり。こういう考え方が僕は大嫌いだ。やらなければやられる、そういう価値観も本当は好きじゃない。でもお前がそのつもりならこっちも容赦はしない。昨日同じ部隊に配属されたばかりの男は低い呻きを残し、ぼろきれのようにぐったりしてそれきり動かなくなった。
 宿舎で同室になり、夜になってからこいつは伸し掛かってきた。やたら愛想が良かったのはそういうことだったのかと納得するなり頭に血が上った。人の親切を逆手に取るなんてますます許せない。騒ぎにならないよう内々で済ませるために、部屋の外に出て警備という名の見張り役に幾らか掴ませておく。本当は聞こえているのに助けに来なかったんだからこいつも同罪だ。卑怯者め、と心の内で罵りながら紙幣を渡すと、守衛のブリタニア人はにやにやしながら受け取った紙幣を翳して見せた。
 僕の金じゃない、そこに転がっている変態の金だ。

 もともと同性愛者に偏見はなかったのに、軍に入ってから唾棄したくなるほど嫌になってしまった。自分もイレブンとして差別される側だ、同じように差別される辛さはよく解る。
 でも、少なくとも僕は生きていく上で誰かに迷惑をかけてはいない。自分の暴力的な面を抑え込むために性格だって変えた。他人から見た自分がどう映るのかまでは解らなくても努力はしているつもりだ。
 『イレブンなんだからブリキどもにも掘られてるんだろう?』。そんなことを言うくらいなら軍になんか入らなければ良かったんだ。風紀が乱れる、欲求不満ならそういう所に行けばいい。手近な僕で済ませようなんて考えを起こすからいけないんだ。
 こういう揉め事はよくあることなので幸い大きな問題にはならなかった。黙認がまかり通ってしまう社会、やっぱり間違っている。内側から変えていくべきだという思いはますます強くなった。
 僕に手を出してきた変態は軽い処分で済み、今も同室でのうのうと生活している。部屋を替えてくれという僕の訴えは当たり前のように退けられた。……やってられない。


 いつ行っても人っ子一人いないカウンター。夜になるとバーになるその店の片隅には仕切り付きの卓が一席だけある。
そこのランチが美味いんだ、と言ってルルーシュは学校を抜け出していた。ついて行く僕も僕だ。結局二人揃って午後からの授業をエスケープする羽目になった。
 ノンケに手を出そうとするゲイなんか全員滅べばいい。食後にそう切り出した僕にルルーシュは頬杖をつき、軽く肩を竦めて悪意なく言い放った。
「俺は解るけどな、そいつの気持ち」
「――は?」
 耳を疑いそうになった僕の気持ちを解って欲しい。
「何が解るんだ?」
 殺気立ちながら尋ねると、ルルーシュは「だから」と言い置いて誘惑するような仕草でテーブルの上に乗せていた僕の手を握った。
「お前みたいなイイ身体してる奴と同室なんだろう? 変な気を起こすのも無理はない」
 ガタッと椅子ごと退いた。ルルーシュは一人納得するように深々と頷いている。
 誰だろうこれは? そう思ったのは一瞬で、キラリと光る猫のような目付きを見てルルーシュはあの変態の味方なんだと悟った。
 ――完全に引いた、ドン引きだ。
 顔面を引きつらせる僕にふっと微笑み、ルルーシュは困った奴だとか口走りそうな顔付きでゆったりと足を組み直した。困った奴は君だし困っているのは僕だ。余裕ぶった態度を見て確信する。
 獅子身中の虫。親友だと信じていたルルーシュもゲイだった。
「冗談きついよ」
「まあ同情はする」
 だったらやめろ、今すぐに。そう思って握られた手を跳ね除けける。ルルーシュは途端にムッとした。

◆空の箱に硝子玉・前(スザルル/SM/R20・ジノルル/R15)/SAMPLE◆




「枢木さん、本当に手を出したりしないで下さいよ?」
「しませんよ。僕はそういうことしないって解ってるでしょう? プライベートとパブリックは分ける方なんです、これでも」
「本当かなぁ。ここだけの話ですけど、次回から来る担当さん、すっごい美人なんですよ?」
「美人って――でも男でしょ?」
「男でも女でもいいじゃないですか、この際。実は大手のトコでも編集やってたらしいんですけど、どういうわけか引き抜きに応じたらしくって。もしかしたらウチの社長のお眼鏡にかなったんじゃないかって、専らの噂なんですよ」
「あの……僕にソッチの気はありませんから。やめてくれませんか? いくらエロで食べてる作家だからって、何でもそういう方向に繋げたものの言い方するの」
 うんざりした僕の言い方にめげもせず、現・僕の担当編集者である彼はべらべらとどうしようもないことばかりまくし立てていた。僕は正直退屈で、用が済んだなら早く帰ってくれないかな、と思いながらその下らない話を聞いていた。男のくせにきんきんと耳障りな声で話す彼のことを、たぶん心のどこかで軽蔑していたんだろう……嫌っていた。自分の書く文章と同じように、無意味で無価値でつまらなくて、どうしようもなく下品に思えて仕方がなかったから。
 僕は小説家だ。但し書いているのはポルノ、官能小説家だ。だから担当が代わろうが出版社が変わろうが、僕の書くものは変わらない。今までも、そしてこれからも、俗っぽく赤裸々な男女の性を描きながら食べていくんだろう。
 量産しているのは大衆のニーズに沿った消耗品……いや、僕の書くものをして「大衆のニーズに沿っている」と言い表すのは語弊があるかもしれない。確かに部数は出る。でも僕は、読み手にとって心引かれるシチュエーションやプレイのことなど知りもしないし、ろくに考えたこともない。百パーセント個人の嗜好だけで書いている。そこがセンスなのです、と言われたところで褒められたとも思わなければ嬉しくもないに違いないけれど、僕の書くものにはどうやら一定のファンが付いていて、毎回安定した売り上げと、長いスパンでの商品価値を会社に提供しているらしい。
 書く時に意識していることがあるとすれば、たった一つ。下手な心理描写に凝り倒すよりも、いかにヌけるものに仕上げるか――現に、卑猥かつ醜穢(しゅうわい)な作品であればあるほどよく売れる。
 作家というのは、多かれ少なかれ自分自身を切り売りする仕事だ。僕も例にもれず、実体験に基づくネタを話に盛り込みながら書くタイプだった。ところが矛盾したことに、こなした本数だけ作家としての矜持も一緒に削れていく。考えてみれば当然だ。創作なんかじゃない、まるで排泄。書くんじゃない、こなしている。その無為でろくでもない作業に抵抗がないと言えば嘘になるけれど、抗えない流れに身を任せるようにしながら僕は自身の性をさらけ出すことに慣れていった。
 好きと得意と売れるは必ずしもセットにはならない。その証拠に、僕は最初からエロというジャンルを目指していた訳ではなかった。
 物語を書いて食べていけたら。それが元々の夢だった。
 業界と一口に言ってもピンからキリまである。好きと得意が合致した結果小説家にはなれたが、望んでいたジャンルで売れることは出来ずに仕方なくこっちの業界へ来た……よくある話だ。そこで筆を折らなかったのは、ひとえに作家という肩書きに未練があったからだろう。もしくは意地か。だがその未練や意地こそが、本当の意味で僕のプライドを地に落としたともいえる。
 僕のいる会社はエロだけの出版社じゃない。だから、エロ以外の作品を手がけることも稀にある。それでもこの会社において僕が優遇されている真の理由というのは、あくまでもそのエロが売れている作家だからだ。
 つまり、僕は好きでもないこのジャンルが得意だったからこそ、幸か不幸か今の地位に立っているのだった。
 親にも世間にも、自分がどんな仕事をしているのか具体的に話したことはない。打ち明けなくとも済んでいた、そういう生活をしていた。
 ただ、この仕事に就いてから、僕はキオスクの前を通るのがつくづく嫌になった。ジリ貧生活を送ることの多い他の作家たちに比べれば、僕は確かに売れている。基準を上ではなく、下に置けばの話だけれど。
 ともあれ、キオスクには「絶対売れる本」しか並ばない。
 しかし僕は、誰とも共有し得ないこの恥をひた隠しにする為だけにますます内へと引きこもり、気付けばとうとう私用で外出する意欲などほとんど失ってしまった。……全く、食い扶持を維持するためとはいえ、誇りを持てない仕事なんかするものじゃない。
 だから、次回からこの男に代わってやってくるらしい新人担当者のことなど、その日のうちに記憶の片隅へと追いやってしまっていた。
 ――そう。新しい担当編集者である彼、ルルーシュ・ランペルージと初めて対面するその瞬間までは。


     ◆◆◆


「初めまして、枢木先生」
 よく通るテノールの声が耳に響いた。軽く会釈をしながらほの白い右手を差し出してきた彼は、何とも目の覚めるような美人だった。
 僕はまず、顔よりもその指先に目が行った。ごつごつした僕の手とは比べ物にならないほど細い指、やすりで手入れしているのかと思わせるほど清潔そうな薄い爪。白から淡いピンクへと絶妙なグラデーションを描くそのさまを目の当たりにして、子供の頃、友人から贈られた桜貝の詰まった小瓶を思い出した。振ったらシャラシャラと音を立てる花びら色の貝殻に、彼の爪はよく似ていた。
「初めまして、枢木です」
 箸よりも重いものなど持ったこともなさそうな手を握りながら、ようやく彼の顔を見た。無意識にゴクリと喉が鳴り、声が上擦る。
「ルルーシュ・ランペルージ君?」
「はい、よろしくお願いします」
 にこり。
 完璧な笑顔に流暢な日本語。こっちでの生活が長いんだろう。控えめな微笑みをスルーして軽く頷けば、異国名を名乗った彼は困惑したようについと視線を逸らした。気まずそうに俯いて、そっと手を引いていこうとする。
「あ―――」
 その手に少し力を込めると、ぱちぱちと瞬き、手元を見つめてから「何?」と問いかける上目遣い。視線が合ったところでもう一度頷きながら握手して、離した手を無造作に袂の中へと突っ込む。
 ひんやりと冷たい指先、適度に水分を含んだ掌。袂の中で感触を思い起こそうと指先が勝手に動く。女の手とは明らかに違う質感にも関わらず、しっとりしていながらするりと抜け落ちるその掌を、もう一回握ってみたい衝動に駆られていた。
 性の別を問わず万人を惹き付ける不可思議で危うい魅力。髪は烏の濡れ羽色、瞳は切り抜いた黄昏時のような深い紫藍。
 掃き溜めに鶴。ふと、そんな言葉が浮かんだ。
 唐突に思い出した前担当の話を頭の中でなぞりながら、瞬時に『今までその顔で何人の男を誑し込んできたんだ?』と彼を見た。男が美しくたって仕方がないだろう、女じゃあるまいし……大体、抱けもしないのに男を誘惑するようなその色気は何だ。
 そんな無言の反発と邪推が伝わったのだろう。目は口ほどにものを言う。彼は不安そうな目つきで僕を見てから、その秀麗な柳眉をぐっと顰めた。
「何もないけど、とりあえずお茶でも出すよ。上がって?」
「いえ、ここで結構です」
 頑なな無表情に傷付いた色を浮かべながら彼は固辞してみせた。
 こんな仕事してる割には案外潔癖なんだな。だとしたら、ちょっと悪趣味なことをしてしまった。美しい人を前にして卑屈になっていたってことだろう。てっきり、軽蔑されているとしたらこっちの方だと思っていたのに。
 彼の態度や印象から幾つかの判断を同時に下しながら、その反面少し面倒くさいな、と溜息をつく。
 この仕事を始めるようになってから、僕の人としての良心や礼儀、礼節を重んじるという最低限の常識など、社交辞令を用いねばならない重役との付き合い以外ではめっきりゴミになってしまった。人を人とも思わない僕の態度を見て彼がどう思おうと、所詮は一期一会。美しい外見に綺麗な心。僕にとってはどちらも既に無価値に等しい。
 関わることはあっても交わることなどなく、いずれすれ違っていくだけの消耗品――僕が書く文章と、まるで同じだ。
 すれていないなら尚のこと、この先一生縁のない相手……それに。
 どうせ手の届かぬものならば、最初から遠ざけておくに越したことはない。
「原稿さえ頂ければ、確認させて頂くだけでお邪魔はしませんから。すぐに帰ります」
 お邪魔……お邪魔ね。
 僕は返事の代わりに頷きながら奥の部屋へと戻った。玄関に佇む彼をその場に一人残して。
 ぼさぼさの髪に着崩した着物。見た目だけは重厚な日本家屋に似合う装いなのは、別に作家気分を演出するためなんかじゃない。使っていない土地に建てられたままの元実家。潰してしまうでもなく、かといって売り払われるでもなく。ただ辺鄙な場所に横たわっているだけのこの家は、廃墟とまではいかなくとも立ち枯れの木に似ているようにさえ僕には思える。
 都内の一等地に門を構える僕の実家は古くからの資産家で、そのおこぼれにありつきながら悠々自適のエロ作家生活を送っているのが今の僕。……この身を包む大島も、昔から家で着るようにと躾けられた習慣に則ってのこと。ただそれだけでしかない。
 襖を開きながら前担当のにやけた顔を思い出す。おおかた原稿の上がりが遅い僕に『オンナ』を宛がって、せいぜい筆の進みを上げろとでも言いたかったんだろう――もっとも、目論見外れて彼にその気は全くないようだけれど。
 下請けにいたとはいえ大手でも編集をやっていたということは、少なくとも大学出でそれなりの教養はあるということだ。引き抜きであろうと文芸編集者としてもやっていけるスキルを持っているのなら、彼は多分、どこぞの大学の文学部辺りを卒業してからストレートで入社していたクチだろう。
 営業にでもいそうな雰囲気なのに……でも逆ならともかく、営業志望でやってきて編集者をやらされるってことはないよな。既に下請けプロダクションに勤めていたんなら、やっぱり別の出版社との仕事を蹴ってでもここに入社したいだけの理由があったってことか。
 まあ、下請けに比べればここの給料も決して悪くはないけれど、そのまま籍を置いてさえいれば、ここよりも余程いい所に勤めることだって出来たかもしれないのに……何かのっぴきならない事情でもあったんだろうか。
 ともあれ、時代遅れのセクシャルハラスメントが横行するこの会社に、女性が就職してくることなど滅多にない。何せ他の雑誌も手広く出版しているとはいえ、メインはエロだ。業界の人間だけが知っている会社の真相。
 斜陽産業と呼ばれる出版業界であっても、編集者として就職出来るかどうかはまちまち。何より資格が要らない仕事だ。それゆえに就職希望者も多く、中には倍率が五百から一千倍を超える会社なんかもあったりする。でもそれは、人気ファッション雑誌や漫画雑誌などで鎬(しのぎ)を削る、もっと大手の出版社の場合だ。職にあぶれ、仕事に困った文学部上がりの元院生か、しょっちゅう潰れる新規風俗誌専門の元編集者か。どちらにせよ、あらゆる出版社をたらい回しにされた挙句、その果てに漂着したのがここだったってだけの話なんだろう。
 つまり、『まともな経歴の女性』が、こんな業界に首を突っ込むことなんかないって訳だ。入社してきた所ですぐに音を上げて辞めていくか、もしくは僕と同じく、性を生業とする作家に弄ばれる運命を受け入れるか。表向きエロ以外も手がけている会社だからと、そのジャンル以外に配属されることだけを期待してやってきた場合が一番悲惨だ。タチの悪い作家の担当に納まってしまった『まともな』女性社員は、例外なく雁首揃えて泣き寝入りする羽目になる。
 この業界をしてセクハラだなんだと大騒ぎするのは愚の骨頂。問答無用で首を切られたところで訴える先などどこにもない。それでも騒がれるのはそれなりに面倒で、宥めるのも引き止めるのも、首を切って新しい人材を確保するのも手間なんだろう……だからって男を宛がおうとするなよ。にやけたあのツラ、気晴らしにいっぺん張り倒しておけば良かったのか?
 確かに綺麗な男だ。
 書き上がったばかりの原稿の束を小脇に抱えて玄関へと引き返す。
 儚い風情なのに、気の強そうな所が何とも言えずそそる。僕にソッチの気があったなら、おそらく躊躇いもせず押し倒しただろう。
 或いは、僕がそうなってしまえば面白いのにと、遊び半分で彼を嗾けたってことか? ――やっぱり殴るか。次飲みに行った時には酔った振りして、あの馬鹿面に二、三発お見舞いしてやろう。それで僕が切られることはないだろうし。
「この暑いのにスーツ? せめて上だけでも脱ぎなよ。汗かいてるじゃないか」
 戻った所で声をかけると、彼は鯱張った礼を返してきた。額に浮かぶ汗を拭っていたらしいハンカチは四隅がきっちり合わせられていて、ご丁寧にもアイロンまで当てられている。
 タオルのを使えばいいのに。あるだろう? そういうの。
 心の中でそう問いかけながら、ハンカチを広げている彼の手つきをまんじりともせず眺める。彼は汗で濡れた面を下にして、折れ目のついた部分に合わせて裏返していた。
 それなりに値の張るブランド物。けれど、そこにひけらかすような厭味は感じられない。手つきと同じく、使う小物に至るまで彼はどこまでも上品だ。
 こんなハンカチを送ってくれる恋人でもいるのか? だったら、こんな仕事はさっさと辞めた方がいい。そう思ったけれど、彼は広げたハンカチをきちんと畳み直してから内ポケットに仕舞いこんだ。
 几帳面でマメらしいその性格。
 ……そっか。君、彼女がいる訳じゃないんだ。
「そこで読むの?」
 腰掛けようか、それとも立ったまま原稿に目を通すべきか迷っているらしい彼に、おかしさを堪えながら尋ねてみる。途端、くっと引き結ばれた薄い唇。どうやら頑固なだけじゃなく、プライドも相当高そうだ。
「冷たい麦茶があるけど。どうしても中に入るのが嫌って言うなら、ここまで運んでこようか?」
「……結構です」
 面白い。口端が吊り上がるのが自分でも解った。
 新しい玩具を見つけた時の高揚感。どこか悪戯っぽい心地にもなりながら、僕はむっとする彼の表情を眺めていた。
 言葉尻だけ優しくしてみても、本心では面白がられていることに気付くんだろう。いかにも一張羅ですと言わんばかりのスーツを脱ぎもせず、彼はその場に突っ立ったまま原稿を読み始める。
 ……それにしても、茶色か。君には紺か黒の方がよく似合う。くたびれたグレーなんかもよした方がいい。シルバーっぽいグレーなら、きっと似合うよ?
 そもそも堅苦しいスーツなんか着てこなくたっていいんだ、どうせまともな会社じゃないんだからさ。
 ――君に似合いそうな着物があるんだけど、着てみる?
 そう言ってからかってやりたくなる気持ちをぐっと抑えながら、黙って原稿を読み進める彼を観察する。別に、僕も彼が読み終わるまでずっと立っていなくたって構わない。でも何となく……そう、何となくだ。
「君さ、僕の本、読んだことある?」
「はい」
 あるんだ? ちょっと意外。
 一体どんな経緯で読むことになったのか少し興味が湧いたけれど、彼に合わせて突っ立っていることにも飽いたので、組んでいた両腕を一旦解いてその場に胡坐をかいてみた。そして、少し考えてから彼を見上げる。
「それは仕事で?」
「……いえ」
 脱ぎ捨てられたまま転がっている僕の下駄。それとは対極を成す、お上品な彼の靴。ピカピカに磨き上げられた革靴の先がまろみを帯びた光を放っているのを見て、思わず彼が自宅の玄関でせっせと靴を磨いている姿を連想してしまった。
 スーツの色に合わせたんだろうけど、やっぱりそれ、少し野暮ったいな。
 文字を追う目を止めてちらりと見下ろしてきた彼は、戸惑ったようにその瞳を揺らしている。
 さあ、君もそろそろ座ろうか。
「あの……」
 試されていることに気付いたのだろう。居心地悪そうに視線をさ迷わせた彼は、僅かに踵を浮かせてから一歩だけ後ずさった。靴底と地面がこすれる音。着崩れた僕の着物の裾を見るなり――いや、むき出しになった僕の脛に目を当てるなり、彼は続けざまに非難がましい視線を浴びせてくる。
 僕は、彼の視線も声もことごとく無視した。チクチクと頬に当たる癖毛を払って、毛先が触れていた部分を引っ掻いてみせたりもしながら殊更無関心そうに。
 暫くして、諦めが混じったような溜息と共に彼はようやく腰を下ろした。僕の方へと背を向けて、すらりと長い手足を縮こめるようにしながら、ちょこんと。
 いちいち動作や仕草が幼いな。幼いというより稚(いとけな)いって言った方がいいか。外見と性格がミスマッチな人なら幾らでもいるけど、警戒心が強そうな割には無防備だ。
 こういうの、なんていうんだっけ。
 アンバランス? それともギャップ?
 立っていた時は姿勢が良かったのに、彼は背筋を丸めながら僕の小説を読んでいる。少し長めの髪が頬に落ちかかるのが邪魔臭いのか、時々指先ですくい上げては耳にかけて。
 緩く曲げられた小指だけが立っているのを見て、僕はふと、そこに自分の指を絡めて遊んでみたいな、と考えていた。
 よりにもよって、何を好き好んでこんな陽の当たらぬ世界に咲いているのか、この花は。

 陽も中天に差し掛かろうかという真夏の午後。締め切られた引き戸を通して蝉時雨が聞こえてくる。僕は夏の風情に満ちたそれに酔うでもなく、ただ「あいつらの中身も空っぽなんだ」と何となく思っていた。
 毎年夏になれば煩く鳴き出す蝉の中には、実は生きていくために必要な臓器が備わっていない。鳴くためだけの機能がついていて、数年間は土の中。
 七日間鳴き続けて、そして死んでいく。それを誇りと捉えるか、虚しい生き方と捉えるかは人それぞれなのかもしれない。
 焦げつくような太陽の光は暑さをもたらす代わりに戸を貫き、ひんやりした石造りの三和土に戸の形そっくりな縞々の影を作り上げている。ゆっくりと流れる時間、中途半端な静寂。この場を支配するのは二人分の密やかな呼吸の音と、時々床にこすれる彼の靴底の音。
 そろそろお尻が痛くなってきたな、と思っていた頃、目の前に座る彼が突然深い溜息を漏らした。続けて我に返ったように大きく息を吸い込み、鼻から細く漏らしている。
「…………」
 なんだろう、今の。
 疑問に思う僕を余所に、彼は読み終えたらしい原稿を一枚めくって紙束の後ろへ回している。普通にめくるのかと思いきや、手さばきが妙にスローモーでわざとらしい。
 取り繕ってるな。
 瞬時に解った。直感というより、男の勘。
 彼は後ろにいる僕の視線を意識している。見られてるって思ってるのかい? 見てるけど。
 彼の動作を一言で言い表すと「別にどうもしませんよ」。でも、何気なさを装って誤魔化そうとしてみても、何故か人目を意識した演技ってバレちゃうものなんだ。
 忘れてないかな、僕こう見えても物書きだよ? 人間観察眼にはそこそこ自信ある方なんだけど。没頭して読み耽っているうちに、君、この場にいるのが自分一人だけじゃないってことを忘れていたんだろう?
 息詰めてたってわかる。

 ――興奮してるよ、この子。

 おもむろに手を伸ばし、項を覆う彼の髪先にそっと触れてみる。すると、彼の背中が一瞬強張った。
 僕の癖毛とは違うまっすぐな髪。乾いていて軽い。少しだけすくい取って人差し指の上に乗せてみると、重さを感じさせない毛先は呆気なくスルリと滑り落ちた。もっとしっかり触れてみたくなって髪と襟足との間に指をくぐらせて、根元から掴むようにひと房すくい上げる。ゆるく掌の中で握り込んでみれば、滑らかな絹にも似た手触りがした。
 シャンプーなどのCMで見るように持ち上げた髪を少しずつ落としていくと、さらさらと指の間をすり抜けていく感触。落ちる髪の隙間から覗く白い項の中心には浮き上がる骨があって、その形は紛れもなく彼が男の骨格をしていることを示していた。薄い肌の表面には、醜い産毛の一本さえ見当たらない。清潔な印象の彼が先ほど汗をかいていたことを思い出し、きっちりと分かたれた生え際と、項との間に鼻先を埋めて匂いを嗅いでみたくなった。……前担当の言葉が再び頭をよぎったが、不思議なほど同性に触れた時のような嫌悪感を覚えない。
 その間、彼は硬直したまま動かなかった。カサリと紙の音がして、彼が僕の原稿を握り締めていることに気付く。多分何が起こったのか解らず混乱しているのだろう。振り向けばいいのか、振り向いてもいいのか――迷っている。
 僕は尋ねてみた。
「ランペルージ君っていったっけ?」
 事もなげに話しかけながら、もう一度彼の髪をすくい上げて耳にかけてやる。今度は項ではなく、頬に落ちかかった髪を梳きながら、丁寧に。
 さっきこうしていたよね? そう問いかけるように、ゆっくりと。
「…………」
 彼はぎゅっと肩を竦めたまま、それでも動かない。原稿用紙の束を膝に乗せたまま固まっている。
 触られているのにどうして避けないんだろう? 嫌だけど我慢しないと原稿貰えないと思ってるのかな。
 黙って耐えていなければならない。そんな義務感にでも捕らわれているのかと思って、訊いてみた。
「僕の機嫌を損ねるとまずいって、思ってる?」
「……いいえ……」
 蚊の鳴くような声で応えが返され、僕はそうした反応を逐一見逃さないようにしながら彼の背中にすり寄った。
 背後から腕を回してネクタイの結び目に指をかけると、彼の肩が動揺もあらわにビクリと持ち上がる。指に力を込めて下に引き、解いたネクタイを引き抜くと、滑り落ちたピンドット柄のタイは彼の持つ原稿用紙の上でとぐろを巻いた。
 ……用紙の両端を握る彼の手が、細かく震えているのが目に入る。
「面白い?」
「え?」
「僕の小説」
「はい……」
「そう。どの辺が?」
「……………」
「言えない?」
「……っ」
 彼が恥ずかしそうに俯く。窄められた両肩の上に掌を乗せて顔を覗き込むと、困り果てたように目を泳がせながら忙しなく瞼を瞬かせている。
 混乱しているだけじゃない――葛藤している。
「君はどっちの目線で読んでるの? してる方? それとも、されてる方?」
「…………」
 唇を細かく震わせた彼は、その震えをひた隠すようにして下唇をきゅっと噛み締めた。みるみるうちに目元が潤み、頬がほんのり紅潮していく。
 その様子に確信を得て、覚えのある愉悦が立ち上ってくるのを自覚しながら、僕はわざと耳元で囁いた。
「君、お尻の穴使ってエッチしたこと、あるだろ」
「!?」
 弾かれたように振り向く彼の驚愕の表情。信じられないものを見るような目つき、そこに走る僅かな怯え……そして、羞恥。
 ――たまらない。
 直後、勢いよく彼を引き倒す。
 一気になだれ落ちる紙の束。幾枚かは彼の膝から土間の上がりへ滑り落ち、残りはドミノ倒しの如く彼の爪先を埋め尽くしていく。真後ろに倒された驚きもあいまってか、固く目を閉じた彼は微動だにしなかった。見下ろす僕の影が彼の顔へと落ちかかり、長い睫がかすかに震える。
 うっすらと瞼が開いたところで、僕は言った。
「逃げなくてもいいの? 食べちゃうよ?」
「―――っ!!」
 おそるおそるこちらへと向けられた瞳が更に大きく見開かれ、驚きの表情が一転して泣きそうなものへと変わる。
 ……それを見た瞬間、火が付いた。ただ媚びてくるだけの女性とは違う、むしゃぶりつきたくなるような顔をする。この男を組み敷いて、声も出なくなるまで鳴かせてやりたい。
 それは久しく感じていない衝動だった。ポルノ小説を書き慣れている僕にとって、性欲など机に向かう時くらいにしか用のないものだ。書いている最中にマスをかき、ただ吐き出す。自分でヌけないものなど世には出せない、それだけの理由で。
 性になどとっくに飽いていたのに、僕の理性はあっけなく吹き飛んだ。好物を屠る獣のように首筋に喰らい付き、夢中になって吸い上げる。
「……っあ!」
 縮こまる身体を無理やり開かせて上着をはぎ取り、黒髪の先が頬を打つのも構わず次々とシャツのボタンを外していく。
 脱がされる。その行為の先に待ち受けることにやっと思い至ったのか、動くに動けず、ただ固まっていただけの彼は軽度の恐慌状態に陥った。顔に恐怖を張りつけて、本気か、俺を食うのか? 嘘だろう? そう叫びだしそうなのに叫べない。
 逃げなければ犯される、でも無理だ。かといって、諦めるしかないという覚悟さえも決めかねて。
 どうすれば逃げ遂せられるか? もう遅い。
 吐き捨てるように笑う僕に、彼はぐしゃりと顔を歪ませた。
 開いた襟元から手癖のままに乳首を探り当て、親指の腹で押し潰す。
「ひっ……!」
 そこは既に尖っていた。最初はやわやわと弾き、じわりとこすり上げ、人差し指でくるくると円を描いてから真ん中に一本線を引く。
「……!?」
 強めの摩擦がしこりを通り抜けた途端、組み敷いた身体が派手に波打った。彼は何が起こったのかと口を開けていて、同じ動きで執拗に嬲るごとに混乱は増していき、ガチガチに力んだ身体は持ち主ではなく、僕の自由になっていく。
「――ッ! ………ぁ!」
 肌蹴たシャツを肩の下まで引き下ろした瞬間、彼は絶望的な表情を浮かべた。――ああ、もう駄目だ。逃げられない。
 僕は乱れた着衣から露出した細い上半身に感動し、息を飲む。
 健気に打ち震えながらも、淫らに雄を誘う身体。腰の奥が疼き、たちまち勃起してくるのが解る。口に入れるものなら選んできたつもりなんだけどな、これでも……でも実は、飽食から美食に目覚めただけだ。『どうせなら質のいい御馳走を』なんて、そんなベタな飢え方に笑ってしまう。
 手付かずの新雪を思わせる白い肌。その上で色づく薄桃色の突起を間近で凝視したまま、僕は自身の息遣いが嘗てなく荒くなっていることを意識しながら顔を近付けた。
「……ッ、ひ!」
 そっと舌先で触れて、箍が外れたように舐め回す。うろたえた吐息を漏らした彼は、慌てて口元を押さえながら必死で身体をくねらせた。舐めて吸って甘噛みしてやれば、唇を覆う指の隙間から短く噛み殺し切れない喘ぎが迸る。
 捕食される獲物の嘆きにも似た、暴かれることへの恐怖。それでも絹を引き裂くような切なくか細い悲鳴には、明らかに嗜虐を誘う者特有の屈服させられる喜びが滲んでいる。
「……っめ、――――ゃッ、あ!」
 ドタドタと彼の踵が床を打つ。
 何言ってんのかわかんないよ、まあ聞く気もないけど。
 覆いかぶさる僕の身体を押しのけようと彼は腕を突っ張り、堪え切れない快感に身悶える。自分から胸を突き出しておいて吸わないでくれ? 嫌なら本気で逃げてみろ。
 感じているにもかかわらず、彼はまだ自由になる足をばたつかせながら上半身を捩り、僕の手から逃れようとしつこく抗ってくる。ばたつく足に伸し掛かり、抵抗する腕を押さえつけているうちに、僕の着物も乱れる彼と同様、いつの間にか滲み出した汗で内側に熱が篭もり始めていた。
「君は嫌なのに犯されるっていうシチュエーションが大好きなんだろう? 解るよ」
「違う!」
「プライドが高いくせに、僕に押し倒されるの待ってたの。いやらしい子だなぁ」
「違う……!」
「じゃあどうして逃げなかったんだ? チャンスならあげたよね? 本当は期待していたくせに………嘘吐きだな」
「ちがっ! ………ちが、う……うぅっ」
 極限まで高まった羞恥の為か、言葉で嬲られた彼はとうとう泣き出した。僕はほろほろと零れてくる涙を舐め取りながら彼の耳朶を噛む。
 ――どこもかしこも甘い。
「ここ、勃ってるよ?」
「ひぃっ!」
 耳に吹き込み、ズボンの上から隆起していた部分を掴んでやると、彼は引きつった声と共に酷く感じ入った溜息を漏らした。
「奥の部屋、行こうか?」
「――っぅ!」
 返事も待たずに深く口付けて舌を味わう。暴れた割には、彼の唇も舌の表面もひんやりと冷たかった。極度の緊張で体温が下がっているのか、それとも元々そうなのか。でも奥に突っ込んでやれば、その通路は煮詰めた蜜のようにとろけていて熱く熟れているんだろう。
 僕が夏なら彼は冬だ。なんとなくそんな他愛もないことを頭の隅で考えながら、しどけなく横たわる腰を抱えて起き上がらせてやる。
 その隙に彼は、すんと鼻を啜りながら頬に伝う涙を拭っていた。悲しそうにぎゅっと目を瞑り、腕を引いて立たせるとよろけながら倒れ込んでくる。突然の暴虐に抗議するように握られた拳が、僕の胸の合わせを強く掴みながら着物を乱れさせていた。
 肌蹴た自分の胸元を手繰り寄せて彼は俯いている。今以てはあはあと上がる息には隠し切れない自身の性癖を恥じる気持ちが表れているように思えて、僕は先ほど考えた通りに彼の項を覆う髪をかき上げ、鼻先を埋めた。
「……っ!」
 ビクリと反った背に手を滑らせて、肺の奥深くまで息を吸い込み匂いを堪能する。仄かなシャンプーの香りに入り混じる彼の体臭は、むせるような花の香りに似ているようにさえ思われた。
 肩に腕を回して抱き寄せれば、ほんの僅かに身じろぎしながらも抵抗が止む。それが果たして諦めなのか許容なのかは解らない。でもどちらでもいい、そう思った。
 もつれる足で彼は歩き、僕は細いその肩を抱いたまま奥の部屋を目指した。がらんとした屋敷の奥へと続く渡り廊下は、二人分の体重に軋みをあげながら僕と彼とを導いていく。
 襖を開けて部屋へ入り込み、普段物書き用にしている机を避けて押入れの前に立つ。
 畳の敷かれた部屋の手前で、彼は所在なさげに佇んでいた。……この部屋に入れば、もう後戻りは出来ない。そんな暗黙の了解が互いの間にはあった。
 押入れの中から敷き布団を取り出して、三つ折りにされたそれを広げる。掛け布団は要らない。僕の動作を呆然と見守っていた彼は、敷き終えた布団の上で振り返る僕を縋るような眼差しで見つめていた。
「こっちにおいで」
 低くそう告げると、ビクリと全身を強張らせた彼は血の気の失せた表情で唇を引き結ぶ。緊張している時の癖なんだろうか。カーテンの引かれた薄闇の中でも一際目を引く紫藍は可哀相なくらい揺れていて、真一文字に結ばれた唇と同じく、惑いと未知への不安とを如実に表している。
 僕には解った。彼が求めているのは、これからの行為に対する安全と契約なのだろうと。
「ルルーシュ」
 初めて呼んだのに、生まれた時から呼んでいたように馴染む名だ。そう気付き、思わず笑みが浮かんだ。
「僕は男を抱くのは初めてだけど、痛くはしないよ?」
「…………」
「解ったら、早く服を脱ぐんだ」
 玄関での応酬を繰り返そうと布団の上に座る僕を、ルルーシュは瞬きもせず見つめていた。やがて、襖に触れていた手をそっと外してから、おずおずと一歩踏み出してくる。
 布団の上まで歩いてきたルルーシュは今にも泣きそうな面持ちのままだった。不安そうに自分の胸元を握り締めている掌は、緊張をも上回る期待でしっとりと汗ばんでいるのだろう。
 早く触りたい。指と指とを絡め合わせて、その震えが収まるまで強く握っていてやりたい。全身汲まなく愛された彼が、拓かれる悦びに喜悦の声を上げながら果てる姿を見てみたい。
 落ちた淡雪が溶けてゆくほどの熱を放つようになるまで、僕は彼の手を離さないことだろう。
 僕に抱かれるしか――その身を捧げるしかないと悟ったのか、ルルーシュは一枚、また一枚と衣服を脱ぎ捨てていく。ときおり居た堪れなさそうに視線を逸らしながら、それでも隠し切れない欲情と興奮の色とを瞳にちらつかせて。
 皺になるのが嫌なのか、覚束ない手つきでのろのろと服を畳み、少し考えてから布団の横に重ねて置く。屈んだ腰にはまだ無粋な下着が張り付いていて、一瞬それだけは僕の手で脱がしてやろうかとも思ったけれどやめておいた。
 最後の一枚も、やはり自分で脱がせたい。
「僕は乱暴はしないけれど、一つだけ訊いてもいいかな」
「何、ですか?」
「君、僕が書いている本の傾向、知ってるんだよね?」
「……はい」
「なら、あれが欲しいだろ。机の引き出しに入っているから自分で取っておいで」
 言いながら、先ほど避けた机の方を顎で示した。ルルーシュはその方向へと目を向けてから、ぎこちなく首を動かして僕を見下ろす。
「君は肌が白いから、きっと茶色より似合うだろうと思ってたんだ。今度、君用に赤いのも用意してあげるよ」
 僕がそう言った途端、ルルーシュはぼうっと熱に浮かされたような表情になった。
 黒いビキニパンツの前ははちきれんばかりに膨らんでいる。清楚そうな外見のくせに、ずいぶんセクシーな下着だ。でも、それもある意味彼の本質の一部なのかもしれない。
 上品な顔立ちと卑猥な下半身とのギャップは異様なほど色っぽくて、その水着にも見えるいやらしい下着を、今までどんな風に汚してきたのかと想像させられる。
 それを履かされたまま、または破られて? 
 辱められるのが好きな人は、ボディラインの出る服や身体にフィットする衣類が好きだという。――当然、首輪も。
 よたよたと机の前まで歩いていったルルーシュは、玄関で腰掛けていた時と同じく、ちょこんとその場に屈んで引き出しを開けている。布地の面積が少ない黒の下着。僕から見えるルルーシュの尻はきゅっと上がっていて形も良く、どちら側から揉んでも片手に収まってしまいそうなほど小さかった。
 やがて、木と木のこすれ合う音と共にゴトリと重い音がして、細い彼の手には不釣合いな厳つい物体がその姿を現す。
 ――黒い皮紐に繋がれた、人間用の首輪。
「付けてあげるから、持っておいで」



     ◇◇◇



「まどろっこしいのは苦手でね。口説き文句として、出来るだけ覚えておくようにしてる。意思表示はしたつもりだったんだが―――単刀直入に言う。私のものにならないか?」
 これ以上なくストレートな物言いに絶句した。
 聞き違いだと信じたい………が。
「ルルーシュは結構鈍感だなぁ」
 ジノはそう呟きながら隅にある棚の一台に寄りかかり、片眉を上げて人を食ったような笑みを貼りつけている。
「あれっ、読んだことあるんじゃなかったのか? 怒ってただろう」
 しれっとのたまわれて煮えたぎるような怒りを覚えたのは言うまでもない。震える拳を握りしめて何とか平常心を取り戻す。
「はっ。俺が、お前と……? その目は節穴か? 世間にはそういう嗜好の奴らもごまんといると知ってはいるが、この俺を同列に扱うとどうなるか解ってるんだろうな?」
「と、いうと?」
「確かめたければ確かめてみるといい。人気の面でなら、お前に決して劣っていないと思うが?」
 ジノはきょとんとしてから不敵な笑みを浮かべた。
「ほぉ、意外だな。ルルーシュはそういう意味では強者だったのか」
「皮肉のつもりか? お前の言うそれは弱者という意味だろう」
「強気だねぇ、ますます欲しくなってきた」
「悪いが、しつこくされるのは好きじゃない。お前が言うように恋愛は自由だ。だが、自由には制約が付きもの。遊びのつもりでちょっかいをかけようというなら俺にも考えがあるぞ」
 聞いているのかいないのか、ジノはうんうんと頷いている。どこまでもマイぺースな言動に振り回される予感を覚えて一気に憂鬱になった。
「簡単に落とせるとは思うなってことか……いいねぇ、受けて立とう」
「自信がありそうだな」
「ああ。自分は絶対落ちないと思ってる奴に限って、深みにハマるものだからな」
 得意げに言う辺りが厄介だ。しっかり釘を刺しておかねばならない。
「詐欺に引っかかりやすい奴の特徴とでも混同しているのか?」
「いいや? その特徴は恋愛にだって当てはまる。初恋や道ならぬ恋にさえも――知らないのか?」
「!」
 薄暗い図書室の中。本能的に後ずさりする俺をニヤリと笑ったジノは流れるような動作で棚に縫いとめた。
 背中越しに感じる本の匂いと、木の感触。
「どけろよ、冗談はよせ!」
 男になんかオチてたまるか! 心の中でそう叫びながら思い切り睨みつける。
 ジノはさして動じた風もなく、ただゆるりと首を傾けた。
「威勢の良さも、また好みだ。何よりとびっきりの美人だし?」
「ふざけたことを……!」
 身体の両サイドを腕でホールドされ、どこにも逃げ場がない。ジノは俺の瞳をじっと覗き込みながらうっそりと目を細めた。
「隙を見せるのも魅力のうちか……? よくある媚やエロティシズムとは違う、そいつは自然な色気だ。自分じゃ気が付かないもんなのか?」
「……何の話だ」
 おもむろに前髪をかき上げられて、ぞわりと背筋が粟立った。反射的に蹴り倒そうかと思ったが、ジノはこんな時に限ってふざけたなりを静めている。
「ルルーシュは、人の目をじっと見るよな。それはまずい。でも、私はそういう奴は好みだ。弱いとは言わない、だけど強がってるところがいい。……好きだルルーシュ、キスしてもいいか?」
 いい訳ないだろう。どうしてそうなる?
 次々と浮かぶ疑問や文句は全て喉の奥でかき消えた。返事も待たずにジノは俺の顎を捕えて、そして――。
「……っ!」
 危機感が現実になった時にはもう遅かった。俺の唇はあっけなく奪われ、午後の授業終了のチャイムが鳴るまで深い口付けが続いた。
 殴りかかった拳は押さえつけられ、俺が抵抗をやめるまでジノは奪い続ける。やがて力が抜けて足腰が立たなくなり、下半身におかしな反応が現れてもジノは笑わなかった。
 強く抱きしめられ、耳を食まれ、首筋に顔を埋められる。
 嫌悪感や違和感を覚える余裕すらなかっただけかもしれない。でも、何もかもが初めての経験だったのに、何故か生理的な不快を一切覚えなかった。

◆自分アレルギーが愛の乞食 (スザルル・R18)/SAMPLE◆



ひどるぎ注意。殺伐せっくる。軽めのDV描写有。
一応ハピエン?のつもり。


*********




『私のこと、好き?』
 そう尋ねてくる女の子が僕は嫌いだ。
 なんでいちいち言わせるの? 言葉ってそんなに必要なもの? そろいも揃って二言目には必ず確認したがる子ばかりなのはどうしてなんだろう。
 他の人がどうかは知らない。でも僕はその辺の感覚が単純だから、尋ねられてる間も君の上目遣いを見下ろしながらわざとらしく押し付けられた胸の感触に気を取られてる。
 見てっていうなら見るし、触れというなら応じるよ、そりゃ男だもの。柔らかそうな体も漂ってくる甘い匂いも、どれもとても魅力的だ。……でも、君の話には正直あまり興味が無い。
 だって君はどうなの? 君自身は。男の僕にだけ言わせて、与えられる愛情の上に胡坐をかいているだけ。それってそんなに気分いい?
 好きで付き合っているくせに。そう言われればそれまでかもしれない。でも将来まで縛り付けられて、それを受け入れることが責任か?
 じゃあ愛って何? 恋愛って何のためにするもの?
『私のこと、愛してる?』
 イエスと答えれば満足か。……ねえ気付いてる? それって支配だよ。愛情という名の束縛だ。好きだから抱く、それだけじゃいけない? 足りないって言うなら、じゃあ君には一体何が出来るの?
 ギブアンドテイクって『搾取前提で押し付けます』って意味だっけ。
 ……だったら僕は、そんなもの要らない。



「来るなって言っただろ」
 ドアを開けたとたん自分でも驚くほど不機嫌な声が出た。玄関先に佇む彼は一瞬浮かべた戸惑いをすぐに消して、凪いだ瞳で僕を見る。
 ――その目やめてよ。
 言いかけてから口を噤んだ。

 一ヶ月前、僕はこの幼馴染、ルルーシュ・ランペルージを抱いた。ほぼ無理やりに等しかったかもしれない。でもルルーシュがそういう意味で僕を好いていることは知っていたし気付いていた。彼だって抵抗なんてほとんどしなかったし、心の底では僕に抱かれることを期待していたと思う。前々からそういう雰囲気になることも度々あった。
 たとえ男でも、手を出されたがる時の目は女の子と同じなんだな。そう思ったから抱いただけだ。最低だと罵られたけどあれはルルーシュも悪いよ。
 放課後の教室。別れ話がこじれたおかげで頬に一発平手を食らい、その現場を忘れ物を取りにきたルルーシュに見られてしまった。口では「またか」と詰りながらも、その目にチラついていたのはあからさまな軽蔑と嫉妬。そして男の自分は範疇外という失望。隠せているつもりだったんだろうな。
 僕もあの時は理不尽に責められて腹が立っていたし、殴られた後に絡まれたせいもあって余計歯止めが効かなかった。
『幾ら友達とはいえ、直接関係無いのにゴチャゴチャ言うなよ』
 口走った直後に押し倒して、後はなし崩し。今思えば完全な八つ当たりだ。
『本当は好きなんだろ、僕のこと』
 制御できないほど攻撃的になることは僕にだってある。普段抑圧しているこの烈しさを知りながら先に喧嘩を売ってきたのはルルーシュだ。
 暴かれたルルーシュは驚愕していた。言ってしまった以上僕も後には引けなくて、タイミングの悪いルルーシュの初体験は――だから教室だった。それでもさすがに色々不便だったから途中でホテルに連れ込んだ。
 ちょうど良いと思ったんだ、相手が彼なら。男同士というインモラルについてもお互い口には出さないし、正直異性との付き合いに飽き始めていた僕には渡りに船でもあった。
 ……でも失敗したかもしれない。これじゃお節介な彼女がいるのと何も変わらない。

「気遣ってくれるのはありがたいけど、僕らの間でこういうのは無しって話ならこの前もしただろ?」
 すると、ルルーシュは無言で何枚かのプリントを差し出してきた。
「担任に頼まれたんだ。進路調査書と三者面談の連絡、届けておけって」
「ふぅん」
 一応用事はあったのか。とはいえ、それだけがここに来た理由かというとルルーシュの場合はそうじゃない。
「話してなかった? 体調悪い時に来られるのって僕はあんまり――。それに僕の家には、」
「解ってる」
「じゃあもういいだろ?」
「ああ……」
 答えながらもルルーシュはなかなか立ち去らない。ガサリとビニールの音がして、見るとルルーシュは握り締めていた手持ちの袋を後ろに回している。
 そこで袋の存在にようやく気付いた。何を持ってきたのかは大体見当が付く。
 僕はルルーシュのそういう奥ゆかしさをらしいなと思う反面、本心ではいつも疲れると思っていた。今もそうで溜息が漏れる。今日欠席したのは朝から熱が出ていたせいで、ルルーシュもそれを知っている。鞄と一緒にぶら下げられていたのはコンビニのレジ袋で、半透明なその表面に詰められた中身が透けていた。
 ゼリーやレトルトの粥、冷却シートの箱。いつものルルーシュなら――こういう関係になる前のルルーシュなら「鬼の霍乱」なんて言って、適当にからかって帰って行ったことだろう。
「……上がって」
 内心うんざりしながら中へ通す。ルルーシュは僕の顔色を伺ってから不満そうに上がりこんだ。
 せめて二言三言かわしてから。そう思ったのかもしれない。でも言いたいことがあるのに察して貰おうとする所がどうにも面倒くさく、かけられる期待や無言の要求がひたすら鬱陶しい。
 ルルーシュは我が物顔でキッチンに立ち、袋の中身を広げ始めた。頼まれもしないのに買ってきて代金は要らないとか言うつもりだろう。残念ながら冷却シートくらいうちにもあるし、昨夜米を炊いたから粥も作れる。本当は何もかも間に合っているんだと答えたら、ルルーシュは傷付いた顔をするんだろうか。
「あのさ、キッチンに立って何するつもり?」
 暗に勝手なことしないでくれる? と言ったつもりが、ルルーシュは甚だ心外そうに振り返ってきた。
「冷やしておかないとまずいだろ」
 ゼリーを冷蔵庫に入れて、苛立ち紛れにバタンと閉める。自分でもあてつけだと解っているルルーシュは、眉をしかめてから僕の反応を探るように向けた目を逸らした。
「……熱」
「うん?」
「具合はどうなんだ?」
「普通」
 やっと言いたいことを口に出せてほっとしたのか、ルルーシュが小さく息をつく。それでもぞんざいな僕の答え方に感じるものはあったらしい。俯いたまま空になった袋を握り締めて、のろのろと畳んでから放り出す。
「お前は――」
 ぼそりと言いかけたルルーシュは諦めたように目を伏せた。
 空気が重い。冷たくしすぎだと解っていても、発熱した分の消耗もあいまって気遣ってやろうと思えない。
「悪い、邪魔したな。来週はちゃんと出てこいよ」
 僕と目も合わせないままルルーシュは玄関へと向かった。一人暮らしの僕が住むのはどこにでもあるようなワンルームマンションで、備え付けられたキッチンそのものが玄関への通路だ。
 隣を横切るルルーシュはどことなく憔悴したように見える。僕に抱かれてからはずっとそうだ。沈鬱に何かを考え込んで、夜もまともに眠れてはいないような。
「君こそ大丈夫なのか? 体」
 その場に突っ立ったまま声をかけると、ルルーシュはつま先を靴に差し込んだまま止まった。
 躊躇いを振り切るように踵をねじ込み、肩を竦める。
「余計なお世話だ、病人が。人の心配なんてしてる場合か?」
 薄い笑み。捻くれた口調で答えをはぐらかす癖。本音を言わないルルーシュはすました顔で乱れた髪を振り払い、不敵な流し目で僕を見据える。
「じゃあな、また学校で」
 反射的に数歩踏み出し、ドアノブにかけられた手を握った。
「さっき何言おうとしたの?」
「……!」
 振り返った瞳に動揺が走る。唐突に意地悪がしたくなって、たたらを踏むルルーシュを強引に抱き寄せた。
 片手を塞ぐプリントが邪魔だ。身を捩るルルーシュをこちらに向かせるついでに投げ捨てる。よれた数枚の紙はひらひらと宙を舞って玄関に落ちた。

◆LIP SERVICE. / SAMPLE◆

(P13~14より抜粋)


×××××


「すっげぇなぁ化粧って。ルルーシュの顔なんか見慣れてる筈なのに……」
「うん。ドキドキする……」
 リヴァルの語尾を引き継いだシャーリーが鼻息を荒くしている。純粋に感心しているリヴァルに引き換え、シャーリーの方は煩悩と興奮丸出しだ。
「えっと、ルルーシュ」
「ん?」
「唇、ちょっとうーってして?」
「うー……?」
 ルルーシュが反復した瞬間シャーリーが鼻血を噴き、ハッと瞠目したスザクは後ろめたそうに額を覆って俯いた。
「おい!? どうしたシャーリー。というか、お前も何だ?」
「ああいや、ごめん。違った……ごめん……」
 さもあらんと遠い目をしたリヴァルとニーナは傍観に回り、慌てたミレイだけがシャーリーにティッシュを手渡している。
「えっと、こうやってうすーく唇を開けたまま、いってして?」
「い?」
「そうそう、そのまま」
 ヘラリと力無く苦笑しながらスザクがグロスを手の甲に絞り出す。
(そのまま塗るんじゃないのか……)
 ピンクの口紅をリップブラシで少量取り、色合いを見ながらグロスと混ぜているスザクの手元をルルーシュはじっと見つめていた。
(絵の具を混ぜているみたいだな)
 興味半分で見ていたルルーシュだが、ちょうどスザクが紅筆を止めたことに気付いて顔を上げる。直後、上目遣いになったスザクとまともに視線がぶつかった。
 徐々に唇へと移動していくスザクの目つきにルルーシュの心臓が跳ねる。
 引き攣ったように喉が鳴り、唇が震えた。
(スザク……お前!)
 餌を前にした獣にも似た眼差し。射るように鋭く、それでいて甘く、艶っぽく。
 ――欲されている。それは明らかに欲情した瞳だった。
 あまりにも露骨な視線に耐えかねてルルーシュはぎゅっと目を閉じる。瞬時にマスカラのことを思い出し、スザクから視線を逸らしたまま薄目を開くと、スザクはルルーシュの反応に気付きながらも頓着せずにメイクを続けていた。
 真剣な顔。慎重な手つき。下唇の中心に乗せた色をぼかしながら唇の際や端まで丁寧に塗り重ねていく。
 出来るだけ唇を動かさないようルルーシュは堪えた。しかし、やはりスザクの視線には耐えられずに結局目を閉じてしまったが……。
「はい終了。ルルーシュ顔上げて?」
 くいっと顎を掴んで持ち上げるスザクの手つきがやけにぞんざいで、驚いたルルーシュが目を瞠る。ぱちぱちと瞬きながらスザクを見上げると。
「………?」
 てっきり笑っているだろうとばかり思っていたスザクは、何故か酷く不機嫌な顔でルルーシュを見下ろしていた。
(スザク?)
 よくわからない反応にルルーシュは戸惑う。
 からかわれるならまだしも、何か怒らせるようなことをしただろうか?
(何だよ……?)
 ルルーシュをじっと見つめていたスザクは冷えた瞳の奥に正体不明の苛立ちを燻らせている。化粧などを施されて、機嫌を悪くするならルルーシュの方なのに。
「キャー! ルルちゃんびっじーん!」
「ほーんとホント! すっげー美少女!」
 メンバー全員がルルーシュの顔を覗き込み、口々に惜しみない賞賛を送る。一人輪を離れたスザクはその間ずっと無言だった。
 持て囃してくる皆の声がルルーシュの耳を素通りしていく。一体何を考えているのか。気分を害しているようにしか見えないスザクの反応にルルーシュは困惑の度合いを深めた。
 メイクボックスから取り出したコットンでリップブラシを拭いていたスザクは、使い終えたそれを捨てるでもなく握り締めており、ルルーシュの方には一瞥すら寄越さない。
「これ間違いなく学園一じゃねえ? 写真撮ったら高く売れるかも!」
「馬鹿! 俺の写真なんか――」
「駄目だよ。写真は撮らない」
「――――――」
 真に迫ったスザクの声に空気が一瞬で冷える。色めき立っていたメンバーが一斉に静まり返り、そこでようやく今まで背を向けていたスザクが振り返ってきた。
 真顔のスザクは気難しそうに眉を寄せていたが、自分に向けられた皆の視線に気付くなり瞼を伏せ、素早くルルーシュを盗み見てからまた顔を顰める。
「おーいおい、どうしたんだよスザク? 急にマジになっちゃって」
 ポカンとしていたリヴァルもスザクの様子が変だと気付いたのだろう。場の空気を取り成そうとおどけた声で尋ねると、ハッとしたスザクは突然思いついたように汚れた手の甲をコットンでふき取り、リヴァルの調子に合わせて渋々苦笑を浮かべてみせた。


オフライン(最終更新・2015年2月16日/PC推奨)




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運命の糸
文庫/P226/\800/R18 プレビュー 

出張ホストのルルーシュは、ノンケの客枢木と出会ってから指名されるようになっていく。
身体の関係がないまま友達のように接する暗黙のルール。それが破られた時、失っていたルルーシュの過去、そして時が動き出す。 ※モブルル・ジノルル・ノマカプ要素が含まれます。苦手な方はご注意下さい。





nonke-r2-hyousi-s2.jpg
ノンケスザクとガチルルちゃんR2
A5/P36/\400 プレビュー 

「俺の誘惑に勝てたら諦めてやる」「断っておくけどルルーシュ、僕が好きなのは女だよ」
「ノンケスザクとガチルルちゃん(短編集)」に収録した表題作を後日談含めて一冊にまとめた本です。
スザク一人称から大幅に改稿し、三人称にしてお届けします。





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友達だから恋人じゃない。でも君を、お前を愛してる。
A5/P32/¥200/全年齢
プレビュー 

スザルルVD本です。「会話だけでどこまでイチャついているように書くか」がコンセプト。
これは決して恋愛じゃない、でもお互いのことが大好きで大切に思っているスザルルの話。
バレンタインイベントで貰ったチョコのことからコイバナなど、仲良しスザルルのお喋りが延々と続きます。
男子らしい友情(?)、だけど君を、お前を愛してる。




★完売★

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有難うございました!


プロフ

夕希(ユキ)

Author:夕希(ユキ)
取扱:小説・イラスト・漫画

スザルル大好きサイトです。版権元とは全く関係ないです。初めましての方は「about」から。ツイッタ―やってます。日記作りました。

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