抱き枕SS

公式様がルルーシュ君抱き枕を発売して下さったので、記念に。
適当なので文章荒いです。
そして枢木さんが結構最低ですので注意。



****


 ピンポーン。

 ちょうど行為になだれ込みかけたその時、頭上で間抜けた音が響いた。
 目の前には携帯を翳した俺の恋人――もとい枢木スザクが何故かはにかむような笑みを浮かべながら俺を見下ろしている。
「おい……今何をした?」
「ん? ちょっとね」
 ちょっとね、じゃないだろ。盗撮防止用に音が鳴るようになってるってのに。
「写したろ。消せ」
「ごめんルルーシュ。それは出来ない」
「はぁ?」
 思わず低い声が漏れたが俺のせいじゃない。
 こいつの「ごめん」は「押してまかり通る」という意味だ。堂々と盗撮しておいて消すことは出来ないだと?
「拒否するってどういうことだ。人には肖像権というものが――」
「ああうん。それは解ってる。でも出来ないんだ、ごめんね?」
 それ以上聞く気は無いとばかりにスザクはたった今盗撮したばかりの写真をいそいそと保存している。
 シャツのボタンを外され、覆いかぶさってきたところで離れていく気配がした。こいつも服を脱ぐのかと思って薄目を開けた瞬間、音がしたんだ。あのいかにも間の抜けたシャッター音……まさか背後に携帯を隠し持っていたとは。
「やっぱりルルーシュって最高の被写体だよ。カメラ意識して表情作ったりポーズとったりしてるのも悪くないけど、こういう無防備な一枚って貴重だよな。ほらこの、今から脱ぎますって感じでズボンにかけられた指とか、不安と緊張と期待とを表しているかのようにシーツを握り締めてる手もそそるよね」
「――――」
 あっけらかんと言うんじゃない。『よね』って何だ『よね』って。俺は同意を求められているのか? そもそも不安と緊張の二つはともかく期待って何だ。意味が解らない。
 それに『今から脱ぎますって感じで』とか言われた気がするが、ズボンのボタンだって俺が外したんじゃなくお前が外したんだろうスザク。
 脱げかけたズボンの感触って気持ち悪いんだぞ? 膝の辺りに皺が寄ってダブついた感じがするし、下着ごと腰骨の辺りまでずらされてしまったら脱がせるか履かせるかどちらかにしろと言いたくなる。断じて誘ってる訳じゃない!
「大体何故写す?」
「うーん。僕専用?」
「!?」
「安心して? 他の誰にも見せたりしないから」
 全く安心出来ない一言と共にスザクは俺のズボンの中に手を滑り込ませてきた。
 呆然としていた俺はそこで一気に我に返った。……こいつ、無理やり抱いて有耶無耶にする気だな!?
「返せ! 消せ今すぐに! 何考えてるんだお前は!」
「返せって何? 僕の携帯で撮ったんだから僕のだろ?」
「なんだその理屈!? っあ……! と、撮られたのは俺だろ! そんなもの撮って一体何に使う気だ!?」
「ちょっと……エッチな声出しながら暴れるなよルルーシュ」
「う、るさ……!」
 俺相手になら何をしてもいいと思っているだろう。お前こそ人の体を弄びながら喋るなこの馬鹿が!
「だったら消せよ!」
「やだよ」
「……っ!」
 たまりかねて跳ね起きた俺を片腕で押し返しながら、スザクは携帯を奪われまいと素早く尻ポケットに隠した。
「何に使うのかって……別にいいじゃないか写真の一枚くらい。僕たち恋人同士だよ?」
「恋人同士だからって何をしてもいいという道理は無い!」
「うるさいなぁもう。いいから黙って寝ててよ。久しぶりだろ?」
「んっ!?」
 有無を言わさぬ勢いで深く口付けられ、続けて慣れた手つきでスルスルと下着を脱がされる。
 ねっとりと舌を絡ませる濃厚なキス。巧みな愛撫。こうなるともう反論するどころの話じゃない。
「よ、せ……やめろスザク! 誤魔化すつもりか!?」
「大丈夫。大丈夫だから。誰にも見せないって約束する。ね?」
 スザクめ。小首を傾げる姿が可愛く見えるとでも思ってるのか。可愛くない! 決して可愛くなんか……ない!
 それなのに、しつこく絡んできた舌が離れる頃には俺はすっかり腑抜けにされていた。舌先が痺れる。腰から下に力が入らない。
 茶色のふわふわ頭が段々下がっていく。このまま流されてなるものかと思っているのに、あちこち舐められたり吸い付かれたりしているうちに何もかもがどうでもよくなり、後で取り返せば済むことかと心の中で言い訳を始める始末。苛立ち紛れに髪を引っ張ろうとしてみたものの、脱力した指先は呆気なくすり抜けてパタリとシーツの上に落ちてしまう。
 粘度の高い水音と共に口に含まれてしまうともう駄目だった。理性も苛立ちもぐずぐずに蕩かされ、俺は上半身にシャツを羽織ったままという、ある意味裸よりもあられもない格好で良いように翻弄されてしまった。いつものように……。

 で、これは何だ。
『一週間後、僕の部屋に来て』
 そう言い残して去っていったスザクの言う通り、俺は今スザクの部屋に居る。
 後で取り戻すという俺の目論見は気絶するまで抱き潰されたことにより水泡へと帰し、あまりにも頭にきたので(これも毎度のことながら)一週間接触禁止令を発令した訳だが、『えー?』だの『そんなのって無いよ』だのと不満たらたらだった割に案外平然としていると思ったら。
 ……部屋の中に、怪しげな細長い物体が置いてある。それを片手で愛おしそうに撫でさすりながらスザクはベッドの上に座っていた。
「何だ? それ……」
 おそるおそる尋ねてみれば、スザクは邪気の欠片も無い顔でにっこりと笑った。
「これ? 抱き枕!」
 待て。朗らかに答えるな。俺はそういうことを訊いてるんじゃない。見間違いでなければ、それ……その抱き枕の絵柄は……!
「言ったろ? 僕専用のだって。会えないこともあるんだもの。たまーに抱かせてくれたかと思えばお預けされたりもするし。僕だって寂しい夜もあれば眠れない夜もあるんだ。そういう時に、こうして……ね?」
 ね? じゃない!! 少しは悪びれろこの天然!
 いけしゃあしゃあと盗撮画像で抱き枕を作りましたと報告してきた恋人――もとい只の変態は、抱き枕に加工された俺を抱きしめながらこれ見よがしに音を立ててキスなど降らせている。
「やめろこの変態が! 見苦しい!」
「見苦しいって酷いなぁ。元はといえばルルーシュが頻繁にお預けとか言い出すのが悪いんだろ? もっと短いスパンで定期的に愛を確かめさせてくれれば、僕だってこんな欲望丸出しの枕なんか作らないよ?」
 わなわなと怒りに震える俺を尻目に、スザクはしたり顔で「これも愛だよ、愛」などとのたまいつつ枕に頬を擦り付けている。
「愛とはそういう歪んだ性癖を正当化するための言葉では無いだろう」
 血管が音を立てて千切れそうになるのを堪えながら言い募れば、スザクは呆れたように「はぁっ」と溜息を吐きながら肩を竦めてみせた。
「ルルーシュって結構夢見がちなんだな。愛って、君が思ってるほど綺麗なものでもないと思うけど」
「詭弁を口にするのも大概にしろ」
「別に真っ最中や事後の写真でもあるまいし……大袈裟だよ。な、ルルーシュ」
「……っ!!」
 抱き枕に話しかけるようになったら人として最後だとは思わないのか? なあスザク。少なくとも俺はそんな変態を恋人にした覚えは無い。
「ほう……そうかそうか。じゃあお前はそんな枕で満足出来るほど安い男だと言いたいんだな? ならずっと枕と仲良くしてろ。俺は帰る!」
「えぇ? たった今来たばかりなのに?」
 何なんだその暢気な返事は。別れも辞さないつもりで出て行こうとしているのが解らないのか。
「謝るなら今のうちだぞスザク」
「うーん。まあ帰るって言うなら無理にとは」
「いいんだな? じゃあ帰るぞ本当に! 一生後悔しても俺は――」
「ねえルルーシュ。……それってもしかして、ヤキモチ?」
「なっ!?」
 さらりと神経を逆撫でする一言を投げかけられ、思わず絶句した俺は激昂しながら振り返った。
 米神と頬が引き攣るのが自分でも解る。こいつ、今なんと言った? 言うに事欠いてヤキモチだと!?
 抱いていた枕を無造作に横へと放ったスザクは余裕ありげな顔付きで歩いてきた。そして、ドアノブにかけた俺の手に自分の手を重ねて。
 ――カチャリ。
 開きかけた扉を無言で閉め直し、もう片方の手で俺の肩を抱き寄せながら顔を覗き込んでくる。
「ルルーシュ……あれ、処分して欲しい?」
 耳元に落ちる声に背筋が粟立った。反射的に顔を見ると悪戯っぽそうな翡翠色の瞳に俺の顔が映り込んでいる。
 油断のならない輝きを放つその目をどこか嬉しそうに細めながら、スザクは……。
「簡単なことだよルルーシュ。これを処分して欲しければ、君自身が僕の抱き枕になればいいんだ」
 だって恋人だろ? と囁く声音には、肉食の獣が獲物を前に舌なめずりをするような響きが含まれていた。
 そんな……交換条件にもならないタチの悪い要求を俺が受け入れると思うのか? そう尋ねたかったけれど。
 ふと視界に入り込んできたのは、ベッドに放られたままの抱き枕で――。
「本当に、処分するんだな……?」
 苦々しい思いで尋ねると、瞳を真ん丸に見開いたスザクは俺の頭を優しい手つきで撫でながらやんわりと目元を和らげた。
「抱き枕とルルーシュ本人、僕がどっちを選ぶかなんて決まっているだろ?」
 宥めるような仕草が癇に障って跳ね除けてみたものの、スザクは大して気にもせずぎゅっと抱きしめてくる。
「機嫌直してよ。お願い」
「…………」
 頬にちゅうっと吸い付かれ、額といわず瞼といわずキスの雨を降らされ、風船から空気が抜けていくかの如く怒りが霧散していく。
 何というか、悔しい。俺が優位に居る筈なのに、凄く負けている気がして無性に悔しい。
 頬をはむはむと唇で甘噛みしてきたスザクは、鬱陶しげに避けようと試みた俺の手から逃げて今度は首筋に顔を埋めてきた。すりすりと頬ずりされる度にふわふわの髪の毛が顔に当たる。
 犬が飼い主に懐く仕草に似ているが……可愛くない。絶対可愛くなんか、ない!



***


本当はスザクさんがこっそり抱き枕でGするネタのが萌えるんだけど、ベーシック(?)な甘々すざるるにしてみた。
何となく力尽きたので後は妄想で補完して頂けると。^^

ついったーではシーツの色が違うのでスザクさんちで撮った写真かな?って話していたのですが、話の都合でルルーシュくんちにしてしまいました。
スザクさんが持ってたらルルーシュくんはヤキモチ妬くと思うんですよね。
俺本体じゃなくていいのか? あーそうか的に。
そしてスザクさんは処分したと見せかけてカバーだけはきっちり保存してると思う。

プロフ

夕希(ユキ)

Author:夕希(ユキ)
取扱:小説・イラスト・漫画

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