◆自分アレルギーが愛の乞食 (スザルル・R18)/SAMPLE◆



ひどるぎ注意。殺伐せっくる。軽めのDV描写有。
一応ハピエン?のつもり。


*********




『私のこと、好き?』
 そう尋ねてくる女の子が僕は嫌いだ。
 なんでいちいち言わせるの? 言葉ってそんなに必要なもの? そろいも揃って二言目には必ず確認したがる子ばかりなのはどうしてなんだろう。
 他の人がどうかは知らない。でも僕はその辺の感覚が単純だから、尋ねられてる間も君の上目遣いを見下ろしながらわざとらしく押し付けられた胸の感触に気を取られてる。
 見てっていうなら見るし、触れというなら応じるよ、そりゃ男だもの。柔らかそうな体も漂ってくる甘い匂いも、どれもとても魅力的だ。……でも、君の話には正直あまり興味が無い。
 だって君はどうなの? 君自身は。男の僕にだけ言わせて、与えられる愛情の上に胡坐をかいているだけ。それってそんなに気分いい?
 好きで付き合っているくせに。そう言われればそれまでかもしれない。でも将来まで縛り付けられて、それを受け入れることが責任か?
 じゃあ愛って何? 恋愛って何のためにするもの?
『私のこと、愛してる?』
 イエスと答えれば満足か。……ねえ気付いてる? それって支配だよ。愛情という名の束縛だ。好きだから抱く、それだけじゃいけない? 足りないって言うなら、じゃあ君には一体何が出来るの?
 ギブアンドテイクって『搾取前提で押し付けます』って意味だっけ。
 ……だったら僕は、そんなもの要らない。



「来るなって言っただろ」
 ドアを開けたとたん自分でも驚くほど不機嫌な声が出た。玄関先に佇む彼は一瞬浮かべた戸惑いをすぐに消して、凪いだ瞳で僕を見る。
 ――その目やめてよ。
 言いかけてから口を噤んだ。

 一ヶ月前、僕はこの幼馴染、ルルーシュ・ランペルージを抱いた。ほぼ無理やりに等しかったかもしれない。でもルルーシュがそういう意味で僕を好いていることは知っていたし気付いていた。彼だって抵抗なんてほとんどしなかったし、心の底では僕に抱かれることを期待していたと思う。前々からそういう雰囲気になることも度々あった。
 たとえ男でも、手を出されたがる時の目は女の子と同じなんだな。そう思ったから抱いただけだ。最低だと罵られたけどあれはルルーシュも悪いよ。
 放課後の教室。別れ話がこじれたおかげで頬に一発平手を食らい、その現場を忘れ物を取りにきたルルーシュに見られてしまった。口では「またか」と詰りながらも、その目にチラついていたのはあからさまな軽蔑と嫉妬。そして男の自分は範疇外という失望。隠せているつもりだったんだろうな。
 僕もあの時は理不尽に責められて腹が立っていたし、殴られた後に絡まれたせいもあって余計歯止めが効かなかった。
『幾ら友達とはいえ、直接関係無いのにゴチャゴチャ言うなよ』
 口走った直後に押し倒して、後はなし崩し。今思えば完全な八つ当たりだ。
『本当は好きなんだろ、僕のこと』
 制御できないほど攻撃的になることは僕にだってある。普段抑圧しているこの烈しさを知りながら先に喧嘩を売ってきたのはルルーシュだ。
 暴かれたルルーシュは驚愕していた。言ってしまった以上僕も後には引けなくて、タイミングの悪いルルーシュの初体験は――だから教室だった。それでもさすがに色々不便だったから途中でホテルに連れ込んだ。
 ちょうど良いと思ったんだ、相手が彼なら。男同士というインモラルについてもお互い口には出さないし、正直異性との付き合いに飽き始めていた僕には渡りに船でもあった。
 ……でも失敗したかもしれない。これじゃお節介な彼女がいるのと何も変わらない。

「気遣ってくれるのはありがたいけど、僕らの間でこういうのは無しって話ならこの前もしただろ?」
 すると、ルルーシュは無言で何枚かのプリントを差し出してきた。
「担任に頼まれたんだ。進路調査書と三者面談の連絡、届けておけって」
「ふぅん」
 一応用事はあったのか。とはいえ、それだけがここに来た理由かというとルルーシュの場合はそうじゃない。
「話してなかった? 体調悪い時に来られるのって僕はあんまり――。それに僕の家には、」
「解ってる」
「じゃあもういいだろ?」
「ああ……」
 答えながらもルルーシュはなかなか立ち去らない。ガサリとビニールの音がして、見るとルルーシュは握り締めていた手持ちの袋を後ろに回している。
 そこで袋の存在にようやく気付いた。何を持ってきたのかは大体見当が付く。
 僕はルルーシュのそういう奥ゆかしさをらしいなと思う反面、本心ではいつも疲れると思っていた。今もそうで溜息が漏れる。今日欠席したのは朝から熱が出ていたせいで、ルルーシュもそれを知っている。鞄と一緒にぶら下げられていたのはコンビニのレジ袋で、半透明なその表面に詰められた中身が透けていた。
 ゼリーやレトルトの粥、冷却シートの箱。いつものルルーシュなら――こういう関係になる前のルルーシュなら「鬼の霍乱」なんて言って、適当にからかって帰って行ったことだろう。
「……上がって」
 内心うんざりしながら中へ通す。ルルーシュは僕の顔色を伺ってから不満そうに上がりこんだ。
 せめて二言三言かわしてから。そう思ったのかもしれない。でも言いたいことがあるのに察して貰おうとする所がどうにも面倒くさく、かけられる期待や無言の要求がひたすら鬱陶しい。
 ルルーシュは我が物顔でキッチンに立ち、袋の中身を広げ始めた。頼まれもしないのに買ってきて代金は要らないとか言うつもりだろう。残念ながら冷却シートくらいうちにもあるし、昨夜米を炊いたから粥も作れる。本当は何もかも間に合っているんだと答えたら、ルルーシュは傷付いた顔をするんだろうか。
「あのさ、キッチンに立って何するつもり?」
 暗に勝手なことしないでくれる? と言ったつもりが、ルルーシュは甚だ心外そうに振り返ってきた。
「冷やしておかないとまずいだろ」
 ゼリーを冷蔵庫に入れて、苛立ち紛れにバタンと閉める。自分でもあてつけだと解っているルルーシュは、眉をしかめてから僕の反応を探るように向けた目を逸らした。
「……熱」
「うん?」
「具合はどうなんだ?」
「普通」
 やっと言いたいことを口に出せてほっとしたのか、ルルーシュが小さく息をつく。それでもぞんざいな僕の答え方に感じるものはあったらしい。俯いたまま空になった袋を握り締めて、のろのろと畳んでから放り出す。
「お前は――」
 ぼそりと言いかけたルルーシュは諦めたように目を伏せた。
 空気が重い。冷たくしすぎだと解っていても、発熱した分の消耗もあいまって気遣ってやろうと思えない。
「悪い、邪魔したな。来週はちゃんと出てこいよ」
 僕と目も合わせないままルルーシュは玄関へと向かった。一人暮らしの僕が住むのはどこにでもあるようなワンルームマンションで、備え付けられたキッチンそのものが玄関への通路だ。
 隣を横切るルルーシュはどことなく憔悴したように見える。僕に抱かれてからはずっとそうだ。沈鬱に何かを考え込んで、夜もまともに眠れてはいないような。
「君こそ大丈夫なのか? 体」
 その場に突っ立ったまま声をかけると、ルルーシュはつま先を靴に差し込んだまま止まった。
 躊躇いを振り切るように踵をねじ込み、肩を竦める。
「余計なお世話だ、病人が。人の心配なんてしてる場合か?」
 薄い笑み。捻くれた口調で答えをはぐらかす癖。本音を言わないルルーシュはすました顔で乱れた髪を振り払い、不敵な流し目で僕を見据える。
「じゃあな、また学校で」
 反射的に数歩踏み出し、ドアノブにかけられた手を握った。
「さっき何言おうとしたの?」
「……!」
 振り返った瞳に動揺が走る。唐突に意地悪がしたくなって、たたらを踏むルルーシュを強引に抱き寄せた。
 片手を塞ぐプリントが邪魔だ。身を捩るルルーシュをこちらに向かせるついでに投げ捨てる。よれた数枚の紙はひらひらと宙を舞って玄関に落ちた。

プロフ

夕希(ユキ)

Author:夕希(ユキ)
取扱:小説・イラスト・漫画

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